〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは、口コミ数が少なかったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり、点数が上がると予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回はグルメライターの猫田しげるさんに、神戸にある本格中華料理店を教えてもらった。

教えてくれる人

猫田しげる
グルメ誌、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。現在はウェブライターとして関西を中心に活動。おいしい店はもちろん、それ以上に「クセの強い店」を愛してしまう。表向きは普通に会社勤めしているサラリーマン。あまり更新できていないブログ「クセの強い店が好きだ!」もよろしくお願いします。

カウンター10席。商売っ気があるのかないのか分からない狭小店

神戸で中華と言えば南京町……が観光の定番ですが、実はそのエリアから少し離れた裏通りに、地元や中国の方が足繁く通う名店があります。それが「祥龍」。中国ハルビン出身の池英恵(チー・エイケイ)さんが2019年秋にオープンした、中国東北地方の料理を中心に出す、本格中華料理店です。

元町駅を南下してすぐです

「祥龍」の2022年10月時点の食べログ点数は3.24。「なぜ食べログ評価が3.5以下なのか?」と疑うほど、いつも店内は盛況。池さんは「休日だからたまたまヨ〜」と謙遜しますが、私が知る限りガラガラだった日は一度もありません。ただ、カウンター10席のみという狭小店なのでリピーター客ばかりで埋まってしまい、常連さんが食べログに投稿するのを渋っているとしか思えません(笑)。

関西を代表するグルメ雑誌「あまから手帖」にも紹介されました

中国東北料理、ハルビン料理についてちょいとご説明。中国西南部の四川などは辛い料理が多いですが、最北端のハルビンは内陸なので粉モノや肉料理が美味。羊も豚も牛もガチョウもよく食べます。また冬は−30℃近くにまで冷えるので煮込み系が多く、味付けもやや濃いめで、日本人の口に合う料理が多いと言えます。

筆者史上、一番肉汁が溢れる「焼き小籠包」

気のせいか見るたびに丸くデカくなっているような……

「祥龍」のメニューは、水餃子やチャーハンなどの定番から、ラム串、ハルビン風酢豚、ハルビン風スペアリブ……と郷土料理まで30種ほど。その中でも必食なのは「焼き小籠包」です。生地から手作りしており、具は豚肉とネギだけと一見シンプルですが、手間と暇のかけようが尋常ではありません。

焼き小籠包は7個1,050円です

豚肉は生肉の塊からミンチにし、豚から取ったスープで作った「煮凝り」を具に練り込みます(これが肉汁の正体)。決め手は自家製の「ダシ」。豚足、豚の背骨、鶏ガラなどから抽出したうまみたっぷりのダシを入れることで味が染み込み、皮までジューシーな小籠包となるのです。

しかも、肉汁を閉じ込めるため、餡を包んだ後に一度茹でるのだそう。その後たっぷりの油で揚げ焼きにし、焼き面こんがり、皮モチッ、中ジュワッの多重構造なハイブリッド食感に。

ファンが小籠包とキムチチャーハンのイラストを描いてくださったんですって!

「食べる時注意してください!」という警告通り、一口かじると肉汁がドバッと流出し、途方に暮れることになります。しかも超熱い。この小籠包を通算100個は食べている筆者の指南としては、皮だけちょいっとかじって熱気を逃がし、おそるおそる肉汁を吸いながら中央へ向けてハフハフと食べ進める手法がベストです。

プリッ! 噛むと音が出るほど弾力のある、焼売と蒸し餃子

この盛り合わせで1,050円です

焼き小籠包で尺を取りすぎました。まだまだ紹介すべき料理はたくさんあります。ということで次は「蟹味噌のせ焼売」と蒸し餃子。本当は単品メニューですが「どっちも食べたいんですけど」という声に応えて盛り合わせが登場したようです。

焼売単品は7個1,150円

焼売は卵入りの自家製皮で、豚肉とキクラゲとネギで作った餡を包んでいます。これにも先ほどの自家製ダシが使われており、肉汁が中に留まりきれず皮から滲み出ているほど。食べると「肉爆弾!」と思うほどブリッブリの肉肉しい弾力が歯を押し返します。上の蟹味噌がリッチな味。

蒸し餃子単品は6個1,150円

で、最近オンメニューした「蒸し餃子」の具は、肉と海鮮の2種。まずは肉餃子ですが、こちらは具が「ほぼ肉」というぐらい、牛肉含有度が高い。具は牛ミンチ、ネギ、そして調味料の決め手となるのが「海鮮醤油」。中国独特の、海鮮エキス香る濃く深い醤油です。皮は大麦を練り込んでいるので風味豊か。

小籠包や焼売などは冷凍発送もできます!

海鮮餃子の餡は、豚ミンチ、イカ、ホタテ、エビ入り。味付けは肉餃子とほぼ同じですが、魚介がゴロゴロと入っていて、噛んだら「プリッ!」と音が出るほどの歯応えです。黄色い皮は、トウモロコシ粉を練り込んであるためだそうです。