季節料理のあとは、お待ちかねの“焼き鳥”ゾーンへ突入

焼き台に立つのは、店主の小美野正良さん。大きな団扇をあおぎながら炭を操っていく。

季節料理を楽しんだら、いよいよ焼き物に入っていく。焼き台に立つのは店主の小美野正良さん自身だ。2号店となるここ「おみ乃 神谷町」でも、本店と変わらぬ焼き鳥を提供する。

紀州備長炭で丁寧に焼く。コースでも色々な種類の焼き鳥を食べてほしいと、ポーションは本店に比べやや小さめ。

使用する鶏は、本店と同じく福島県の銘柄鶏「伊達鶏」。実は2号店を開店するにあたり、鶏を変えることも考えたそう。さまざまな鶏を取り寄せて食べ比べたが、その結果として、やはり「伊達鶏」で行こうと決めた。

「伊達鶏」のよさは、ほどよい脂ののりと適度な弾力だ。バランスがよく、さまざまな部位を何本も食しても食べ疲れることがない。
この「食べ疲れない」というのは同店が大切にしていることのひとつ。季節料理は上品かつ繊細な味つけが特徴で、焼き鳥も塩は振りすぎることなく、タレは甘さを抑えたさらっとした仕立てになっている。鶏のポテンシャルを最大限にいかすため、丸鶏のまま仕入れて丁寧に捌く。その上で、確かな焼きの技術により豊かな旨みを引き出している。

「さび」と「血肝」は、レアに焼き上げた至高の味わい

タレにつけて焼いた「血肝(レバー)」と、塩とワサビで食す「さび(ささみ)」。

焼き物に入り、序盤に供されることが多いのが「さび」と呼ばれるささみと、「血肝」と呼ばれるレバー。
ささみを塩で焼いた「さび」は、さっぱり淡泊な味わいが魅力だ。芯まで火が入りすぎるとパサつき、芯が冷えていてもおいしくない。表面はパリッと焼き上げながらも、芯は温かい程度に仕上げるのが職人の技である。しっとりとした舌ざわりは、絶妙な火入れの賜物だ。

「血肝」は、ぷりっとした食感ととろけるような舌ざわりがたまらない一品。雑味のない豊かな風味は、質のよい伊達鶏を店で捌き、新鮮な状態で提供しているからこそ。「さび」と「血肝」は味わいこそ対照的だが、どちらも火入れの妙が光る、同店を象徴する品だ。

ワインはグラス900円~、日本酒は1合1,500円~。メニューに載っていないが、写真のような希少銘柄も用意されているので相談するとよいだろう。

野菜串などを挟みながら、焼き鳥が次々と提供されていく。至高の焼き鳥は最高の酒の肴。本店では焼酎やサワーがよく出るのに対し、こちらでは日本酒の次にワインの需要が高いそう。素材の味を引き出したやさしい味つけのコースには、日本酒やワインがよく合うのだ。

「季節の彩りを、焼き鳥という食文化で表現したい」

コース内容は日によって変化するが、季節料理5品ほど、焼き物14品ほど、そして土鍋ご飯とデザートと続くのが定番。

季節料理に加え、小美野さんの手による焼き物が14品ほど堪能できるため満足度が高い。〆の土鍋ご飯にデザートまでいただけば、男性でも満腹になるだろう。

なぜコース料理というスタイルを選んだのか、小美野さんはこう語る。
「焼き鳥は、なかなか季節を表現するのが難しい料理です。そこで、コースのなかで鶏と旬の素材を組み合わせた季節料理をご提供することで、季節の彩りを演出できるのではないかと考えました。大人の空間で季節を感じながら、ぜひ日本の文化である焼き鳥を楽しんでいただきたいですね」

同店の立ち上げに当たり、小美野さんは料理長として荒巻将司さんを抜擢した。日本料理店で6年、焼き鳥店で3年ほど修業してきており、彼の季節料理と小美野さんの焼き物が見事に合わさることでコースが完成する。お互いがそれぞれの役割を果たしながら、ひとつの流れをつくっているのだ。
大人の空間で季節料理とともに至高の焼き鳥を堪能する、贅沢なひと時をぜひ大切な人と過ごしてほしい。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

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※本記事は取材日(2021年3月18日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・文:梶野佐智子(grooo)
撮影:松村宇洋