〈「食」で社会貢献〉
2030年までの国際目標「SDGs」(=Sustainable Development Goals〈持続可能な開発目標〉の略)など、より良い世界を目指す取り組みに関心が高まっている昨今。何をすればいいのかわからない……という人は、まずお店選びから意識してみては? この連載では「食」を通じて社会貢献など、みんなが笑顔になれる取り組みをしているお店をご紹介。
“地のもの”をまるごと楽しめる! 農地に立つレストラン
神奈川県藤沢市、湘南台駅から車で10分ほど。畑が点在するのどかなエリアに立つ「農家レストラン いぶき」は、関東で初めて国家戦略特区の承認を得て、農地に建設されたレストラン。
本来、農地は農業を行うための土地であり、農家の住宅や農機具倉庫等、農業目的以外のものは建てられないことが法律で定められている。国家戦略特区とは、地域発展のためにそれらの規制を緩和する制度で、農地の有効活用も可能となった。
同店の創業者である冨田改さんは、生まれ育ったこの藤沢市遠藤で約50年にわたり造園業の会社を運営してきた。引退後は「地元に恩返しをしたい」という思いから、里山再生プロジェクトを立ち上げ、自然の景観を楽しめる山野草園「藤沢えびね・やまゆり園」を開園。同時に「農家が元気になれば景観も良くなる」と考え、特区制度を活用して藤沢産の食材を使った料理を提供する「農家レストラン いぶき」の立ち上げに至った。
「もともと地元の農家さんと一緒にやっていけるような店を、という思いで立ち上げたレストランなので、ベースは地産地消。食材の70%以上は、藤沢市産を使用しています」と教えてくれたのは、企画・運営責任者の里さん。
「山野草園を散策して里山の自然にふれ、レストランで地のものを味わう。このエリアをまるごと楽しめるような場所になればと考えています」
地元の新鮮食材と発酵調味料を使った体に優しい料理
料理の食材は、野菜はもちろん、米に卵、豚肉など、ほぼすべてが藤沢市産。近所の農家や養鶏場のほか、お店の庭の家庭菜園や、近所にある自社の畑で育てた無農薬野菜も使用しており、どれも新鮮で安心して食べられるものばかり。さらに自家製の醤(ひしお)※、甘酒、塩麹などの発酵調味料をふんだんに使用しているのも特徴だ。
※醤(ひしお)とは、麹と食塩水で造る発酵調味料。醤油の原型とも言われる。
「お店で仕込んだ発酵調味料に食材を漬け込むことで、旨みがぐんとアップします。さらに麹菌が生きているので、体内での消化吸収も良く腸活としてもいいんです」(里さん)
一番人気は、自家製醤(ひしお)に漬け込んだ唐揚げと、自家製塩麹ソースをかけた低温熟成の蒸し鶏、日替わり惣菜6種、サラダに合鴨米(田んぼに合鴨を放し、殺虫剤や除草剤を使わずに駆除をしてもらう無農薬農法)のご飯と味噌汁が付く「発酵ミックスプレート」1,518円。旨みたっぷりの唐揚げと柔らかな蒸し鶏の両方を味わえて、食べごたえ十分。日替わりのお惣菜も、旬の野菜のおいしさを生かした優しい味付けで、箸がすすむ。
すべて国産の材料で手作りした水餃子を、自家製麹ぽん酢ソースでいただく「手作り水餃子プレート」1,408円もファンが多いメニュー。一見ボリュームがありながらも、酸味がまろやかな麹ぽん酢ソースでさっぱりいただけて、女性にもおすすめ。
和風だしで藤沢産ポークとしめじをじっくり煮込んだカレー、サラダにかかっている醤(ひしお)マヨドレッシングともにまろやかな味わい。こちらもお惣菜のプレート付きで、野菜をたっぷり摂れるのがうれしい。
藤沢産の梅を3ヶ月漬け込んだ、爽やかな味わいの「梅ジュース」など、自家製ドリンクメニューも充実。