【食を制す者、ビジネスを制す】

第27回 リーダーはたくさん食べる若者が好きだ

 

キレ者ばかりがリーダーではない

世間ではリーダーと言うと、「キレ者で(仕事が)デキる人だ」というイメージがある。よく「カミソリ○○」「辣腕、剛腕の○○」「保守本流の○○」といったリーダーの力量を評価する枕言葉があるが、実際のリーダーたちはそうとも限らない。

むしろ、そんなイメージとは反対に見える人、例えば、凡庸であったり、明るいバカに見えたりするような人のほうが、実は本当の実力者であることが多い。現場にあれこれ口出ししたり、細かいところに注文をつけたり、厳し過ぎるリーダーでは、社員たちを気持ちよく働かせることはできないと言えるだろう。

社員たちがモチベーションを高くして、懸命に働いてこそ、会社組織の運営は成り立つというもの。そのためにリーダーの役目はいろいろあるが、その大事なものの一つが社員を働く気にさせることなのである。それがうまく行っている会社はリーダーが社員の行動に目を光らせなくてもいいから、社員たちはリーダーの存在は意識しつつも、自由にやる気を持って働いていることが多い。

実際、会社ウォッチングをしていて、いい会社だと思うのは、社長がいなくても現場がうまく回っている会社である場合が多い。例えば、トヨタ自動車は社長がいなくても現場は回っていくだろうし、ほかの優良企業と言われるところも大半がそうだろう。カリスマ社長がいなくても、社員たちが優秀であればいい。社員たちが優秀であれば、会社はうまく回っていく。

 

決断がブレず責任の取れるリーダー

その意味で言えば、リーダーは少しバカなほうがいいのだ。むろん本当のバカでは別の話になるが、少し抜けたところがあったり、バカを装えたりするリーダーのほうが、社員たちがリーダーを助けようとする意識が働くものだ。

リーダーが現場を主導するよりも、社員たちが主導しているほうが業績は上がる。「このリーダーのためなら」と社員が思うのは、たいてい人間味があって、可愛げもあり、これといったときに決断がブレずに自分で責任を取れるリーダーだ。

警察組織をみればわかりやすいだろう。刑事ドラマなどでもそうだが、事件を解決するのは現場の刑事たちだ。警察署長や県警本部長、警視総監などのリーダーたちは非常事態のときは、部屋に待機して現場の動きを見守る。大きな決断を迫られた際に、ゴーサインを出す。現場にあれこれ口を出すリーダーは疎んじられるし、状況を見誤る。ドラマで描かれるダメなリーダーたちもそうした人たちだ。

私も、ある社長を取材した際に、こう聞いたことがある。

「テレビをつければ、キャスターが深刻な顔して『先行き不安』だとか言うけれど、会社の先行きなんて、いつも不安なものなんだよ。社員を不安にさせたら、会社はうまく動かなくなる。リーダーになれば、目の前の課題について、考えれば考えるほど不安になることばかりだ。でも、負けられない。勝つためには、リーダーは常に元気でニコニコしてがんばらなければならないんだよね」

 

カツカレーで元気になる

そんなリーダーたちは、食事の際に、たくさん食べる若者を好む傾向がある。歳をとれば、とくにたくさん食べる若者を頼もしいと思うことが多くなる。リーダーはモリモリ、パクパク、何でもペロリと平らげる若者が好きだ。

そんな元気な若者たちが集っているように見える店が、神保町のすずらん通り沿いにある洋食店の「キッチン南海 神保町店」だ。ランチ時以外でも行列ができている。店内はいつも満員でガヤガヤした雰囲気の中で、厨房でフライを揚げる音がひっきりなしに聞こえてくる。白いテーブルにソースや福神漬けなどが並び、昭和テイスト。不思議と食欲が湧いてくる。お薦めは、カツカレーだ。

出典:呑み助の日記さん

黒色のカレールーは長年煮込んだ風格を感じさせ、味は言うまでもなくうまい。カツは薄めなのでカレーと一緒に食べやすい。そこにキャベツが載って、アツアツのカツカレーが出てくる。目の前のカツカレーを一心不乱に食べる。汗を流しつつ、意識を集中させて食べる。そうすれば食べ終わったときの充実感は何とも言えないものになる。

ちなみに、この店はスタッフも忙しいので、注文するときは悩んではいけない。スタッフが注文を取りに来たら、即座に注文することだ。スタッフはいつも店内を動き回っているので一度注文を逃すと、次になかなか注文を取りに来てくれないことが多い。店に入る前に注文するものは決めておいたほうがいい。

この店には食べ盛りの若者から、“かつて”食べ盛りだったオジサマまでがやってくる。多くの人たちが一心不乱にカツカレーや定食のセットを食べている姿を見ていると、何だかうれしくなってくる。とくに、こんなにも食べるのかと思うほどの量をガツガツと片付けている若者を見ると、自分も負けられないと思う。たくさん食べる若者はやっぱりいい。