〈レストランで社会貢献〉

2030年までの国際目標「SDGs」(=Sustainable Development Goals〈持続可能な開発目標〉の略)など、よりよい世界を目指す取り組みに関心が高まっている昨今。何をすればいいのかわからない……という人は、まずお店選びから意識してみては? この連載では「食」を通じて社会貢献など、みんなが笑顔になれる取り組みをしているお店をご紹介。

SNSではすでに全国区の人気! 福岡発のオーガニックスイーツ店

花びらをかたどったチョコ「ペタル」など、目をひく華やかなルックスと豊かな味わいのスイーツを、こだわりの自然素材で作り上げる福岡の洋菓子店「shodai bio nature(ショウダイ  ビオ ナチュール)」。この春伊勢丹新宿店にオープンし、関東の人にもより身近になったタイミングで、改めてお菓子作りの根底にある食への思いや取り組みについて深掘りしていきたい。

人々の健康と地球の未来を守るための“フードフィロソフィー”宣言

伊勢丹新宿店の地下1階に、2021年4月にオープン

貧困や健康、環境など、全部で17の目標が掲げられている「SDGs」。最近になって広く知られるようになったが、実はその内容のほとんどに通じる「フードフィロソフィー(調理哲学)」宣言を、「shodai bio nature」では、SDGsの採択よりも前の2012年に掲げている。具体的な内容は以下の通り。

⏤⏤“オーガニック素材や自然由来素材を中心とした食文化の創造と継承を、生産者と共に目指します。すべての人が自然の摂理を感じ、心身ともに健康で幸福であることを願います。”

その実現のため「オーガニック及び自然素材の使用推進」「フェアトレード、国際基準に基づいたカカオ豆とコーヒー豆の取引の推奨」「遺伝子組換え素材、人工香料、保存料、化学素材、トランス脂肪酸の不使用と完全廃止への挑戦」などに取り組んでいる。

未来のために、今意識すべき“食の選択”

CEDP/チーフ エグゼクティブディレクター兼パティシエの小代智紀(しょうだいとものり)さん

日本ではまだ一般的とは言えないこれらの取り組みを、いち早く実践してきたのは「食を扱う上での責任」だとオーナーパティシエの小代さん。
「私たちの仕事は、人の体に入れるものを扱っているわけですから、極端に言えば命をお預かりしているようなもの。お客様の健康を最優先に考えるのは当然のことです」

また、食や環境への危機感もオーガニックを志向する大きなきっかけになったそう。
「果物などを直接生産者から仕入れるため、産地まで見に行くことは以前からしていたんですが、あちこち足を運ぶうちに、思っていた以上に農薬や化学肥料が一般的に使われていることがわかってきて。これは、見直していかなければ将来まずいぞと。他にやっているところがないなら、自分たちが発信していこうと思ったんです」
現在「shodai bio nature」がお菓子作りに使用している素材は、85%程度がオーガニックや自然栽培のもの。価格とのバランスを考慮しながら、オーガニック100%への挑戦を続けている。

ギフトにもぴったり! 可憐な花びら形のbioチョコレート

深青色は甘茶風味、濃黄色はマンゴ、深緑色は抹茶など、ビビッドな9色のハーモニーを楽しめる「夏彩色のペタル」(110g)4,201円

色とりどりの花びらをかたどったチョコレート「ペタル」は、繊細で美しい色合いと、滑らかな口溶けを楽しめる看板商品。印象的なブルーはスーパーフードのスピルリナから抽出、風味づけには、素材の香りを液体に移す「アンフュゼ」というフランス料理の技法を活用するなど、様々な工夫を凝らすことで、自然素材でスイーツ特有の華やかさや豊かな風味を表現している。食の安全に妥協せず、理想的な形や香りに辿り着くまでには、10年を要したとか。
「オーガニックって体にいいけど、あまりおいしくないよね。というのはうちではアウトなんです。選んでいただくからには、味もパッケージも、どこに出しても恥ずかしくないクオリティでなければ」

また、ベースのチョコレートは、フランスのオーガニック専門チョコレート会社「カオカ社」のフェアトレード(※)ショコラを使用。素材の安全性はもちろんのこと、生産者との共生や食文化の継承にも力を注いでいる。

※フェアトレード(公平貿易)とは、発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に取引することにより、生産者の持続的な生活向上を支える仕組みのこと。

体への優しさを追求したこだわりのバウムクーヘン

ピスタチオのコクのあるビターナッツの香りと木苺の甘酸っぱい香りのハーモニーが絶妙な「ピスタチオと木苺のバウムクーヘン」2,800円

定番商品のほか、季節ごとの限定フレーバーも登場するバウムクーヘンは、“必要のない素材は入れない”をモットーに、中心素材の小麦粉、砂糖、バター、卵はnon GMO(非遺伝子組み換え)、オーガニックを選択。化学的なものを一切加えないため、最近流行りの不自然なふんわり感はないものの、焼き手の技術と火の力、自然の素材が調和することで、風味豊かな味わいに。香ばしく軽やかな歯ざわりに感動する声も多い。

「バウムクーヘン オーガニック」3,501円 写真:お店から

バウムクーヘンのラインアップには他にも、卵は徳島県「旭商事」の平飼いのオーガニック卵、小麦粉はイタリア・アルタムーラ村産の古代小麦粉(品種改良が行われていない小麦)など、更なる上質な素材を追求し、オーガニック使用率を90%以上まで高めた「ディファレント(“違い”という意)」というシリーズもある。