焼鳥と合う日本酒とワインが充実

アルコールは、焼鳥と相性のよい日本酒とワインが揃っている。

せっかく、こだわりの焼鳥を楽しむのだから、アルコールも相性のよいものを味わいたい。同店では日本酒とワインに力を入れている。

日本酒は6種の銘柄がある。4合瓶なのでなくなるのも早く、空き次第、銘柄を入れ替えていくので、常に新しい出会いが待っている。1杯120mlと分量も手頃で、種類をいろいろ試せるのも魅力的。同店では日本酒も季節感を大切にしており、春酒、夏酒、秋のひやおろし、冬の新酒と、このサイクルで旬の日本酒を提供している。

一方、ワインは焼鳥店ながらワインリストがあり、そこには焼鳥と相性のよい銘柄がずらりと並んでいる。ラインアップを見ているだけで「どんな素敵な組み合わせがあるのか?」とワクワク、ドキドキが止まらない。ボトル売りがメインだが、一部、グラス売りもあるので、気軽に注文しやすい。

茹でずに焼いて作る“鶏皮ポン酢”

「皮ポン酢」は、茹でずに焼いて仕上げた独自の一品。

魅力的なアルコールが揃っていると、焼鳥以外の気のきいた酒肴も欲しくなる。焼鳥店でおなじみの酒肴と言えば鶏皮ポン酢があるが、同店の「皮ポン酢」700円はひと味違う。普通は鶏皮を茹でて作るが、同店は焼いているのがポイント。信玄どりの「皮」の焼鳥を2本炭火で香ばしく焼き上げ、それを串から外して盛りつけている。

下にはたっぷりの水菜と人参が敷いてあり、鬼おろしものってポン酢がかかっている。「皮」の焼鳥を食べているような、水菜のサラダを食べているような、でもやっぱり「皮ポン酢」という一品料理。そんな何通りもの味わいを楽しめる、お値打ち感の高い酒肴である。

締めはやっぱり「そぼろ丼」と「鶏スープ」

締めの「そぼろ丼」と「鶏スープ」は、ぜひとも体験したい。

充実の時間を過ごしたら、最後はやはり焼鳥店ならではの食事メニューで締めたいところ。メニューには「親子丼」「そぼろ丼」各850円、「鶏スープ茶漬け」650円があり、どれも魅力的で迷ってしまう。丼ものは「ハーフサイズ」500円もあるので、そこそこお腹いっぱいでも問題なし。

「そぼろ丼」は、焼鳥の「つくね」に用いる挽き肉をそぼろに仕立てており、甘辛い味が心地よい余韻を残してくれる。そぼろはパラパラではなく、しっとりしたもので、ウズラの卵を混ぜて食べれば、ちょっとした卵かけご飯感覚が楽しめる。鶏の地味あふれる熱々の「鶏スープ」200円も頼んで飲み干せば、シャキッとした気分で帰路に就ける。

バーテンダーから焼鳥職人へ転身

店主の菅原雅人さん。毎日、炭火の前で格闘している。

これだけの満足感を味わえたとなると、店主の菅原雅人さんの経歴が気になってくる。何でも、バーテンダーとして9年間働いた後、縁があって焼鳥の名店に移ったという。そこはソムリエが何人もいる店で、ここならワインの勉強もできると思って入ったが、それ以上に焼鳥の魅力に取りつかれてしまい、結局、6年間修業して独立を果たしたそうだ。

首にかけた名札を裏返すと、修業先の名前が出てくる。

菅原さんは、「すがわら」と書かれた木の名札を首にかけて働いているが、この名札を裏返すと、そこには菅原さんの修業先の店名が書かれている。そう、この名札は修業時代に使っていたものなのだ。独立したいまも身につけることで、修業先への感謝の気持ちと、真摯な仕事ぶりを忘れないようにしている。

燃え盛る思いを込めた店名

外観は黒でまとめ、高級感を醸し出す。

店名につけた「朱夏」とは、「青春」「朱夏」「白秋」「玄冬」と人生の年代を季節で表現した言葉である。「朱夏」は30代から50代にかけての年代と言われており、菅原さんはまさにその真っ只中。日々、燃え盛る炭火を前に、串一本、一本に燃え盛る情熱を込めて最高の焼鳥を焼き上げている。

そんな素敵な店が、下町風情の残る根津の街にひっそりとある。好きな部位を気軽に1本から楽しめる魅力の焼鳥店。それが「焼鳥 朱夏」なのだ。

【本日のお会計】
■食事
・正肉 460円
・ふりそで 350円
・ささみ 350円
・つくね 350円
・皮ポン酢 700円
・そぼろ丼 850円
・鶏スープ 200円
■ドリンク
・(日本酒)花陽浴 120ml 1,000円
合計 4,260円

※価格はすべて税込。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

取材・文:印束義則(grooo)
撮影:大鶴倫宣(grooo)