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カフェオーナーがおすすめするカフェをリレー形式でお届けする当連載。Vol.3 珈琲工房 木馬のオーナー小野悦典さんに紹介していただいたのは、世界初の“水素焙煎珈琲”が飲めるカフェ兼珈琲研究所。
昨今の水素ブームを受けて「結局、水素って何がいいの?」と疑問に思っている人も多いのでは? そこで、今回は水素焙煎を発明した金沢大学名誉教授の廣瀬幸雄氏(以下、教授)にも同席していただいて取材を敢行!
【コーヒーショップホッピング】
Vol.4 「コーヒー×水素焙煎」石川・金沢 珈琲研究所 ビタルコーヒー
訪れたのは、石川県金沢市・医王山(いおうぜん)の麓。プレハブの研究所が点在する約1万坪の敷地に「珈琲研究所 ビタルコーヒー」はある。珈琲研究所の所長を務める濱田京子さんは教授の元教え子だというが、いったい教授は何者なのか……!
破壊工学専門の教授がコーヒー博士に?!
教授プロフィール
廣瀬幸雄/金沢大学名誉教授、工学博士。専門は破壊工学。2003年にイグ・ノーベル科学賞を、2009年に文部科学大臣賞を受賞。コーヒー好きが高じて研究を重ね、日本コーヒー文化学会副会長を務める。
右:「我が輩は珈琲博士」など著書も多数。
左上:好みの味を数値化する方程式(資料提供=廣瀬教授)
左下:焼いた豆の構造。通常炭酸ガスが入るところに水素を入れている
破壊工学を専門としていた教授だが、コーヒー研究を始めたきっかけはある喫茶店で店主が「胃に負担が少ないコーヒーを」と豆を二度焼きしているのを目にしたことから。
日本・欧米を8年かけて飲み歩き、豆の原産地40カ国ほどを訪れて調べ尽くすと、「自分の専門分野でおいしいコーヒーを作りたい」と焙煎機の製作を開始。
その中で、コーヒーの味を悪くしてしまうのは酸化だと気づき、長年の研究対象である“水素”を豆に入れることを思いつく。そうして完成したのが世界初の水素焙煎機だ。
水素でおいしさをキープ。焙煎後の鮮度をそのまま届けたい
水素焙煎による「サイエンス珈琲」
教授によると、水素焙煎機で焙煎した豆なら通常1カ月のところ3カ月程度、そこから抽出した液体なら1時間のところ約1~2週間、おいしさが保たれるそう。
教授が考えるおいしいコーヒーとは?と尋ねると、「煎りたての鮮度をできるだけそのままに、淹れたての味を最後まで楽しめること。そして、健康的であることも大切な要素なんですよ」と教えてくれた。
水素焙煎によるコーヒーは2種。子どもでもゴクゴク飲めるほどまろやかな「水素焙煎珈琲(600円)」と、水素の量は半分になるがコーヒー本来のコクがより感じられる「サイエンス珈琲(500円)」がある。いずれもカフェイン含有量が約1/3になるというデータが!※「ビタル企画」調べ
取材後、冷めた珈琲に改めて口をつけたが、味は変わっていなかった。ぜひ体感してみてほしい味わいだ。
軽やかなコーヒーと相性抜群。ここでしか作れないお菓子
ドリンクにつくお茶うけは、「プラ煎」ことプラセンタ(胎盤)エキスが含まれた薄焼き煎餅。水素で粉砕したもみ殻や食物繊維などがたっぷり入っている。
サクサクの食感にふわっとした口どけ、生姜のさわやかな風味で手が止まらなくなるおいしさだ。
次なるコーヒーの発明テーマは“癒やし”
左下は遠赤外線焙煎機。遠赤効果が高い戸室石を施している
水素焙煎のほか、「遠赤外線焙煎珈琲」やお茶の成分が入った「テアニン珈琲」など教授ならではのメニューに、また新たなコーヒーが仲間入りする予定とのこと。
「ミントやラベンダーのエッセンシャルオイルを保持できる『アロマコーヒー』を作っているんですよ。飲みながら癒やされてほしいね」と教授は教えてくれた。
都心では味わえない、まるで絵画のような世界
店内は木のぬくもりに包まれた、居心地のよい空間が広がっている。
「窓いっぱいに外の景色が重なって絵画のよう。ここにしかないものがたくさんありますので、ぜひお越しいただきたいです」と所長の濱田さん。新緑や紅葉の時期をとくにおすすめしていた。
※記事内の水素の効果、数値は「ビタル企画」の研究データによるものです
※「サイエンス珈琲」は豆販売が中心のため、喫茶で提供できない日もあります
【次回予告】ハンドドリップ優勝者を輩出したカフェの本格コーヒースイーツに注目
日本中の喫茶店を渡り歩いた教授が「ずっと気になっている」というカフェは必見です!
取材・文・写真:武田梨江