【流行るお店はココが違う!】

行列のできるお店や予約の取れないお店がある一方で、美味しくても、オシャレでも、なぜかいまいちと感じてしまうお店がある。味や見た目だけではない、人気店ならではの流行る理由とは?

 

レストラン選びで賢い選択をするために、流行るお店を探し続けるマーケターの舟本 恵氏に、人気店ならではの特徴を教えてもらいましょう!

Vol.3「シズル感」が料理の美味しさを左右する

近年テレビや雑誌など、メディアでも目にするようになった言葉「シズル」。元は英語の「sizzle(シズル)」という単語から来た言葉です。ステーキなどのお肉や揚げたての食べ物が、ジュージューと音を立てている状態のことを指す擬音語で、それが転じて、食欲や購買意欲を刺激することを意味するようになりました。

 

飲食店における「シズル感」の演出は、味覚や触覚(舌触り)だけでなく、視覚、聴覚、嗅覚も含めた五感のすべてを刺激し、料理をより一層美味しくしてくれるのです。

 

例えば、2017年新語・流行語大賞に選ばれた「インスタ映え」。如何にインパクトのある写真を投稿して多数の共感が得られるか、が追求されていますが、とくに飲食・食品に関しては「シズル感」の出ている投稿が増加。「飯テロ」という言葉が生まれるほどになりました。

 

このように、視覚だけで飯テロを起こしてしまう「シズル感」。今回は、独自の方法で「シズル感」を演出し、五感すべてを刺激している“流行るお店”をご紹介します。

Check point! 流行るお店の“ココ”が違う

Case 1「ソソカルビ牛天」 大阪・中崎町

食べ進めるほどに、シズル感が食欲を刺激する!

大阪市営地下鉄谷町線で東梅田駅から北へ1駅。中崎町駅から徒歩1分の場所に、ドラム缶焼肉「ソソカルビ牛天」はあります。

お店に入る前から美味しそうな匂いが漂い、嗅覚を刺激します。ファサードにはドラム缶が飾られ、入店前から期待が膨らみます。

ソソカルビ牛天の名物の一つは、ドラム缶に仕込まれた鉄網の上でグツグツに煮えたぎるつけダレ。タレのかかったお肉は、この熱いつけダレに付けてから食べます。

 

もとより、焼肉店では臨場感あふれる「シズル感」を味わうことができるのですが、「ソソカルビ牛天」の場合、このグツグツに煮えたぎるつけダレが「シズル感」をさらに高めてくれるのです。

和牛上塩タン980円(税別)

和牛ハラミ一本焼き1,680円(税別)

マルチョウの一本焼き(和牛)1,580円(税別)

 

ソソカルビ牛天のもう一つの名物は「マルチョウの一本焼き(和牛)」です。丸々一本を豪快に焼いた後、備え付けのハサミで切ってから、つけダレに付けて食べます。

おすすめの食べ方は、良く焼いて切った後、グツグツのつけダレにしばらく漬け込む方法です。30秒ほど漬け込むと、マルチョウの良質な油と、甘いつけダレがしっかりと絡み、とても深い旨みを味わうことができます。

 牛天つけうどん400円(税別、写真は2人前)

 

そして〆には、良質な肉の脂が蓄積されたつけダレに、うどんを入れて食べます。お肉の旨みが凝縮されたつけダレを、余すところなく頂きます。

 

このように、ソソカルビ牛天では、お肉を食べれば食べるほど、つけダレが美味しく育ち、〆のうどんへの期待がどんどん高まります。ソソカルビ牛天のシズル感は、五感だけでなく、「期待感」をも刺激してくれるのです。

 

Case 2「極味や 福岡パルコ店」 福岡・天神

仕上げは自分で!目の前で焼き上がる黒毛和牛ハンバーグ

福岡県福岡市には天神という町があります。博多駅から市営地下鉄空港線で3駅、天神駅直結の商業施設「福岡パルコ」地下1階に「極味や」はあります。非常に人気のお店で、午前11時のオープンにもかかわらず、10時過ぎから行列ができ始めます。

極味やハンバーグステーキ(Sサイズ120g 880円、Mサイズ150g 1,080円、Lサイズ210g 1,380円すべて税別)。写真はLサイズ。プラス350円(税別)で、ご飯、お味噌汁、サラダ、ソフトクリームがすべて食べ放題のセットとして付きます。

 

看板メニューは、佐賀県で生産・肥育された黒毛和牛「伊万里牛」で作られる「極味やハンバーグステーキ」です。つなぎは一切使用せず、100%「伊万里牛」で作られます。表面だけが焼かれた状態で、鉄板の上にのったまま提供されるスタイルです。

 

極味やでは、週に2~3回、スタッフ自ら伊万里まで仕入れに行きます。自分たちの目でお肉を選び、自分たちの手でさばきます。仕入れの中間コストを省くことで、新鮮な「伊万里牛」をお手頃価格で味わえるのです。

提供されたハンバーグステーキは、手元の焼き石を使い、お客さん自身で最後の仕上げを行います。お箸でひと口サイズに切ってから焼き上げることで、お肉の旨みを閉じ込め、「伊万里牛」の持つ贅沢な味わいをそのまま楽しめるのです。

 

最後の仕上げを消費者が行うことで、視覚、聴覚、嗅覚が一気に刺激されます。また、一口ひとくち、大きさや焼き加減を自分で調整することができるので、火の通り方で変化する味や食感を自由に楽しむことができます。例えLサイズ(210g)を注文しても、決して飽きることはありません。焼き石で焼くたびに、新たな美味しさへの期待が高まります。

“流行るお店”が「シズル感」で刺激するのは五感だけではない

このように、目の前でダイナミックに展開される「シズル感」は、消費者の五感すべてを刺激します。加えて、今回ご紹介した2店舗は、お店と消費者が一緒になってシズル感を演出する過程で、同時に消費者の「期待感」も刺激し、料理をより一層美味しくさせていました。皆さまも、シズル感溢れるお店で、五感すべてを使って料理を楽しんでみては如何でしょうか。