〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

予約が取れない名店が監修プロデュース

赤地に黒文字で「焼肉 ホルモン」と書かれた長提灯。黄色地の両端に赤文字で「ツラ」「キモ」と記し、それを黒文字の「と」でつなげた暖簾。初めて見たにもかかわらず、どこか懐かしさを感じてしまう親しみやすい2階建ての店舗。そして、ガラス戸には、「曙橋 焼肉ヒロミヤ 監修プロデュース」との筆文字が躍る。そう、この店こそが今年5月19日にオープンした、東京・芝の「ツラとキモ 炭火焼肉 いわしげ」なのである。

赤の提灯と黄の暖簾の色づかいが印象的な外観。

同店は予約が取れない名店として名高い、曙橋の「焼肉ヒロミヤ」が監修プロデュースした店。「焼肉ヒロミヤ」の売り方に倣い、焼肉のコース料理とセルフサービスの飲み放題を看板商品に据えている。そのメニューが、「【2階席限定】おまかせコース+2時間飲み放題付5000円コース」(利用は3名から。2名の場合、電話で要問い合わせ)で、商品名のとおり2階席限定のメニューである。アラカルトメニューも揃えるが、実に客の8~9割が注文する圧倒的人気商品だ。

店内は昭和の雰囲気を漂わせる、どこか懐かしさを感じさせる造り。

誰もが憧れた、サーバーから生ビールを注ぐ喜び

では、なぜこのメニューは2階席限定なのか? それは、ドリンクのセルフサービスコーナーが2階にあるためだ。だから、1階席の客も2階まで元気に上り下りしてドリンクを作るのであれば、もちろん注文できる。ドリンクをおかわりする度にちょっといい運動になるが、それもまた一興だ。

セルフサービスコーナーには、ひと通りのドリンクを網羅。サーバーから生ビールを注いだり、一升瓶から日本酒を注いだり、注意書きに沿ってカクテルを作ったりと、誰もが一度は憧れた飲食店の“プロの現場”を体験することができる。例えば、カシスリキュールのところには、「カシス逆さに一回とウーロン茶又はオレンジジュース又は炭酸又はジンジャーエールで割るといいと思います」と書いてある。「…思います」と書かれたその独特の控えめな言いまわしに、どこかほっこりさせられる。

セルフサービスコーナーはドリンクだけでなく、ご飯とスープも用意されており、こちらもおかわり自由だ。

鮮やかな紅白のキムチとナムル

さて、肝心のコース料理だが、料理は2人客の場合は写真のように2人前盛りで提供される。最初に出てくるのが「前菜二種」で、内容は白菜キムチともやしナムルという焼肉店定番の脇を固める料理。シンプルにして食欲をそそるものがあり、キムチの“紅”とナムルの“白”の色合いが、実に対照的で映える。その紅白の“めでたい”色に思わず目を奪われてしまう。

見た目に鮮やかな紅白のキムチとナムル。(写真の料理はすべて2人前の盛りつけ)

「きも焼」で鮮度のよさをアピール

キムチとナムルを肴にアルコールで喉を潤したところで、いよいよ焼肉メニューの登場だ。まずは店名に掲げられた「キモ」のほうの「きも焼」。ぷりっぷり、つやつやの国産牛レバーが1人3切れずつ盛られ、ゴマ油、塩、うま味調味料を合わせたものが一緒に添えられる。これに牛レバーをまんべんなくつけてから、表面にほどよく焼き目をつけつつ、炭火で香ばしく焼き上げる。肉汁が炭に落ちると白い煙がふわっと舞い、これから出てくる焼肉に胸が躍る。

「きも焼」は、ひとかたまりに見えるように盛りつけられる。まずこれで肉の鮮度のよさを感じてもらう。

希少部位のツラミを“肉刺し”で!

「きも焼」で肉の鮮度のよさを実感し、次の焼肉に期待を寄せていたら、なんとフェイントで“肉刺し”が出てきた。「つらみ刺二種」の、「炙り刺」と「ゆっけ」である。店名に「ツラ」と掲げたほうの料理で、ツラミとは牛の頬肉のこと。薄くスライスし、バーナーで炙ったものが提供されるので、手を煩わせることなくそのまま食べるだけ。普段からそう食べる機会のない希少部位のため、日常からちょっと離れた気分を味わえる。

「炙り刺」と「ゆっけ」の「つらみ刺二種」。国産牛の頬肉をバーナーで炙ったものが提供される。

「炙り刺」は、万能ネギと炒りゴマが彩りよくふられている。好みで薬味のおろしニンニクや生姜味噌をちょんと添え、醤油につけて食べる。「ゆっけ」はタレがかかって卵黄がのって出てくるので、よくからめていただく。「炙り刺」はさっぱり、「ゆっけ」はこってりと、味の変化を楽しめるのもうれしい。

こってりした「ゆっけ」と、さっぱりした「炙り刺」。希少部位のツラミを食べ比べできる体験は、なかなかない。

メインはツラミと王道の焼肉メニューを

コースは再び焼肉に戻り、続くは「つらみ焼二種」と「特上焼肉」。「つらみ焼二種」は、「塩焼」と「味噌焼」の2種の味で。「特上焼肉」は、「タン」「カルビ」「ロース」という王道の焼肉メニューのラインナップ。

カテゴリー的には「つらみ焼」と「特上焼肉」2種の焼肉だが、味が混ざらないように、“塩” “味噌” “タレ”の3種の味に分けて提供。“塩”は「つらみ焼」の「塩焼」と、「特上焼肉」の「タン」を。“味噌”は「つらみ焼」の「味噌焼」を単独で。“タレ”は「特上焼肉」の「カルビ」と「ロース」という盛つけになっている。

塩味のツラミとタンは、「焼肉ヒロミヤ」特製のブレンド塩、ゴマ油をもみ込む。味噌ダレとタレは肉にかけるだけ。

ツラミはスライスの肉刺しとは切り方を変え、やや厚めに切って歯応えのよさを楽しめるようになっている。タンはアメリカ産を用い、タン中を厚めに切って提供。カルビとロースは和牛のメスのA4以上を指定して仕入れ、リブロースを採用。リブ芯をロースに、残りをカルビに用いている。

まずはあっさりした、塩味のツラミとタンからいただこう。

締めは肉のオールスターのカレー!

飲み放題なので、心ゆくまで飲んで焼肉を堪能するのもいいが、ご飯とスープもセルフサービスで食べ放題なので、焼肉を“オンザライス”しながら食べるのもいい。また、卵も付くため、タレの焼肉とともに卵かけご飯に仕立てて食べるのも楽しい。

だが、どんなにおいしくても食べすぎには要注意。なぜなら、最後に「肉カレー」が出るから。具材はタン中、タンスジ、ツラミといった焼肉メニューの端材を活用したもので、いろんな部位を少しずつ盛り込んだ、まさに肉のオールスターとも呼べるカレーである。ご飯の量もちょうど茶碗1杯分程度なので、これなら多すぎることなく完食できる。

焼肉の端材を活用したカレーで、いろんな部位が贅沢に入る。(カレーは1人前)

「ツラとキモ」という店名の意味を実感

ツラミという、カルビやロースほどメジャーではない部位にスポットを当て、その魅力をきらりと光らせているのが同店。そして、鮮度抜群のレバーとの2本柱で焼肉の奥深さを改めて教えてくれる。食べて、飲んで大満足の同店のコースを食べ終えれば、「ツラとキモ」というちょっと風変わりな店名の意味も、きっとよりいっそう実感できることだろう。これだけ堪能して五千円札1枚ですむという至福。何度も通いたくなる魅惑の焼肉店だ。

店長の岩重浩一さん(左)と、スタッフの山本真司さん(右) 。
【本日のお会計】
【2階席限定】おまかせコース+2時間飲み放題付5000円コース
■食事
・前菜二種 白菜キムチともやしナムル
・きも焼
・つらみ刺二種 炙り刺とゆっけ
・つらみ焼二種 塩焼と味噌焼
・特上焼肉 タンとカルビとロース
・肉カレー
・ご飯
・スープ

・卵

■ドリンク
・角ハイボール
・カシスオレンジ

・日本酒2種

合計 5,000円(2人前10,000円)
※価格は税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2020年10月2日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・文:印束義則(grooo)
撮影:玉川博之