入手困難な「特上牛テール」は必食

牛テールは仕入れが困難な部位のため、冷凍して骨ごとスライスしてある肉を提供するのが大半。凍らしてあるとやはり旨みや品質が劣るのだが、こちらでは1本塊のままテールを独自ルートで全国から仕入れ、数量限定で出している。生テールを包丁で丁寧に骨からはずし、切込みを入れるなど、時間のかかる作業を行う。

「特上牛テール」2,200円(数量限定)

テールはすじが多いので、火の強いロースターの手前に置いて、強火でしっかり焼きたい。片面をじっくり焼いてからひっくり返し、脂がじゅわっと出るのを待つ。まんべんなくひっくり返し、表面に軽く焼きが付く感じが出たら完成だ。

まるで対話しているかのように、ちらちらと肉の様子を伺いながら並べた肉をひっくり返す、手慣れた手つきの小池さん。脂身の多いテールは表面をカリッと焼くのがコツ
 

小池さん

焼肉は温度が大事なので、必ず焼き立てをすぐに食べて欲しいです。特上テールは赤身の旨みがじわっと凝縮していて、にんにくとのハーモニーが最高! 骨のまわりにはすじが詰まっていて、そこが旨いんです。量も取れない希少部位だし、丸ごと塊肉の仕入れはすごいこと。噛み応えがあるすじばったテールを咀嚼して、にんにくを感じ、噛みしめるほどに旨みが増す。筋肉が多く硬いけど味がしっかり凝縮した旨みがある肉肉しい焼肉が堪らない、絶対に食べる大好きな部位です。

タレとの相性が抜群な「上ロース」

単なる赤身をロースとするのではなく、リブロースの芯を使っている一目置かれる「上ロース」を使用する本格派。細かく美しいさしが入っている、とろけるような和牛の旨みを感じられる一皿。白米に合う前提で配合されている、にんにく、胡椒のアクセントを利かせたタレも絶品。和牛の脂をうまくまとめてくれる、醤油とみりんをベースにしたタレは、韓国産水あめとりんごのほんのりとした甘みが、肉との絶妙なハーモニーを生み出す。

「上ロース」2,400円

ロースはささっと火を通す感覚で、片面2秒ずつの小池ルールで両面を軽く焼く。

 

小池さん

僕のイチオシがこのロース! ロースターのセンターで焼き過ぎないようさっと焼き、タレを絡ませ吸わせ、白米にのせくるりと巻くと唸るほどおいしい。タレの良さもあって、全然しつこくないんです。たっぷりタレをつけてご飯を食べて欲しいですね。白米はオーナーのこだわりで、魚沼産コシヒカリを魚沼の水で硬めに炊いているので、タレ焼肉との無限ループは必然です。

「噛めば噛むほど味わい広がる咀嚼系硬い肉と、甘みと旨みのバランスが良いとろける系薄い肉とのループが、焼肉の流れに緩急をつける」との持論がある小池さん。どちらもおいしくレベルが高く実現するのが、こちらのお店のよさ。前菜的こぶくろで食欲と焼肉欲を上げてから、しっかりとしたすじっぽい塩ものを食べ、薄切り肉、さしの多いタレものに移行するのが、小池流の理想の流れだ。

仕入れ困難な数量限定の肉へのこだわりについて、店長・山上さんと熱く語らうワンシーンも

飽きずにおいしい「焼肉 つじむら」のタレに合う白米のおいしさは、東京ではトップレベルだと小池さんのお墨付き。お酒を一切飲まずに純粋に肉と米をいただく“ザ焼肉”な小池さん的ルーティンを楽しむのに相応しい、今後にも期待したい貴重な一軒。予約困難になる前に、足を運んでみては?

※価格はすべて税込

取材・文:濱口眞夕子(SEASTARS Inc.) 撮影:八木竜馬