〈ニュースなランチ

毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!

東銀座の街角に現れた韓国発健康スープを楽しむ店

メニューは、干しタラのスープ「プゴク」一品だけ

韓国グルメと言えば、ブームになった「チーズタッカルビ」や「ヤンニョムチキン」、ストリートフードの「トッポギ」といった赤くて辛い料理を思い浮かべる人が多いかもしれない。一方、韓国料理には素材の旨みを生かした、優しい味わいの料理も数多くある。伝統的な健康スープ、干しタラのスープ「プゴク」もその一つだ。

店先に並んだタラノキの鉢と窓枠の上にある魚のマークが目印

この「プゴク」の専門店「たらちゃん」が東銀座に2021年12月オープン。高タンパク質、低カロリーとヘルシーな「プゴク」の専門店は日本では珍しいとあって、早くも評判を呼んでいる。

店があるのは歌舞伎座の裏側、木挽町通り沿いにある。こぢんまりした佇まいの店は亀甲形の網入りガラスやアンティーク風のドアなどがレトロで、古き良き銀座の面影を残す界隈にしっとりと馴染んでいる。

印象的な照明は佐賀、肥前吉田焼の窯元に特注したもの

店に入ってすぐに、キャッシュレスの券売機があるので、クレジットカードや交通系ICカードなどで決済し、チケットを購入。席に着けば、オーダーした「プゴク」のセットを待つだけだ。

アンティーク風の調度品一つ一つに味わいがある

席は一枚板を使ったカウンター席のほかに、奥にはテーブル席もある。スープの器の色合いに合わせた壁のタイルや、古木のような木の風合いなど落ち着いた色使いで、どこか懐かしい空間に心が和む。

高タンパク質で低カロリー! 体が喜ぶプゴクとは?

ガラス瓶に入ったプゴ(干しタラ)。これを戻してスープに使う

「プゴク」とはどんなスープなのだろう。 「プゴク」の“プゴ”は干しタラ、“ク”はスープを意味する。干しタラはスケトウダラを加工して乾燥させたもの。旨みがギュッと凝縮され、タンパク質やビタミン、カルシウム、鉄分といった栄養成分も豊富で、美容や健康に良いと言われている。

韓国では「酔いざまし」のスープとも呼ばれ、二日酔いの朝に飲む人が多いのだそう。街の食堂でもよく見かける定番メニューで、専門店も多くある。こだわりのスープで作ったプゴクは、家庭では味わえない格別なおいしさ。人気店ともなると朝から行列ができるほどだ。

同店の「プゴク」のレシピは、高さん自らが試行錯誤して作り上げたオリジナル

オーナーの高 潤美さんは、これまで飲食店の備品コーディネーターを務めるなど、飲食に関わる仕事に携わってきた。「プゴク」の専門店を作ろうと思ったきっかけは、ソウルでの専門店との出会いだという。

「ソウルを訪れたとき、専門店で朝ごはんとしてプゴクを食べたんですが、そのおいしさに感動しました。こんなにおいしい朝ごはんを、毎日、食べたいなと思ったのがきっかけです」と語る高さん。そのおいしさを伝えたいと、韓国と同じ専門店のスタイルで店をオープンするに至った。

天然の旨みがたっぷりつまった滋味深い味わいのスープ

プゴク 1,100円(税込)。水キムチとキムチ2種、味変アイテム、ご飯がセットされている

「たらちゃん」のメニューは「プゴク」一品のみ。席に着くと、セットのキムチ類がテーブルに並べられ、しばらく待つとほっかほかの湯気を立てたスープが登場する。

韓国ではスープに牛骨などから取っただしが使われることが多い。和食の良さも知る高さんは、日本人の口に合うように昆布や煮干しといった乾物を使っただしを使用。主張しすぎない、品の良い旨みはタラの風味ともうまく調和し、奥行きのある味わいに満ちたスープになっている。

韓国では好みで塩味を調整するため、あまり塩を利かせない状態でスープが供される

さらに工夫したのが塩分だ。「最初に食べた一口目で、おいしいと思ってもらえる塩加減を目指しました」と高さん。この塩加減が絶妙。柔らかな塩加減が旨みの輪郭をくっきりとさせ、思わずスープをゴクゴクと飲み進めてしまう。

スープの中にはゴロゴロとタラの身が入っており、しっかり食べ応えがある

具材は干しタラの他は、卵と凍り豆腐とシンプル。タラの身はホロホロと口の中でほどけていくほど柔らかい。旨みも残っており、スープと共に味わえば、タラ特有の淡白な味わいが口いっぱいに広がる。

日本の伝統食、凍り豆腐も干しタラに負けず劣らず栄養価の高い食品。良質なタンパク質やカルシウム、ミネラル、食物繊維などがたっぷり含まれている。