〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメに精通したあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、大阪在住のライター・猫田しげるさんが、常連客に怒られるのを覚悟で神戸・元町のイノベーティブ割烹をご紹介。

教えてくれる人

猫田しげる

20年以上、グルメ誌、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」「あまから手帖」「旅の手帖」(手帖好き?)などで記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」。

どのスタイルにも属さない、独創性あふれる“白石流料理”

「イノベーティブ」とか「フュージョン」ってジャンル、自分では積極的には行きません(笑)。結局「何食べたっけ?」となるし、盛り付けや演出に付加価値をつけて不当に高い気がして(個人的見解です)。

元町駅から徒歩5分ほど。前日までの完全予約制です。

でもイノベーティブがそんなんばっかじゃないことを思い知らせてくれる「御料理うみ」。そもそもイノベーティブと呼んで良いのか。他にカテゴライズできないから仕方ないのだけど、単に「創作料理」と言うには奥が深すぎる。クリエイティブ料理とでも言いましょうか。

白石さん。イタリアのレーサーって感じのビジュアルですが、ものすごく繊細な仕事をされます。

強いて言えば「白石流料理」でしょうかね。オーナーシェフの白石涼海さん、小さい頃から料理が大好きだったそうで「幼少期から千切りが得意で。冷蔵庫の中にあるもので何か作ってみんなに喜ばれていました」と言うから、筋金入りの料理人です。祖母が長崎で料理店を営んでいたこともバックグラウンドになっているのかもしれません。

料理人としてのスタートは洋食。のちにイタリアンに傾倒し、30歳でイタリアへ。シチリアやパルマのミシュランガイド掲載店での修業を経て、日本に戻り神戸のレストランでさらに腕を磨きました。

 

猫田さん

めっちゃくちゃ気さくな白石さん。高級感のあるカウンターなのにざっくばらんに何でも喋れる雰囲気も人気の理由でしょうね!

コロナ禍を機に一新。イタリアンの枠を飛び越えジャンルレスに!

カウンター7席(貸し切り時のみ8席)のみ。全てワンオペでこなされています。

開店は2013年。当初は「イタリアン割烹海」としてイタリア料理のコースを提供していましたが、2020年のコロナ禍を機に「せっかくだからやりたかったことをやろう」と店内も料理もリニューアル、「イタリアンに縛られない自由な創作料理」で勝負するスタイルに。

コース1本なのは以前と同じですが、L字カウンターだったのを一直線のカウンターにし、席数を減らして1日2組限定に。以前は調味料も食材もイタリアンにこだわっていましたが「その縛りを無くしたくて」と、ノンジャンルの食材や香辛料を駆使して自分がおいしいと思うものを表現しています。

 

猫田さん

以前はハイカウンターだったのですが、年配客が多いことから調理場を一段低く改装したのだとか。お客様より目線を下にすることで威圧感をなくすという気遣いですね!

「まだ出るの!?」と驚かれる壮麗な13品のコース

コースはサービス料と税込で17,250円。エエ金額や……と怖気づきますが、その内容の一例はこんな感じ。

前菜2~3品、前菜盛り合わせ、揚げ物or焼き物、一品料理が2種ほど、パスタ、肉料理、土鍋ご飯、デザート。パンまで含めるとおよそ13品という品数です。

一皿でワイン2杯ぐらいはイケそうな前菜盛り合わせ

先付け的な2~3品のあとの、この一皿。「まだ前菜出るの⁉」と誰もが驚くそう。

料理は1月~1月半ごとに変わり、前菜盛り合わせも季節によって変わります。この日は、写真手前から時計回りに、千葉半立の落花生煮、ホタテのカラスミ乗せ、鳴門金時のミント煮、自家製ガリ、バルサミコ酢飯の白エビ寿司、鱧落とし、バイ貝ピスタチオ焼き、手長海老素揚げスパイス、中央の丸い器は丹波黒豆のエスプレッソ煮。

文字にすると簡単ですが、一品一品の手のかけようが尋常じゃない。例えば鱧落とし。「また梅肉かあ」と思うでしょう。違うんです。この赤いソースはトマトベースで「梅肉で食べ飽きた方に」と新たな酸味での食べ方を提案。

カラスミは自家製で、乾燥を途中で止めた“半生”仕上げ。レアでねっとりした食感がホタテのみずみずしい風味と重なり、口の中で「旨み」「コク」「塩気」の多重奏が響きわたります。

 

猫田さん

中でもピスタチオ焼きに感動しました。白石さんの修業先だったシチリアでも郷土料理として愛されていたそう。ピスタチオのペーストと、炒ったピスタチオ&ガーリックをまとったバイ貝の香ばしいこと……!

一品一品手厚く説明したいのですが、他の料理の尺がなくなるので駆け足でいきます(笑)。