ハンバーガーをこよなく愛し、そのおいしさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介してもらうこの連載。第20回は、神奈川・横浜「ペニーズダイナー」の魅力をじっくり教えてもらいます!
【じっくり食べたいハンバーガー】第20回「PENNY’S DINER」(ペニーズダイナー)
今回は、去年『香水』でブレイクしたシンガーソングライター・瑛人さんのバイト先である“ハンバーガー屋”の話をします。Tik tokやYouTubeをきっかけに『香水』がヒットして以来、彼のバイト先に関する情報がネットやテレビで多々見られるようになりましたが、「実際のところ、どうよ?」というのを、今回は食べログマガジン流にじっくり・ガッツリ深堀りしてゆきます。
瑛人さんのバイト先は「ぺニーズダイナー」。住所は横浜市中区海岸通1丁目1番地。ここはすごい場所です。店の前の通りが海岸通り。店の前の交差点は開港広場前交差点。店の裏手は象の鼻パーク。その先に大さん橋という、まさに観光地ど真ん中のお店です。
派手な店構えですが、店内はさらにド派手なアメリカン。白黒市松模様のフロアに真っ赤なベンチシート、ネオンサイン、ジュークボックス。オールディーズや80’sロックがゴキゲンに流れ、三角旗が天井から下がって、まるで年中パーティーをやっているかのような、にぎやかなお店です。
『香水』誕生のエピソード※で、今やすっかり有名になった店主の湯浅直人さん。そのご実家は、こうしたダイナー家具やコカ・コーラの販促資材などを製造・販売する「ペニージャパン」という会社で、店内にあるものの多くが同社の製品なのですが、こんなミニチュアダイナーハウスも以前販売していました。
※湯浅さんが使用していた「ドルチェアンドガッバーナ」の香水を瑛人さんが預かったのが『香水』誕生のきっかけ
ミニチュアの看板に「PENNY’S DINER」とありますが、これは実際のお店ができる“以前”に作られたものです。つまり、このオモチャを現実化させたのがぺニーズダイナーということ。なお、ぺニーズダイナーは湯浅さん個人が経営するお店です。2016年10月のオープン以来、独立独歩、地に足つけて地道に頑張ってきました。
そこへ大きな転機が訪れたのが『香水』の大ヒット。以来、“瑛人のバイト先”として広く知られるようになり、客数も一気に増えて、なかなか忙しい日々を送っています。瑛人さんもシフトから抜けちゃいましたしね。瑛人さんのぺニーズでのバイト歴は3年ほど。今も辞めたワケではなくて、とにかく「籍はある」そうです。
そんな話題のぺニーズの“実際のところ”にいよいよ迫ってまいりましょう。ネットなどでは「ハンバーガー屋」と紹介されていますが、ぺニーズは正確には「ダイナー」、アメリカ料理を提供する「食堂」です。ハンバーガーのほかにメキシカン、ハワイアンなどもあって、文字通り“多彩”なメニューを誇ります。バーガーメニューは12品。中から最もシンプルな「チェダーチーズバーガー」をまずいってみましょう。
パティは毎朝店で挽いているUSビーフ150g。挽肉とチョップ肉を半々の割合で混ぜ、カリフォルニア産の溶岩石を敷き詰めたグリラーで直火焼き。バンズは新宿「峰屋」の酒種天然酵母。こちらはオーブンでトーストして表皮はシャリッと、中はもちっと軽く弾(ひ)きのある生地感。そこへマヨネーズベースの「バーガーソース」がマイルドかつクリーミーに味を利かせて、満足感&満腹感の高いバーガーに仕上げています。
この基本のバーガーの延長に「ベーコンチーズ」や「アボカドチーズ」があるワケですが、しかし! 店主湯浅さん自身が普通のバーガーじゃ「つまらない」と思っている人なので、ここは変わったヤツを狙いましょう。ということで、次は「チミチュリバーガー」をおすすめします。
チミチュリとは南米圏でよく使われるアルゼンチン発祥のソースのこと。パセリ、にんにくなどを酢や油と合わせたものですが、ぺニーズではミントを入れているので、フッと抜けるような味がします。ミディアムに焼き上げたステーキ感のあるパティと絡むと独特な味わいに。肉のおいしさとやわらかさが実によく引き立ちます。
“映え”を求めるなら「シカゴバーガー」がおすすめ。こちらはシカゴドッグ風のバーガー。イエローマスタードをちゅるーっと絞り、シカゴドッグの定番「セロリソルト」を振った一品です。強い酸味がキュキュッ! ときて、次にバーガーソースの甘味、ハーブとスパイスの芳ばしい風味、それらを中和するアボカド。これまたクセ強めですが、色彩豊か。フォトジェニック!
次はメキシカンを。湯浅さんは代官山の「アシエンダ デル シエロ モダン メキシカーノ」でメキシコ料理を学びました。おすすめは「チキンチーズケサディーヤ」。炙ったソフトトルティーヤの間にチキンとチーズを挟んだ一品です。チキンは丸一日マリネした後、焦げ目を付け、半日煮込んでやわらか~くした労作。かかるソースはマヨベースにハラペーニョ、コリアンダーなどを加えたメキシカンソース。一番上のピンクはレッドオニオンの酢漬けです。トマトサルサとワカモレものって、これまたカラフル。
ハワイアンはガーリックシュリンプがおすすめ。下味をたっぷり染み込ませた殻付きのエビ5尾を炒めたところへレモンを搾ると最高に美味! 皿に残った汁がまた強烈においしくて、この汁をポテトに吸わせた「ガーリックシュリンプフライ」、ご飯に吸わせた「ガーリックシュリンププレート」なんて食べ方もさらにおすすめです。
まとめますと……ぺニーズへ行ったら変わったバーガーを狙ってみましょう。カラフルなバーガーが意外と多いです。そしてメキシカン、ハワイアン、どちらもイケます。それぞれの産地のビールもあるので合わせてみるのも一興。瑛人さんは多分いないと思いますが、トイレを出た向かいの扉にサインがあります。そんな、港ヨコハマのデートやお出かけをカラフルに彩ってくれる食堂です。溶岩石グリルで焼いたパティのほどよいステーキ感が美味!
※価格はすべて税込