オーダー必須のシャルキュトリー
「N’onaka」を訪れたら、必ずオーダーしたいのが、シャルキュトリー類だ。盛り合わせにしてもらうのが得策。左上から時計回りに、ブーダンブラン、フロマージュ・ド・テット、鶏もも肉のバロティーヌ、イベリコ豚のパテ。
フロマージュ・ド・テットは、豚の頭の部位を使った、ゼラチン質たっぷりのゼリー寄せ。鶏もも肉で詰め物を巻いたバロティーヌも伝統的な一品。パテは、イベリコ豚の旨みが強く出た、濃厚な味わい。ブーダンといっても、血で固めるブーダンノワールではなく、ブーダンブランは、鶏肉と生クリームをベースに仕上げる、まろやかな味わい。黒トリュフを射込んで香りも華やかに。ワイン片手にシャルキュトリーをつまめば、それだけで幸せになれる。「お一人でいらっしゃる方などにはハーフポーションの盛り合わせもご用意しますから、ぜひ、召し上がってください」と、うれしい言葉も。
ヒラメを家庭的な魚料理で
骨付きのヒラメを、エシャロットとにんにくを炒めた中に入れ、白ワインとだしを加えてオーブンへ。煮詰めた煮汁にバターを加えて、トマトと芽キャベツで甘味や酸味をプラス。家庭的な料理ながら、ソースの煮詰め具合が絶妙で、こんなフレンチの魚料理が食べたかったんだと思わせてくれる一皿だ。
伝統的なクリーム煮を軽やかに
フリカッセといえば、フランス料理を代表する軽いクリーム煮だ。野中シェフは、あえて、ワインを多めに使って酸味を立て、脂肪分の少ない生クリームを使用することで、伝統的な料理ながら、現代の嗜好に合った軽やかさに仕上げている。
うさぎの肉は、鶏肉のようにさっぱりとしつつ、旨みがしっかりとあり、フランスではとても好まれている。付け合わせは、秋を感じさせる栗とピーナッツと、八女茶とエストラゴンの粉末を加えたニョッキ。「シグニチャーとして考えているのが、フランスの煮込みなんです。なんといっても、それが郷土料理の基本ですから」とシェフ。
口の中で酸味と甘味が溶け合うりんごのキャラメリゼ
お楽しみのデザートは、フランス人も大好きなりんごだ。8等分したりんごにグラニュー糖をかけてキャラメリゼし、きつね色になったら、バターを一かけら。カルバドスで香りをつけ、カシスとマロングラッセを加えてジュースをからめ、バニラアイスを添えて完成。
「りんごは酸味と甘みのバランスがいい、秋映(あきばえ)という品種を使っていますが、時期によって変えていきます」
「価格帯や気軽さはビストロですが、クオリティはガストロノミーを目指しています。たとえば、食後酒もちょっとランクの高いものをそろえて、食事を楽しむという文化をしっかりと伝えていきたいと思っています」というシェフの意気込みが、なんとも頼もしい。しっかりと一本筋の通ったおいしさは、必ずや食いしん坊を満足させてくれるに違いない。