まるでカフェのようなオシャレな店内で味わうガチ中華

近ごろ人気の高いガチ中華。日本在住の中国系の人たちが故郷の味を懐かしみ、自分たちの食べたい本場の味を提供する店を作ったのが始まりと言われる。そんな“本気”の中国郷土料理をいただける店「一笹焼売(IT THI SYUU MAI/イッティシュウマイ)」が上野御徒町にオープン。楽しめるのは内モンゴル料理。本場の味が早くも評判を呼んでいる。

賑わうアメ横を離れ、オフィスビルなどが立ち並ぶエリアに入ると店が見えてくる。白地にブルーの店名。焼売をキャラクターにしたイラストがかわいらしい。

店内も白をベースに、ブルーをアクセントにした明るく清潔な空間。ブルーはモンゴルの青空をイメージしたカラーだ。4人掛けのテーブル席が2つ、カウンター4席とこぢんまり。料理は “ガチ中華”ながらディープな中華の世界というより、まるでカフェのような雰囲気で女性一人でも入りやすい。

レシピは内モンゴル人オーナーの父親譲りの本格派

手作り焼売(8個)1,580円。少なめの5個入り(980円)も用意されている

内モンゴルとは中国北部の内陸部にある内モンゴル自治区のこと。「一笹焼売」は内モンゴル出身のニキさんと、夫が内モンゴル出身で、自身は中国北部出身のキョキョさんの二人が始めた。

店を作ろうと思ったきっかけは、コロナ禍で故郷に帰国できなくなってしまった二人が故郷の味、焼売を食べたいと思ったことから。自分たちと同じように故郷の味を求めている人たちのために、そして日本の人たちに内モンゴルのおいしい料理を紹介できたらと、店を作ろうと思ったという。

花びらの形に包んでいくのがモンゴルスタイル。花が咲いていくように一つ一つせいろに並べていく

焼売は内モンゴルでは誰でも知っているソウルフード。ニキさんの実家が焼売店を営んでいたこともあり、そのレシピを再現することから焼売作りが始まった。材料など故郷と同じものが日本では手に入らず、レシピ通り作ってみても、食べると自分たちの知っている焼売とは違う。

「オープンが迫っているのに、なかなか納得できる焼売ができなくて焦りました」とキョキョさん。夜中の2時、3時まで材料の配合を変えてみたり、調理方法などを工夫してみたりと試行錯誤を重ねながら焼売を完成させた。

モチモチの皮と羊肉の焼売はさっぱりヘルシーな味わい

薄い皮のフチを伸ばしてヒダにし、真ん中に具材をぎっしり詰めていく

店のメインメニューとなるのはもちろん「羊肉焼売」。中身の具材は羊肉、ネギ、生姜のみで、味付けも塩だけとシンプルだ。特徴は羊肉を使うことだけでなく、花のような形にもある。極薄の皮が独特の食感を生み出す。

「出来立てが一番おいしいから」と焼売はオーダーを受けてから、皮に具材を包み、せいろで蒸していく。少し待たせることになってしまうが、おいしいものを食べてもらいたいとの考えからこのスタイルになったそう。

こちらはディナー用。ランチ用の焼売はもう少しサイズが小さい

運ばれてくるせいろの蓋を開けると、フワッと立ち上る湯気の中に、花のような焼売が並んでいる。ヒラヒラのヒダの部分に少し白いところが残っているが、生ではなく火はしっかりと通っている。これがモンゴル焼売の特徴なのだそう。

黒酢とラー油で食べるのもモンゴルのスタイルだ

アッツアツの焼売をガブリとほおばる。羊特有の臭みはほとんど感じられず、豚肉の焼売より脂が少なく、さっぱりとヘルシーな味わい。薄い皮はコシがありモッチリ。作りたてを食べるので、皮も中身もしっとりと柔らかい。日本人の口にも合うように調整された焼売はあっさりと食べやすく、肉の旨みがジンワリと感じられる。

タレは卓上に用意されている黒酢と自家製ラー油を好みの割合で混ぜていただく。自家製ラー油は芳醇なゴマ油の香りいっぱいで、辛さは控えめ。コクのある黒酢と合わせると、マイルドな焼売の味わいをグッと引き立ててくれる。