秋山さんイチ押しのつまみと握り

見惚れる美しさの「ブリ大根」

柚子の皮の香りとほのかな苦みがブリ大根のおいしさを引き上げる

破格のランチコースの冒頭に供されるのが「ブリ大根」。竹内さんが選んだ、華やかなカットガラスの器に盛られた「ブリ大根」は、しばらく見ていたくなるほどの美しさだ。煮汁の味が染み染みの大根は、まるで琥珀色に輝く宝石のよう。ブリは、脂がのってやわらかいブリカマ。これがまたいい味を出している。

7日間熟成の「ブリ」

脂の入り方といい繊細な飾り包丁といい、まるで芸術。2種の赤酢をブレンドしたシャリとネタのバランスもよい

脂がのったお腹の部分を特殊なペーパーで包み、取り替えながら、周りに氷を当てて冷蔵庫で寝かせること1週間。熟成具合を見て仕上げてくれるのがこちらの握りだ。美しい飾り包丁が入れられたブリは、旨味が増しとろっとした食感。口に入れると、赤酢のシャリと一体となり、やさしくほどけ、胃に落ちていく。

分厚さに度肝を抜かれる「ホタテの磯辺焼き」

贅沢なまでの焼きホタテと「佐賀のはしり」との相性は抜群

コース中盤で味わえるのが「ホタテの磯辺焼き」。網の上で甘めのだし醤油をかけながら、両面をこんがり焼いたホタテを海苔で挟んで手渡ししてくれる。海苔は、ミシュランの三つ星寿司店をはじめ、多くのプロが愛用する丸山海苔店の有明海産「佐賀のはしり」。「厚みも香りも全く違う極上の海苔です」(竹内さん)

2cm近い厚みのホタテをご覧あれ

ホタテの大きさ、厚みがとにかくすごい。「焼くと縮むので、生だともっと大きく厚みもありますよ」と竹内さん。甘味のある貝柱と、パリッと品のある香ばしさの有明海苔とのハーモニーがたまらない。お酒が進みそうなつまみである。

14日間熟成の「大間の中トロ」

きめ細かな脂とマグロの香りもたまらない

サクが大きいこともあり、ブリの倍、2週間熟成させて仕上げたマグロで握ってくれるのがこちら。マグロは大間の中トロ、それでなくてもおいしいマグロが、さらに旨味を増して目の前に。マグロに負けない赤シャリとともに口の中でとろけていく感覚は、何物にも代えがたい幸福感をもたらしてくれる。

カニの旨味と赤シャリのバランスが絶妙な「毛ガニ」

おいしく味わってもらうため少し温かめのシャリで握る

秋山さんも絶品と太鼓判をおす毛ガニの握りがこちら。こんもり可愛らしく握ったシャリに、カニ味噌で和えた毛ガニのほぐし身がたっぷり。口に運ぶと、濃厚なカニ味噌の旨味と毛ガニならではの甘味、さっぱりとした赤酢のシャリと相まって、たちまち口福感が訪れる。

「海苔で巻いて軍艦で出す店もありますが、カニそのものをしっかり味わっていただきたいので、あえてこの形でお出ししています」(竹内さん)

緊張せずにリラックスして楽しんでいただきたい

暖簾と看板は知己のアーティストが手がけてくれたもの

幼い頃、祖母とともに親しんだ料理の記憶、父のために作った和食。それらをターニングポイントに一念発起し寿司職人となり、代官山に店を構え「食べログ 寿司 TOKYO 百名店」にも選出された竹内さん。

おいしいもの、見ても楽しい料理を提供することに加えて「緊張せずにリラックスして味わっていただける、居心地のよい空間であること」も大切にしているという。

休日は都内の寿司店を訪ねたり、好みの器を探したりと、楽しみながら日々の研鑽を惜しまない竹内さん。コスパの良さもさることながら、ソフトな物腰の竹内さんの人柄も心地よい。「代官山 鮨 たけうち」を一度でも訪ねれば、また行きたいと必ず思うはずだ。

※価格は税込です。

※本記事は取材日(2022年12月13日)時点の情報をもとに作成しています。

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撮影:井原淳一
文:池田実香(フリート)