春雨炒めは立派な麺料理だ! ハルビンのド定番メニュー
点心もおいしいのですが、炒め物などのおかず系もはずせません。池さんが「子供の頃から家で食べていました」というハルビンを代表する郷土料理の「酸菜と豚バラ春雨炒め」。
この料理、白菜を発酵させた「酸菜」が決め手となるのですが、お店によっては酸っぱすぎたり、においが気になったりと難しい食材でもあります。でもこちらの酸菜は、白菜を塩だけで3週間〜1カ月漬け込み、絶妙な酸味と塩味に仕上げた自家製で、筆者の「酸菜って酸っぱ臭い」という先入観を覆します。
その酸菜にたっぷりの豚バラ肉、ネギ、ザーサイを加えて海鮮醤油で炒めた一品。酢を使わないのに程よい酸味がふわりと具材を包み、噛むほどに酸菜のコクが味わえる傑作です。ていうか春雨ってこんなにムチムチして太かったっけ?というほどコシがある極太春雨です。
イカの生命力を感じられる「ゲソのピリ辛炒め」
ファイヤーを上げてフライパンで躍っていたのは、イカのゲソです。これもハルビン郷土の「ゲソのピリ辛炒め」という料理。イカはなんと、刺身で使える鮮度の良さ。なんでも池さんには神戸の東山商店街に知り合いの魚屋がいて「祥龍のために取っておいてくれている」というプレミアムゲソです。
1人前に6匹分ほど豪快に投入し、パプリカとともに中華鍋であおります。そこに唐辛子やクミンなどで作った自家製辛味調味料をしこたま入れ、仕上げにパクチーをトッピング。
強火でさっと火を通すため食感はコリッコリ、中はちょいレアで、イカの生命力が口の中で弾けます。「辛そー!」と思われそうな真っ赤なビジュアルですが、甘・辛・しょっぱがバランスよく調和した濃い味付け。「ライスちょーだい!」と言わずにいられません。
自家製ラー油がコク深い、飲める麻婆豆腐
そして出てきたのが自慢の麻婆豆腐。え〜どこにでもあるメニューじゃん、と思うなかれ。「うちのは他の店のと全然違うよ!」と豪語する通り、自家製ラー油と中国の花椒、秘伝のダシなどで挽肉を炒め、うまみを凝縮させた究極の麻婆様。タップタプの赤い海にソフトな豆腐がたっぷり。ヒーハーするほど刺激的な辛さですが、ダシの旨味も利いており、最後は皿ごと口に流し込んでフィニッシュしたくなります。
皿洗い担当だと思っていた、夫の林さんの正体とは……
次は何が来るかな〜と待ち構えていたら、なぜかシャンプーが出されました。どーゆーこっちゃと戸惑っていると「これ私の仕事です!」とすかさず飛び出てきたのは、夫の林金龍さん。さっきから皿洗いをしていたのでアルバイトの方かと思いきや「ここは妻の店で、私は貿易の仕事をしています。妻が忙しすぎるのでたまに手伝っています」とのこと。
林さん、妻の店が忙しすぎて本業より皿洗いの時間の方が増え「皿洗い課長から皿洗い部長、もうすぐ皿洗い社長に昇格しそうです」と流暢な日本語で冗談かましていました。
しかしこのご夫婦、本当に仲が良いんです。なんでも中学時代から付き合っているそうで、林さんの池さんへの惚れっぷりがハンパではありません。「えー写真撮るの。ワタシ化粧してない」と慌てる池さんに、「あんまり化粧したらモテちゃうからそのままでいいヨ!」と林さん、こっちが恥ずかしくなるくらいラブラブなやりとりで取材陣を赤面させてくれました。謝謝!