〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!

食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

「築地青空三代目」グループが新店をオープン

店舗は様々な飲食店が集まった施設の一角にある。

東京を中心に横浜、名古屋、沖縄にて、魅力的な寿司店・海鮮業態の店を展開するのが、「築地青空三代目」グループ。そんな同グループが2022年早々に新店舗をオープンした。それが「EDOMAE SS」である。

店舗は「新宿横丁」という様々な飲食店が集まった施設の一角にあり、店名は「江戸前の寿司を提供するステーション」との意味を込めたもの。カジュアルに寿司が楽しめる店として、早くも人気を集めている。

フレッシュな20代の寿司職人がつけ場に立つ

板長の児玉久志さんは、弱冠28歳の若さ。

客席は7席のL字形カウンター席で、つけ場に立つのは二人の若い寿司職人。一人は児玉久志さんで、28歳という若さで板長を務めている。もう一人の伊藤大貴さんも29歳と若く、そんなフレッシュな20代のコンビで客を迎え入れてくれる。だが、若いからといって侮るなかれ。なかなかどうして、提供される寿司の何としっかりしたこと。

メニューは基本、おまかせのコースのみで、もう少し食べたい人向けに追加ネタも用意。おまかせは、にぎり7貫+手巻1本の「レギュラー」3,000円、にぎり11貫+手巻1本の「レギュラー満タン」5,000円、にぎり11貫+手巻1本+料理3品の「ハイオク」7,000円、にぎり13貫+手巻1本+料理6品の「ハイオク満タン」1万円の4種がある。

料理も楽しみたいなら、「ハイオク」がオススメ

「ハイオク」になると寿司に加え、料理も付く。

「レギュラー」と「レギュラー満タン」の違いはにぎりの数で、「ハイオク」になると寿司ネタがグレードアップし、料理も付く。それをさらに充実させたのが「ハイオク満タン」である。寿司も料理も日々の仕入れで内容が異なり、料理でいえば冬場ならカツオの刺身、白子焼き、あん肝といったものが提供される。

カツオの刺身はおろした山わさびと、みじん切りの長ねぎをあえたものが薬味として付く。薬味の量がたっぷりなので少し残ってしまうが、心配することはない。単独で食べてもおいしく、酒の肴として楽しむ客も多い。また、あん肝にはすいかの奈良漬けとわさびをあえたものがのる。こちらも薬味の役割だけでなく、酒の肴としても重宝するからうれしい。

3,000円の「レギュラー」でも、満足感はハンパない

コースはどれも魅力的な内容だが、一番スタンダードな「レギュラー」でも十分に満足できるので、初めて店を訪れるなら、まずは同商品から始めてみるのも一考に値する。

さらに、もう少し欲しいと思えば、「白えび(富山)」440円、「煮はまぐり(鹿島)」660円、「カマトロ(まぐろ藤田)」「バフンウニ(北海道)」各1,500円といった、10種ほど用意された“追加ネタ”をお好みでプラスすればいいのだから。

寿司ネタと相性のよい赤酢ベースのシャリ

ネタケースから出した寿司ネタは、常温に少し置いて適温に戻す。

さて「レギュラー」だが、同店では最初にネタを全部切りつけて皿にのせ、客の食べるタイミングに合わせて握っていく。ネタケースから取り出してすぐだと、ネタはまだどうしても冷たい。そこで少し常温に置いて適温に戻し、人肌のシャリとともに握るのだ。

シャリは赤酢ベースの合わせ酢で仕上げており、色がほのかについて、味もまろやか。小さなおひつに小分けに移して使用することで、常に人肌の温かさを保っている。

まずコダイから、そしてスミイカへ

ふわっとやわらかく仕上げられた、コダイのすしからスタート。

にぎりは皿の上に1貫ずつテンポよく出されていく。まずは、淡白なネタのコダイから。提供直前に酢洗いをし、湯引きをして皮目をやわらかくして握る。同じ白身のネタでもヒラメなどから始める店も多いが、同店のシャリは少々歯応えがあるため、あえてふわっとした食感のコダイを用いて、対照的な食感の妙味をスタートから楽しませてくれる。

続いて2貫目にはイカが登場。冬場はアオリイカやヤリイカを用いることもあるが、基本的にはスミイカを使用しているという。口に入れた瞬間、素早くシャリと混ざり合うように、ネタには丁寧に切れ目が入る。そのため、シャリがほろりとくずれると同時にイカもスーッと噛み切れ、そのやわらかさには驚かされる。

光り物から貝類への緩急のある流れが見事

イワシは酢洗いをしているため、青魚特有のくさみも気にならない。

3貫目は光り物のイワシで、その鮮やかなかたちには思わず目を奪われる。ネタには蛇腹のような飾り切りが施され、あさつき、大葉、ガリ酢をすり鉢で当てた“当たりねぎ”がのる。イワシというと青魚特有のくさみを気にする人もいるため、生ではなく酢洗いをし、一晩寝かせて寿司に。イワシが苦手な人も大いに満足する一品だ。

一般的なホッキ貝とは表裏を逆にして握る。

4貫目は、貝類のホッキ貝。提供時に湯引きし、氷水に落とさず、ほんのり温かい状態で握っている。湯引きによって赤く発色し、見た目も鮮やか。さらに甘みも増す。また、一般的な握り方とは表裏が逆で、ツルッとした面が下にくる。その結果、口に入れるやふわっとした食感が味わえ、これが何とも心地よい。