〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

令和時代ならではの新スタイル大衆焼肉店

雑居ビルの6階、まるで隠れ家のような佇まいだ

JR「新橋」駅烏森口から徒歩2分。大小さまざまな飲食店がひしめく、ディープな飲み屋街に「厳選焼肉 一石三鳥」はある。通りすがりでは見つけられないような場所にありながら、オープンした4月にはすでに予約で埋まったというから驚きだ。

席数はテーブル席のみ32席とこぢんまりしている

雑居ビルのエレベーターを上がると現れるのは、和を基調としたシンプルでモダンな空間。最新の設備を使用し、煙や臭いができるだけ服などに付かないように配慮されている。ブライダル業界出身スタッフたちの気さくな接客も心地よい。

コンセプトは手の届く高級感

この空間で高級和牛の焼き肉を食べるともなれば、財布が心配になってくるが、定番コースが7,000円台とリーズナブル。飲み放題をつけても1万円でおつりがくる。今日はちょっとおいしいものを食べようと立ち寄れる気軽さがありながら、女性同士でも入りやすい洗練された雰囲気。“高級”と“大衆”がガッチリ手を組んだ、まさに“令和時代の大衆焼肉店”だ。

肉の達人が質を見極める

ブライダル業界大手で活躍し、培ったおもてなしスキルで「一石三鳥」の人気を牽引する米田拓史さん

店を手掛けるのは、モダンな空間で食べる焼き鳥が人気の串焼きダイニング「一石三鳥」。これまでに会員制寿司店「鴉巣(からす)」や、赤坂にある高級割烹スタイルの焼肉店「和韓料理 一石三鳥」など、次々と意欲的な店をオープンさせてきた。

「『一石三鳥』という店名には、おいしい料理とお酒の“二鳥”だけでなく、居心地のいい空間や、洗練された接客などのプラスアルファを届けたいという思いを込めています。お店を出るときに、今日は一石三鳥だったね!という気分になってもらえればいいですね」と語るのは、オーナーの米田拓史さん。

16年間、さまざな肉や食材に触れ続けた肉の達人、 MURO(大室智寛)さん

その米田さんと「厳選焼肉 一石三鳥」でタッグを組むのは、肉職人、MURO(大室智寛)さん。神奈川の老舗焼肉店で修業を積み、圧倒的な肉の知識を有する肉の達人。MUROさんが肉質を見極めた肉のみを同店では使用している。

このほか、ミシュラン星付き店から大衆店まで料理長として活躍してきた和食のベテランや、ブライダルのフルコースで20年以上腕を振るってきたシェフ、肉一筋の肉料理人といった一流の料理人たちがアラカルトを担当。焼き肉だけじゃない、アラカルトもおいしい。それが同店の強みだ。

コスパ抜群、高級和牛を味わい尽くすコース

肉のベテランが吟味した肉を使用

メニューはコースとアラカルトが用意されている。コースは「定番」と「極み」の2種類。塩やタレなどの焼き肉はもちろん、肉の旨みを味わうオリジナルメニューも組み込まれ、余すところなく和牛を堪能できるコースになっている。コースからいくつかメニューを紹介していこう。

さりげなく使われている器はすべて有田焼や九谷焼などの高級品

前菜盛りに続いて供される「和牛の叩き炙り小鉢」。和牛の赤身にうずらの卵、とろろ、海苔の佃煮、茎ワサビを合わせたオリジナルメニューだ。肉の表面を炙ることで、肉の臭みが消え、肉らしい味わいも強まり、ユッケが苦手な人にも食べやすそうだ。

卵黄のコクや茎ワサビの清涼感など多彩な味が層になり、味わい深い。これから始まる料理への期待でワクワクさせてくれる逸品だ。

美味! 高級和牛のうまさに心がわしづかみ

皿の下に盛り付けられているのが「タン」、上が「タンゲタ」。切り目を入れて食べやすくしている

最初に登場するのが「黒毛和牛タン2種盛り」。黒毛和牛のタンは「黒タン」と呼ばれ、なかなか出回らないのだとか。「タン」と「タンゲタ」の2種類を盛り合わせ、シンプルな塩味でいただく。別皿で出てくるレモンをかけ、シャキシャキの九条ネギをたっぷり合わせるのがおすすめ。最小限に控えた味付けに上質な肉を使っている自信が感じられる。

希少部位なのが「タンゲタ」。タンの根元の下にあたる部分で、通常はスジが多く、焼き肉には向かないと言われている。この部位がいただけるのは、質の良い和牛を使っている証拠だ。柔らかい「タン」と対照的に弾力のある食感。しっかりと香ばしく焼いた肉をよく噛みしめれば、ジュワッと肉の旨みが湧いてくる。

上から右回りに 「和牛ハラミ」、宮崎県産の「カイノミ」、神戸純但馬うすなが牛「ウチモモ」

「タレ焼き3種盛り」。部位はその日によって異なるが、取材当日は「和牛ハラミ」、宮崎県産の「カイノミ」、神戸純但馬うすなが牛の「ウチモモ」。但馬牛は神戸牛としても知られる最高級のブランド牛。「純但馬うすなが牛」は厳格な飼育環境の中で育てられ、脂の融点が低く、とろけるようなまろやかさが魅力。

「仕入れで5割は味が決まります。最良の肉を入れられるように日々スタッフが奮闘しています」と米田さん。うすなが牛のほかにも、肉を熟知したスタッフがブランドにこだわらず日本各地の優れた肉を厳選し、提供している。

基本は自分で焼くスタイルだが、ベストな焼き具合が気になるなら、スタッフに任せることもできる

胃もたれしないように脂の溶け具合にこだわっているというだけあって、いずれの肉も脂がとろけるように甘い。しょうゆ味のつけダレは、甘さ控えめでキリッとした味わい。牛肉の甘さをグンと引き立てる。

分厚い「和牛ハラミ」は嚙み締めると濃厚な肉のうま味が口の中いっぱいに広がり、まるでステーキを食べているかのよう。ヘレに近いという「カイノミ」は脂の甘さが品よく、「ウチモモ」は赤身の旨さを感じ、後味がよい。食べるのに夢中になり思わず無口になってしまう。