四季折々の味覚を楽しむ、コース仕立ての新しい焼き鳥店

神谷町駅から徒歩3分、東京タワーからほど近い場所に店をかまえる「おみ乃 神谷町」。

2021年3月2日に焼き鳥店「おみ乃 神谷町」がオープンした。店主の小美野正良さんは、日本一予約が取れない焼き鳥店と評される「鳥しき」での修行を経て、押上に「焼鳥 おみ乃」を立ち上げミシュランの一つ星店へと成長させた実力派。ミシュランの星獲得がきっかけのひとつとなり、2号店のオープンを決意したという。
「焼鳥 おみ乃」では「鳥しき」の流れを汲み、次々と串が焼き上げられるおまかせのストップ申告制を採用しているが、「おみ乃 神谷町」ではコース仕立てで焼き鳥を提供する。

メニューは12,000円のおまかせコースのみ。その日によって品数は変化するが、旬の食材を組み合わせた季節料理が5品ほど、焼き物が14品ほど、〆の土鍋ご飯にデザートというのがひと通りの内容だ。

落ち着いた大人の雰囲気が漂う店内。全14席。

店内に足を踏み入れると、美しい白木のコの字カウンターが出迎えてくれる。黒と木目を基調としたシックな空間が印象的だ。オープンして間もないが、すでに連日満席の状態のため予約してから訪れたい。

旬の食材と“鶏”を巧みに組み合わせた、季節料理の数々

コースから「春菜づくし」。菜の花、たらの芽、うるい、こごみ、ウドのお浸し。

まず供されるのは、季節を彩る旬の食材を使った品々。その一端を紹介していこう。
春の訪れを告げる野菜たちをお浸しにした「春菜づくし」は、シンプルながら滋味深い一品。春の山菜の特徴である苦味をいかしつつ、スダチとワサビ醤油で味つけをしているためすっきりと食せる。

「鶏しんじょ」。やさしい味つけの銀餡に、揚げたフキノトウと花穂を添えている。

「鶏しんじょ」は、焼き鳥店である同店の面目躍如ともいえる一品。炭火で焼いた鶏もも肉のすり身とナンコツを混ぜて蒸し上げた「しんじょ」が絶品だ。ふわっとした軽い口当たりのなかに、ナンコツのコリコリとした食感が合わさる。もも肉を一度炭火で焼き上げているため、ほのかに炭の香りも感じられる。

季節料理のメインとなる「手羽先」。つけ合わせは、セリの胡麻和え。

季節料理の最後を飾るのは「手羽先」。見た目には手羽先を焼いたように見えるが、そうではない。ひと口かぶりつくと、なかにフキともち米が入っていることに気づく。フキはやや大ぶりに切っており、シャキッとした歯ざわりも抜群。鶏肉の旨みに、フキの苦味ともち米の甘みが相まって、最高の美味をつくり上げている。
こちら、手羽先の表面を香ばしく仕上げながら、なかのもち米に火を通すため3~4回に分けて揚げているそう。高温の油にさっと通しては引き上げ、余熱でじっくりと火入れをしているのだ。
職人の技により鶏と旬の味覚が見事に調和した、同店ならではの逸品である。