地産地消にとどまらない、プロジェクトの成果とは
本来プロジェクトの目的は、ロスを減らすことと地産地消を推進することだったものの、プラスアルファの成果もあった。
「グリーン」では、小麦以外の作物も含め、収穫後は通所者が職員と共に直接店舗に納品に行く。プロジェクトに賛同する幅広い業種のお店に行くことで、自分たちが作った小麦や野菜が役に立っていることを実感でき、施設内の活動だけでは得られなかった新たな体験や関わりを持つことにつながったという。
「街の人たちと関わったり、施設で育てたものが商品になったり、どれも今までなかったことらしく、通所者の家族が本当に喜んでくださって。それに、障がいのある人も健常者も、子供たちも、ごっちゃになっている環境が、プロジェクトの中で自然に出来上がっていたのもすごくいいなと。いろんなものに変わって、幸せを届けてくれる小麦粉は、“魔法の粉”だなと改めて思いました(笑)」
さらに、プロジェクトの立ち上げ時「数年かかるだろうけど、いつかつくりたいね」とメンバーたちと話していたビールの開発も、スタートから2年目に実現。青葉区のお隣の緑区・十日市場にあるブルワリーで生産されたビールは「Angel With Blue Wings」と名付けられた。
その由来は、青葉の「青」と、「喜ばれるものを届けたい」という気持ちの連鎖を、飛翔する天使になぞらえたことから。こちらもプロジェクトに賛同する地元飲食店での提供や、オンラインで一般小売りを行い大好評。2年目、3年目はそれぞれ新たな地元ブルワリーが生産を手がけて展開を続けている。
「夢は、このビールが飛行機の機内食になって大空へ飛び立つこと。名前も“青い羽の天使たち”ですし、みんなの思いが翼に乗って羽ばたいていく、というストーリーを思い描いています」
“魔法の粉”のパワーを、未来へとつなげていく
最後にプロジェクトの今後のビジョンを伺うと、少年のようなキラキラした眼差しで答えてくれた。
「まずは農家の後継者不足などによる遊休農地の活用ですね。あおば小麦を植えたり、僕たちの活動を見た若者が農業に興味を持ったり、時間を持て余している高齢者にも活躍してもらったり。そんな風になっていけたらいいなと」
小麦という“魔法の粉”から広がっていく、さまざまな可能性。食べて飲んで応援はもちろんのこと、区外の人も楽しみながら参加できる機会が、今後ますます増えていきそうだ。
※価格はすべて税込