TOKYO HIP BAR

Vol.15 “バスルーム・バー”で新たなひらめきが!?

あの発明はバスルームで生まれた?

 

「世界的な発見はバスルームで起こっている」という説があります。ひらめきは意識と無意識の間に存在していて、考えていることが脳の裏側に追いやられているときこそ、脳が活性化し、重大な発見へと結びつくというのは、多くの学者や発明家が唱えているところです。シャワーを浴びているときや湯船に入っている時間は無意識に入りやすく、ひらめきが起こりやすいと言われます。

 

そんなバスルームの存在を改めて感じさせてくれるところが、その名も「toilet(トイレット)」という新宿一丁目のお店。ほの暗い灯りで照らされる店内にはカウンターのほかに、バスタブやシャワーヘッドにピアノ。バスタブの隣で飲む感覚は、小さい頃に屋根裏で隠れんぼをしたときのような非日常感があり、普段話さないような話も思わずしてしまいそうな雰囲気があります。

 

オーナーの武宏さんはアンティークセレクトショップの「PASS THE BATON」で店長を務めていた経歴の持ち主。想いがある良いものを「PASS THE BATON」で見てきた経験は、店内にもうまく活かされており、アンティークの椅子やライトがあることで、空間を知り合いの誰かの家のような落ち着いた雰囲気に作り上げています。

 

武さんがバーをトイレットと名付けたのも「トイレの個室でボーっとするような感覚で過ごしてもらえたら」という理由から。外にいながら、家のなか、それもトイレの個室に籠るように自由な感覚にさせてもらえます。

 

こちらで提供されているのがマグカップで出されるブレンデッドスコッチ「カティサーク」のソーダ割り。そこにシングルモルトをフロートさせて、少し強めに作られています。

 

マグカップでお酒を提供するのは禁酒法時代にアメリカで出されていたスタイルで、お酒を公然で売れなかった当時、取り締まりが店に入ったときにも言い逃れできるよう、マグカップで出していたと言われています。そのちょっと隠れて悪いことをしているような感覚が、このお店の不思議な雰囲気にマッチしていて、お店のシグネチャーカクテルとして愛されています。

 

壁に象徴的に飾られているのは、裸の男性が草原を走るライアン・マッギンレーの大きな写真。日々多くのクリエーターなどが集う場所にもなっているお店ですが、ここに来たら誰も飾らずに裸になってほしいというメッセージを感じます。なんといったって、ここはトイレットですから。

 

今夜もトイレットではみんなの内緒話のなかから、なにか世界的な発見がなされているかもしれません。