〈秘密の自腹寿司〉
高級寿司の価格は3~5万円が当たり前になり、以前にも増してハードルの高いものに。一方で、最近は高級店のカジュアルラインの立ち食い寿司が人気だったり、昔からの町寿司が見直され始めたりしている。本企画では、食通が行きつけにしている町寿司や普段使いしている立ち食い寿司など、カジュアルな寿司店を紹介してもらう。
教えてくれる人
山本憲資
Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。
グルメトレンド指数の高い「池尻大橋」に店を構える
最近は“中目尻”という愛称で、若い世代にも親しまれている注目エリア。
山手通りと玉川通りが交差する場所から三軒茶屋方面へ向かう大通りの一歩裏手は、さまざまなジャンルの個性派店が軒を連ねており、東京では数パーセントにも満たないと言われる“10年以上続く店”も多い。長年、常連客に愛され続ける店がある一方で、新店がオープンし、つねにアップデートされていることもこのエリアの鮮度を高めている理由。
中でも今、寿司好きの間で話題を集めているのが、今年の3月にオープンした「立ち喰い鮨 ブラボー」だ。
にこやかに出迎えてくれた大将の尾崎 純さんは17歳の時にアルバイトとして寿司店で働き始め、ホテルの和食店や都内の寿司店の二番手なども経験。月島で週に2日のみ営業する「立ち食い鮨 まさ」を経て、この春、池尻大橋に『立ち喰い鮨 ブラボー』を開いた。
高級、町寿司、立ち食いなど“バブル”によって多様化する“寿司業界のいま”について思うことは? とたずねると「いろいろなお店で働かせていただいたので、それぞれの良さを知っているつもりではありますが、自分が日常的に行きたいお店を考えたら、やはり気楽でおいしいのが一番。ひとりで行く場合や特別な日など、シーンや一緒に行く相手によってお店を選ぶことができるのは、寿司店に限らず飲食店を訪れる楽しみのひとつだと思います。ここでは、立ち食いならではのグルーヴ感を楽しんでいただけたらうれしいです」と話す。
すでに何回か足を運んでいるという山本さんも「握りが出てくるテンポが良く、とても気持ちよくお寿司をいただける」と大満足の様子。おこのみで1貫ずつはもちろん、おまかせのコースを用意するフレキシブルさで寿司好きの心を満たしている。
山本さん
立ち食い鮨 まさにいらした方のお店だと聞いて訪問。期待を裏切らない内容でした。
何年も予約が取れない高級な寿司店の対極にあって、立ち食い寿司のイベント性や楽しさが際立つのは、実力を備えた職人が握る店だからこそ。パッと食べて、さっと帰る。その寿司文化の源流ともいえるスタイルの店が増えつつあるのは寿司好きにとってうれしい限りだが「立ち喰い鮨 ブラボー』」の場合、なんといっても気になるのがキャッチー(すぎる!?)店名。
寿司店らしからぬ、ユニークな屋号をつけた理由は?
「この通りを歩いている人の目に留まりやすいかな、と思ったんです(笑)。老若男女の誰もが知るパワーワードですから、この店の名前ブラボーっていうんだ。しかも、寿司店なの!? という感じで覚えていただけたらうれしい。一見、ミーハーに思われるかもしれないですが、寿司は、いたって大真面目にやらせていただいています」
山本さん
ご主人のテンポと感じも良くて、気持ちよく食べられます。