ここでしか食べられないパンがいっぱい! 早くも行列ができる人気店に

高級中華から昔なつかしい町中華、本場の味を伝えるガチ中華まで。東京では、さまざまなスタイルの中国料理が楽しめる。けれど、本場中華パンに特化したベーカリーは希少な存在だ。2022年5月、新小岩に誕生した「劉記 中華面食」だ。

夕方になれば、商店街の買い物客や近隣のワーカーなどで行列ができるという

「新小岩ルミエール商店街」から横に入った路地にある店は、駅から少し距離があるにもかかわらず、珍しい中華パンが楽しめるとあって、ひっきりなしに人が訪れている。

取材時は中秋が近いということもあり、月餅がずらりと並べられていた。季節によりパンの内容は変わる

驚かされるのはその種類の豊富さ。それら全てを店のキッチンで手作りしている。店内の棚に並ぶのは40種類近くの中華パン。調理法も蒸したり、焼いたり、揚げたりとさまざま。甘いスイーツ系のパンから軽食にぴったりの総菜パンまでバリエーション豊富で、どれを食べようかと迷うこと必至だ。

本場中国の味を届けたい! ベテラン中国料理人が作った専門ベーカリー

木箱を使って並べるアイデアも日本でよく見かけるベーカリーのようで楽しい

中国では南は“米食”で米が、北は“面食”で小麦が主食となる。“面食”には麺類も含まれるが、「劉記」では中華まんから中華パイ、餡餅(シャーピン)と呼ばれる中国風お焼き、揚げパンまで小麦粉でできた生地を使った幅広い種類の“パン”を扱っている。

毎朝、焼き上がったパンを自ら食べて、品質を確認するという

「これだけ種類豊富なパンが作れるのは、中華パン作りの達人と一緒に働くことができたことと、必要な設備をそろえたからなんです」と語るのは、中国料理の仕事に36年以上携わってきた、オーナーの王さん。最初は料理人としてキャリアをスタートさせ、横浜・中華街の「聘珍樓」など名店でも活躍した後、バイヤーやメニュー開発の仕事に携わってきた。

「揚げパンや肉まんなど中国で食べていたようなパンが食べたいと思っても、日本で売っている店はなかなかありません。そこを訪れたら、さまざまな種類の中華パンを好きに選べる店があればいいなと考えて、店を作りました」と王さんは語る。

ジューシーで肉汁あふれる中国風お焼き

オープン以来、中国の人たちはなつかしい故郷の味を、日本の人たちは見たことがないパンを求め、遠方からもわざわざ訪れる人が絶えない。魅力的なバリエーションの中からいくつか紹介しよう。

3~4種類用意されている中国風お焼き

「うちの名物なんです」と王さんが語るのは中国風お焼き。小麦粉と水で練った生地を薄く伸ばし、餃子や肉まんの中身のような具材を包んだもの。店頭には具材の種類に応じて3種類ほどが用意されている。

同店のお焼きの特徴は皮が薄く、具がたっぷりなこと。この皮を薄くするには技術が必要なのだとか。サイズは手のひらほどだが、極薄の皮にぎっしりと具材が詰まっているため、持つとずっしりと重い。

「牛肉と玉ねぎ」275円。カットすると断面からジュワッと肉汁がにじむ

「牛肉と玉ねぎ」。塩こしょう、しょうゆとシンプルな味付けで、牛肉の旨みとタマネギの甘みが生きている。ほんのり利いているのが中国のスパイス。日本人にも食べやすいようにとスパイス使いは控えめにしているのだそう。パリッと香ばしく焼かれた薄い皮と、ジューシーで肉汁たっぷりな具材とのハーモニーが絶品だ。

フワモチ食感の皮が絶品の豚肉まん

小麦を使ったもののほかに、トウモロコシの粉を使った蒸しパンも人気だ

中華まんは、肉や野菜で作った日本でお馴染みの肉まんから、餡を入れないプレーンなタイプまでそろっている。自慢はフカフカの皮。生地を一度発酵させ、成形し、さらに発酵させるという段階を経た生地はキメが細かく、目がしっかり詰まってモッチリとした弾力がある。皮だけでもおいしく、プレーンタイプに自宅で好みの総菜を挟めば、中国風サンドイッチが作れそうだ。

「豚肉酸菜まん」275円

「豚肉酸菜まん」は白菜を漬け込んで発酵させたものと豚肉を合わせている。こちらもお焼きと同じく、あふれる肉汁がたまらない。濃厚な豚肉の味わいをさっぱりさせているのが発酵白菜。酸味が口をさっぱりさせてくれ、大ぶりな肉まんもペロリと食べられる。