教えてくれた人

大木淳夫

「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。「東京最高のレストラン2024」が発売中。

東京初進出の進化系そばと最新調理器具を活用したラーメン

京都のおしゃれ立ち食いそばが東京初進出

9月6日、渋谷にオープンした立ち食いそば「SUBA VS」は、京都で2021年にオープンし進化系そばとして大人気となった「すば」の東京初進出店です。コンクリート打ちっぱなしで、直方体の箱形テーブルが2つ。本店と同じデザイナーの手による内装は一見の価値ありです。

そして2階にはこちらも人気の「ウィルトス」によるワインショップとバーを併設しています。常時48種類以上がラインアップされるワインディスペンサーは550円均一(量はボトルの値段によって25ml、40ml、50ml)。こちらを買って1階でそばと楽しむこともできます。

有名な「酢橘無花果」をいただきましたが、うまみ、酸味、甘みのバランスが気持ちよく、堪能しました。他にも東京限定の「とり天 毛沢東スパイス」や「バラ海苔花巻 生わさび」「島根県産宍道湖しじみと青マンダリンオイル」など、オーダーしたくなるそばが並ぶので、たっぷり悩んでください。

「酢橘無花果」 撮影:大木淳夫

調理器の進化で、新たな味に出会う

同じく渋谷で8月19日にオープンしたラーメン店「サーモンnoodle3.0 DFJ 渋⾕LAB店」は、フレンチラーメンを展開する縁petit(株)が、(株)ドクターフライジャパンと提携して運営しています。ドクターフライ社の「Dr.Fry 2s」という特殊な分子調理器を使って、フレンチ出身のシェフがサーモンのうまみを余すところなく引き出して一杯にする、という試み。

サーモンの骨や皮、内臓まで調理したというスープは口に含んだ瞬間に特有の旨味を確かに感じ、さらに同じDr.Fry 2sを活用したフリットやチャーシューも入り、飽きさせない構成に。調理器具の進化はとどまるところを知りませんね。

デイルス・マイビス
「フレンチサーモン」   出典:デイルス・マイビスさん

和の鉄人監修のとんかつは表参道で、鎌倉ではあのグレリパがフリーフローで

とんかつ激戦区に新星

9月6日、外苑前にオープンした「とんかつ じゅんちゃん」は、“和のアイアンシェフ”である「くろぎ」黒木純さんが監修しています。「THE AOYAMA GRAND HOTEL」4階の和食店「SHIKAKU」を、ランチタイムだけとんかつ店に。「まい泉」「七井戸」「とんかつ ここまでやるか。」「tonkatsu.jp」など、新旧の人気店が並ぶ激戦区に大物が参入です。

2,700円の「ロース御膳」は、群馬県産の坂東もち豚を2度揚げ。塩はもちろんですが、敢えて薄めにした大根おろし入りのウスターソースにたっぷりつけて食べると素晴らしく合います。おかわり自由のご飯は、粒が大きい岐阜の「龍の瞳」。大葉の入ったキャベツ、とんかつのソースとしても使える黄身入りのサラサラカレーの小鉢、先付で供される出汁巻たまごなど、さすがの充実ぶりでした。予約もできるので、ちょっぴり贅沢したい時にもいいでしょう。

「ロース御膳」 写真:お店から

小旅行を兼ねて味わいに行きたい料理とワイン

8月8日、鎌倉にイタリアン「GRAPEREPUBLICINC. VINERIA SALONE(グレープリパブリック ヴィネリア サローネ)」がオープンしました。グレープリパブリックは2018年に初リリースをするや、大人気を博した山形県のナチュラルワイン。海外での人気も高く、日本で5番目の輸出量を誇ります。

こちらはそのワインの魅力を存分に楽しめるイタリアンで、運営は同系列のサローネグループ。個性的な店舗を展開するイタリア料理界の一大勢力です。料理はグループ6店舗のシェフが考案した、グレープリパブリックに合う魅力的なメニューが並びます。なんといってもおすすめは4,950円のフリーフローでしょう。都心から1時間ほどの鎌倉で、小旅行気分を味わいながら気兼ねなく人気ワインが飲めるのは最高の気分です。

「なかやま牧場高原黒牛ランプのローストとズッキーニのとろとろ焼き」 撮影:松園多聞

富ヶ谷と幡ヶ谷には心も安らぐビストロがオープン

早くも富ヶ谷の街になじむ新店

8月27日、 富ヶ谷にオープンしたビストロ「料理店 吉田」は、もともと入谷にあったお店が、再開発のためこちらに移転してきました。まるで違うエリアへの引っ越しにもかかわらず、私が訪れた日は入谷時代の常連さんが多数。それだけ愛される理由は、なにより店主ご夫妻のお人柄でしょう。シェフもソムリエの奥様も丁寧で誠実そのもの。赤いギンガムチェックのクロスがかかるテーブル、木目基調の店内という、古き良きビストロの雰囲気とも相まって、素晴らしい居心地です。

ビストロ料理中心ですが、どれも味のポイントがぶれていません。特に「牛舌の煮込みと季節野菜」は名物と謳うだけあって、野菜も多彩で充実の一皿。こちらでも新たな常連をつかめそうです。

「牛舌の煮込みと季節野菜」
「牛舌の煮込みと季節野菜」   写真:お店から

「イートリップ」のシェフが作った新たな場

7月17日、幡ヶ谷には「ripen(ライペン)」がオープンしました。店主は、抜群のセンスで有名な原宿「イートリップ」、代々木上原「(イリ)」でシェフだった白石貴之さん。こちらの店内はカウンター8席ながら、後ろのスペースまでゆったりと広く、全体のトーンは落ち着いていて、心が休まります。

おすすめは5,500円5品のコースをオーダーして、足りなければアラカルトから選ぶという流れ。最近日本料理界などで注目を集めるスタイルですが、フレンチでも広がりそうです。穏やかなシェフと野菜中心の体に優しい料理。となると、何故か安心してワインが進んでしまうから不思議です。

「渋谷・チーズスタンドで作られたモッツァレラチーズと生ハム」 撮影:大木淳夫