【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレーとスパイス#109】「天竺食堂」
埼玉県新座市栄。どの駅からも歩いて行くにはかなり遠い場所に要注目のお店がオープンしました。その名は「天竺食堂」。
和食からスタートし、インド料理の名店「シターラ」をはじめ、いくつかの人気カレー店で修業を積んだというキャリアを持つシェフのお店です。歩いて行くには遠くても、バスが非常に多いエリアでもあるので都内からもバスのアクセスは良好です。たどり着いたその場所は民家のような雰囲気。入ってみると非常に明るく、靴を脱いで上がるのですが、この形も含めて友達の家に招かれたような感覚にもなってくつろげました。
昼はカレーライス、夜はそれ以外の単品やコースもあるというメニュー構成。まずはサービスのダルスープが登場。だしを感じる優しく奥深い味わいで、どことなく味噌汁を思わせるようなおいしさ。
続いていただいたのは「かつおのスパイシータタキ」600円。
鰹のたたきにインド的なソースが添えられているのですが、これが実においしい。程よい酸味とほのかな刺激。マスタードシードの香りがまた印象的かつ鰹との相性が良く、お酒のアテとしても良いものです。どちらもシェフの和食の経験が活きている料理でした。
続いて「焼き物盛り合わせ」1,500円。チキンティッカ、マライティッカ、シークケバブの3種盛りです。「タンドールは無いのでオーブンで調理しました」とのことでしたが、それぞれ非常にジューシーで味付けも良く、技術さえあれば何で焼いてもおいしくなるのだなと納得する味。
カレーは定番の「天竺チキンカレー」900円と限定メニューの「ペッパービーフカレー」1,200円を注文。こちらに合わせるのが「チャツネとパパド」(1種100円、4種で400円)。
このチャツネが面白いです。チャツネでありながらそれぞれが小さなカレーのような味わいになっており、パパドにのせて食べて良し、カレーと合わせて食べても良しという個性あるものでした。「うちはそんなに沢山の種類のカレーを用意できないので、チャツネで色々と楽しんでいただきたいんです」とシェフ。確かにこのチャツネは他の限定カレーへの期待を膨らませるものであり、目の前にあるカレーのおいしさを増幅させるものでもあります。
定番のチキンはうま味、酸味、辛味のバランスが良く、インドカレー的ですがインドカレーとはまた違う味わい。和食出身だからこそのだしの使い方により、出汁カレー的な優しさも感じました。
ペッパービーフは南インド料理のビーフペッパーフライを元に、それをより日本人がイメージするカレーに変化させたような仕上がり。黒胡椒の刺激が程よく、こちらも奥深いうま味を感じました。
ご飯は日本米とバスマティライスのブレンド。だからこそインド的であり、日本的でもあるこのカレーと合うのです。
デザートに「ココナッツミルクプリン」400円も。これがまた実に良いデザート。ココナッツとミルクの配合が絶妙で、上にのるクリームも引き算の甘味。だからこそ全部一緒に食べた時にちょうど良くなる、引き算の甘さを重ねたからこそ完成するおいしさになっていました。
どの料理にもこだわりのお皿が使われており、こちらは「色々なところでかわいいなと思ったものを少しずつ買いためていたのですが、自分ではもったいなくて使えなかったものを、お店を出すことになったのでお皿も一緒に楽しんでもらおうと、やっと使えるとうれしく思っているんです!」と給仕を担当するシェフの奥様。お二人の仲睦まじさもお店の雰囲気をさらに良くしています。
前菜からデザートまで徹頭徹尾おいしいです。シェフの修業先の料理とも違ってオリジナリティもあり、それでいて修業先の雰囲気も感じさせる部分があるのがまた楽しいです。ちょっとドライブがてらカレーだけ食べに、あるいは時間のある日にバスに乗ってゆっくりと向かい、お酒と一緒に絶品料理を楽しむ。天竺は遥か彼方ではなく、新座市にもあるのです。
※価格はすべて税込