【映画のあの味が食べたい】
『恋人たちの食卓』の心が温まる「生姜スープ」
食いしん坊は、たいてい料理をしている姿を観るのが好きだ。そういう意味では、『恋人たちの食卓』は料理シーンが素晴らしい、美味しい映画No.1かもしれません。
なんといっても主人公のチュー氏は、台北の一流ホテルの料理長。妻に先立たれた初老の彼には、年頃の3人の娘がいます。高校の先生をしている長女は生真面目で奥手。航空会社に勤める次女は気が強くて、自立心も強い。三女は大学生でマイペースな性格です。
そんな娘たちのために、チュー氏は日曜日になるとごちそうをつくります。それがなんとも見事! プロの、それも一流ホテルのシェフですからね、当然なのですが、家庭料理では到底真似の出来ないアヒルの丸焼きだの魚の姿揚げだのがテーブルいっぱいに並びます。こんなお父さん欲しい!
タイトルは、『恋人たちの食卓』ですが、原題は『飲食男女』。ちょっと邦題と原題のニュアンスに隔たりがあるような気がしますが、食欲と恋愛、つまり人生を描いている作品であることは間違いありません。
それぞれに悩みを抱えた娘たちが、自分なりの解決法を見つけて巣立って行く。父親は、理解することが段々と難しくなってきた娘たちのために、一生懸命愛情を込めて、料理をつくるのです。
監督は、『ブロークバック・マウンテン』や『ライフ・オブ・パイ』などで知られるハリウッドでも活躍する台湾出身のアン・リー。『恋人たちの食卓』は、彼がまだ駆け出しの頃に撮った、『推手』、『ウェディング・バンケット』に続く、父親三部作の最終話です。
父親を演じているのは、前2作にも登場した名優ラン・シャン。朴訥としていながら、近所のシングルマザーの子供に美味しいお弁当をそっと届けたりする優しさのあるチュー氏を味わい深く演じています。
この映画には、レストランで食べたら高価に違いない料理の数々が登場しますが、一番、忘れられないのが「生姜のスープ」です。
年老いて味覚が衰えてきたことを次女に諭される彼ですが、物語の終盤で次女のつくった「生姜入りスープ」を飲むシーンが圧巻です。「生姜の味が強すぎる」という父親に対し、娘は「おかあさんの味だ」と対抗する。この後に起きる復活のドラマは映画を観てご確認を!
出典:プニプニ51さん
ちなみに、日本でこの娘たちのような“贅沢”を味わえるのが、プライベートダイニングの「私厨房 勇」。
香港の有名シェフが引退後、自宅に気心知れた友人を招いて食事会を開いたことが始まりといわれている“私房菜(シィフォンチョイ)”という文化を取り入れた、この「私厨房 勇」もカウンター8席だけのシェフズ・テーブルです。
出典:みゅうささん
シェフの技を目の当たりにできるだけでなく、味付けや食材の好みを聞いてくれるなど、個人宅に招かれたような親密な空間で、ハイレベルな料理が堪能できます。心のこもった愛情料理+プロのクオリティは、まさに究極の贅沢ですね!
【作品紹介】
かつて一流ホテルのシェフだったチュー老人と3人の娘は、日曜日のディナーをチュー老人が作って一緒に食べることがお決まりになっていた。ある日、次女のチアチェンは父の味覚が衰え始めていることに気づく。そして彼女は、郊外にできた豪華マンションへの引越しを計画していると告げる。
『恋人たちの食卓』発売中
Blu-ray 5,184円(税込) DVD 2,700円(税込)
販売元:マクザム