4. シンプルかつPOPに昇華させた「スパイスカレー43」

前述、スパイスカレー第4世代のくだりで「固定化されつつあった枠を飛び越えて自由な表現に挑む、本質的なスパイスカレーマインドをもった気鋭店」と書きましたが、次に紹介するのはその一軒。“カレーにせんほうがええのに”をテーマに越境料理を繰り出す「堕天使かっきー」や、和食とカレーの絶妙な落とし所を実現している「はぐ寧」といった奇才とともに肩を並べる「スパイスカレー43」です。

「名物は月替わりの『気まぐれドライカレーと彩りポタージュ』。ごちゃごちゃ盛られがちなスパイスカレーの要素を一切排除し、シンプルかつPOPに昇華させたのがこの逸品です。音楽でも映像でも、マニアックなものを突き詰めてマニアックに提示するよりも、突き詰めた上でわかりやすくキャッチーなPOPさに落とし込むほうが頭を使うし、アイデアとセンスと経験が必要になるんですよね。ここはそれを見事に実現しています」

ジョニー72
「スパイスカレー43」の「麻辣ドライカレーと豆腐のポタージュ」(1,200円)   出典:ジョニー72さん

カレー細胞さんは、この立体的なカレーを“タテ型ミールス(南インド式の定食)”と表現。崩した際に各層が重力により落ちることで味が混ざるという、レイヤー感のあるおいしさを楽しめます。

「ファーストアタックのキーマ、セカンドアタックのポタージュ、サードアタックの混ぜ合わせに、フォースアタックの卵崩し。最初別々に食べるからこそ味わえる、それぞれの個性の掛け算がたまりません。シンプルなカレーなのに4回楽しめるという、見事な“食のデザイン”がここにあります」

カレー細胞さんは以前「4,000軒以上食べ歩いたカレーマニアが絶賛。ポップを装いつつ凝りに凝った本格スパイスカレー!」という記事でも同店をプッシュ。カレーEXPOグランプリ受賞カレーの「瀬戸内レモンスプラッシュ」や「ネパールカレーまぜまぜごはん」に「スパイスわっぱめし」といった個性派メニューも紹介しているので、ぜひこちらも参考に。

5. センスあふれるイノベーティブスパイス料理「イーカ スーク」

最後に紹介するのは、型にとらわれない創作スパイス料理とお酒が堪能できる「イーカ スーク」。ランチはカレープレートを提供し、ディナーではハーブ&スパイスをテーマにした、センスと香りあふれるメニューが並びます。

「前菜からデザートまで、世界各国の料理をベースにした驚きの品々が目白押し。たとえば『鯖と根菜のベンガル風テリーヌ』は、フレンチ×ベンガルとしか言いようがない味わいの面白さ。『スリランカ風 低温調理のレアチャーシュー』は、ココナッツミルク香るキノコのモージュをチャーシューに添えるなど、発想が意外すぎる上にしっかりと料理に落とし込む実力もお見事。実にセンスの塊のようなお店なのです」

くぴぷち
「イーカ スーク」の「天然鯛と赤海老・ホタテ貝柱いろんな野菜のモロッコ式スパイス煮込み~タジン~(自家製焼きたてピタパン添え)」   出典:くぴぷちさん

なお、カレープレートはディナーでも味わえるのでご安心を。そして、メニューのどれもがリーズナブルという点も、カレー細胞さんがおすすめする理由です。

「前述のテリーヌは780円。ほかにも、明太子をキーマ仕立てにして半熟玉子に合わせ、バゲットで食べさせるというエレガントなビジュアルも秀逸な「めんたいマサラ半熟玉子」は380円。東京だったら2.5倍ぐらいするんじゃないかとか思うわけですけど、シェフの腕もピカイチですし料理の独創性も魅惑的。まだ全国的な知名度はありませんが、今後大注目のお店です」

府外流出も見逃せないカレートレンド

以前企画した「大阪の次にアツい関西カレーはここ! 京都の名店5軒をタイプ別にマニアが解説」で軽く触れましたが、昨今の大阪カレーで大きなトレンドとなっているのは、実は府外流出です。

背景のひとつには大阪におけるスパイスカレーが飽和状態になっていることも関係していますが、違う土地の食材やルールで挑戦的なカレーを提供するお店が出てきています。既存の枠から飛び出すという意味では、本来のスパイスカレーらしい動きだと言えるでしょう。

とはいえ大阪でも、型にはめられがちな中、あっと驚くような発想で打ち破る新星が登場しているのも事実。なんだかんだ、大阪のカレーシーンからはこれからも目が離せません。

※価格はすべて税込です。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

監修/カレー細胞(松 宏彰)
取材・文/中山秀明