軽やかで食べ飽きない料理の数々

帆立/チョリソ

大葉など和の食材も積極的に使用する

今回は、8,800円のコースの中から4品を紹介してもらった。まず一品目が「帆立/チョリソ」。あぶった帆立でチョリソのペーストと、自家製クリームチーズをはさみ、塩漬けの大葉で覆ったもの。添えたソースは、大葉とイベリコ豚のオイルだ。

旨みが重なり合い、小さいポーションながら満足度は高い

「スペインには“マル イ モンターニャ(海と山)”という言葉があるのですが、それを実践した冷菜です。旨味×旨味でぎゅっと味わいが凝縮します」と小林さん。

槍烏賊/春キャベツ

旨みはたっぷりだが油控えめでさっぱりと食べられる

2品目は、「槍烏賊/春キャベツ」。じっくりオーブン焼きにしたキャベツの下に新じゃがのクリームを敷き、上に、レアに火を入れたやりいかをのせ、バスク伝統のにんにく、シードルビネガー、オリーブオイルのソースを合わせてさっぱりと食べさせる。散らしたエストラゴンの清涼感も気持ちがいい。

じっくりと火を通したキャベツの甘みと苦みのバランスが絶妙

美しい一皿だが、しっかり郷土料理のアレンジが利いているのがemanらしさだ。

深川めし/バスク

パエリアのようだがパエリアより水分量が多くしっとりと仕上げる

そして、自慢の米料理が2点。一つが「深川めし/バスク」。これはもちろんながら、江戸時代から続くご当地料理だが、パエリアよりもたっぷりのだしで炊き上げる。

あさりと鯛のだしをたっぷり含んだお米

だしは、あさりと鯛のアラでとったものを合わせているので、具はシンプルにあさりとパセリのみだが、旨みの凝縮感が半端ない。

ワインを誘う味わい

「この料理には清澄白河の『フジマル醸造所』のオレンジワインをペアリングでは合わせるんですが、オレンジワインのだし的な味わいととても相性がいいんですよ。ご当地×ご当地の楽しさを味わってもらいたいと思って。通年での定番メニューにするつもりです」とサービスの原薗さんは言う。

蛍烏賊/イカスミ

イカスミの黒にホタルイカの紫が映える

もう一点の米料理は今が旬のホタルイカのパエリア「蛍烏賊/イカスミ」。

木の芽の香りが春らしい一皿

春先までの季節のメニューだ。ホタルイカは上にトッピングするだけでなく、刻んだものを中にもたっぷり入れているので、イカスミで炊きこむだけのコクにとどまらず、旨み充分のリッチな味わいが楽しめる。

充実のコースとペアリングで大満足

カウンター上の生ハムはコースのタパスとして提供

8,800円のコースの流れとしては、「うずら豆」、生ハムを含む「タパス2種」、「帆立/チョリソ」、「槍烏賊/春キャベツ」、「深川めし/バスク」、続いて主菜2品「平目/アリオリ」、「岩中豚」、締めのパエリア「蛍烏賊/イカスミ」、そしてデザート「レモングラス/蜂蜜」の全10品。米料理が2品あることもあって、ボリュームも満点。米ラバーである我々日本人にはうれしい限りだ。11,000円になると、さらに2品が加わる。

金庫の中にセレクトされたワインがずらり

ワインはペアリングで頼む人が多いという。というのも、8,800円のコースのそれは、8杯で6,000円と実にリーズナブルだからだ。スペイン各地のワインを中心に、国産ワインも織り交ぜながらのペアリングはラインアップもとても楽しい。先述のようにフジマル醸造所のものを合わせたり、コーヒーもご近所の「ARiSE COFFEE ROASTERS」のものを使ったりと、地元愛にあふれているところも好感が持てる。オープン2カ月で、すでに週末は満席とか。これから席がとりにくくなることは必至なので、早いうちに訪ねてほしい。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

撮影:溝口智彦
文:小松宏子