〈秘密の自腹寿司〉

高級寿司の価格は3~5万円が当たり前になり、以前にも増してハードルの高いものに。一方で、最近は高級店のカジュアルラインの立ち食い寿司が人気だったり、昔からの町寿司が見直され始めたりしている。本企画では、食通が行きつけにしている町寿司や普段使いしている立ち食い寿司など、カジュアルな寿司店を紹介してもらう。

教えてくれる人

秋山 具義

1966年秋葉原生まれ。1990年日本大学芸術学部卒業。広告代理店I&S(現 I&S BBDO)を経て、1999年デイリーフレッシュ設立。広告キャンペーン、パッケージ、写真集、CDジャケット、キャラクターデザインなど幅広い分野でアートディレクションを行う。主な仕事に、東洋水産「マルちゃん正麺」広告・パッケージデザイン、AKB48「ヘビーローテーション」CDジャケットデザインなど。著書に「世界はデザインでできている」がある。2016年より「食べログ」グルメ著名人としても活動。J-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」にランチのスペシャリストとして出演している。

メイン通りから奥に入った静かな一角にひっそり佇む

こんなところに?と思うような閑静な一角、3階建ての白いビルの1階に店がある

渋谷、中目黒、恵比寿など、都内の人気エリアに囲まれた立地にありながら、個性的なセレクトショップやカフェなどが点在、落ち着いた雰囲気が漂う街・代官山。

メインストリートの八幡通りを脇道にそれた閑静な住宅街の一角、なだらかな下り坂の途中に、その店はある。のれんと看板に刻まれた文字は「代官山 鮨 たけうち」。店主の竹内準さんが2017年に開いた店だ。

 

秋山さん

知り合いがSNSにアップしているのを見てオープンしてすぐに行きました。代官山の裏道を歩いていると突然お店が現れるシチュエーションがよい感じで、竹内大将の朗らかでフレンドリーな接客も心地よいです。

竹内さんを囲むL字形のカウンター席。木材を多用し温かみある内装に仕上げた

広島との県境、島根の山深い地域にある兼業農家が実家で、両親が共働きのため、幼い頃は家にいる祖母と一緒に料理に親しんでいたという竹内さん。料理で生きていくと決めたのは、大学時代のボリビア滞在がきっかけだ。

父が稲作指導の国際協力で南米ボリビアに派遣され、一時期体調を崩し帰国し再び現地へ。「父に同行していたので、父の体調を考えて和食をよく作るようになり、そこで改めて料理の楽しさに目覚めました」(竹内さん)

依頼を受け個人宅などで出張して握ることも多いそう

「どうせやるなら世界でも通用する寿司職人になる」と決め、大学卒業後に夜間の調理学校に通い、昼は鮮魚店のアルバイトで魚の扱い方を学んだ。

銀座の高級寿司店「鮨 かねさか」、神戸のホテルなどで経験を積み、代官山でも腕を磨いた竹内さん。独立する際、銀座や中目黒などの立地も考えたと言うが「代官山の落ち着いた雰囲気が好きで自分に合っている」と現在地への出店を決めた。

カウンターには竹内さんが集めた京焼や九谷焼など色とりどりの器も

昼のコースでは、1万円前後で十分ハイコスパと言えるのだが「代官山 鮨 たけうち」ではランチコースが6,600円という破格で味わえるのも驚かされる。「まずは気軽にうちの味を知ってもらおうと、この設定にしています」と竹内さん。

修業先のコース料理では先につまみを続けて出し、後から握りを提供するスタイルだったというが、この店では、つまみと握りを交互に出す。「最後までおいしく、楽しく味わってもらえるよう、温度や味に変化をもたせ、メリハリとバランスを考えながらお出ししています」(竹内さん)

 

秋山さん

夜と同じクオリティーの寿司が、ランチだと握り10貫と小鉢とお椀で6,600円とかなりお得です。ブリ大根の小鉢や、ホタテの磯辺焼きなど握り以外もおいしいです。