〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
インバウンドの増加や食材の高騰で、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

赤坂でもウマい肉を食べたいとき物怖じせずに選択できる「炭火焼 ホンマ」

多くの焼肉店が軒を連ねる東京・赤坂。近くにはテレビ局や一流企業の入るオフィスビルがあり、政治家が利用する高級料亭もあるなど、「赤坂で焼肉」となるとリッチなお食事のイメージ。そんな場所に、昨年10月に現れた焼肉店が、極上のメニューを提供しながらお財布に優しいとの情報あり!

店内の様子もわかるガラスで囲われた店構え

訪ねたのは、東京メトロ・赤坂駅と赤坂見附駅の中間くらいでどちらからも徒歩3分ほど。赤坂みすじ通りから少し歩いて小路を入ると、道の両サイドに有名焼肉店やハングル文字が書かれた外観でアピールする韓国料理店などが並ぶ中、シックなトーンでまとめたカフェを思わせるガラス扉の「炭火焼 ホンマ」が見えてくる。

和食店のようなカウンターが続く店奥にテーブル席も用意

店内は、カウンター席と奥にテーブル席を用意した全26席。高級店に多い、個室やテーブルごとに仕切りが立ち並ぶレイアウトではないので、緊張することもない。

 

オーナーの本間大輔さんによれば、「わかりやすい焼肉店というより寿司屋のような和テイストのライブ感を楽しんでもらいたい」というのが内装の意図だそう。季節も暖かくなれば、前面のガラス戸をすべて開けてオープンカフェのようにする予定だとか。

 

内装には力を入れたが、1〜2万円ほどのつもりで店に入ったお客さんがリーズナブルに食事をしてもらえればと、ギリギリの価格設定をこの赤坂で実現。目指したのは、アッパー層だけの店ではなく、「たまにはいいかな」というくらいで利用できる焼肉店。

肉を焼いてくれるのもお客さんの様子を見て、近すぎず、遠すぎずな接客にも好印象

本間さんは、もともと某有名焼肉店で肉の買い付け担当や店長も務めていた肉のプロフェッショナル。従来の焼肉店のスタイルとは違うことに挑戦したかったそう。例えば、オープンキッチンにすることでお客さんとコミュニケーションを図ったり、その日のお肉の状態や質に合わせて毎回味付けを変更したり、お客さんの食べ方に応じてテーブルごとに出すタイミングや順番を変えたりと、コース仕立てで“おもてなし”できるようにしている。

自腹でも余裕の「ホンマおまかせ5,000円コース」をいざ!

話を聞いたかぎり、この「炭火焼 ホンマ」を存分に楽しむなら本来はアラカルトでのオーダーや要望にあわせて用意してくれる「ホンマおまかせスペシャルコース」(8,000円)がいいのだろう。だけど、今夜は自腹……。

 

ということで、まずはお試しでお店の力量を測れる5,000円コースをいただくことに。

「浅漬けキムチ」

コースで最初に運ばれてきたのは、オーダーが入ってから漬けるシャキシャキ感が半端ない「浅漬けキムチ」。辛いというより魚介の和風ベースなだしを使った旨味と、桃やリンゴといったフルーツによる、砂糖に頼らない甘味を持った漬けダレの上品な味わい。アラカルトのグループ客がひとり一品ずつオーダーするほど人気の裏番長的病みつきキムチだ。

「本日の刺身(センマイ)」

毎日の買い付けにより、その日市場から仕入れた新鮮な食材を提供する本日の刺身。この日も食べた「センマイ」が出されることが多いとのこと。タレも辛みが立つようなものでなく、酢でさっぱりとした味わいに仕上がっていて、アペタイザーとしての役割を十二分に果たす。この時点で、お酒はもう2杯目に。

「タン塩、うらタン」

和牛にこだわる店の「タン」は、ほかとは別次元の味わい。ほどよい厚さに切られ、噛むほどに味が深まるのだが、惜しいくらいに長く噛んでいられない柔らかさも和牛ならでは。お店のスタッフが上手に網の上で焼いてくれるので、カリカリになってしまわないのもうれしい。

 

オーナーの本間さんに聞けば、この店ではタンが一番原価率が高く、それくらいに“いいもの”を抑えた価格で提供しているとのこと。

「極ミノ、極ホルモン、オススメ塩ホルモン2種(レバー、トントロ)」

名物である「極ホルモン」は、「極ミノ」「オススメ塩ホルモン2種」とともに一皿に盛られて登場。

 

オススメ塩ホルモン2種として出てきたハツは、厚切りなので外側をしっかり焼いて、ミディアムレアくらいで食べれば芳ばしい香りと食感が楽しめる。もう1種類はトントロで、このためだけに平田牧場の「金華豚」を取り寄せているという徹底ぶり。世界でも希少な最高品種の上品な甘みを楽しめるとは、贅沢!

 

極ミノは噛むとシャキシャキした食感で、あっさり食べられる。コースの折り返しで脂っこいものを食べると、せっかくお酒をもう少し飲みたいのに……となってしまいがちだが、この極ミノであれば無問題!

炭火で焼かれる大きなホルモンは迫力とシズルあり

そして、網の上で炭火に焼かれる大きな丸い物体こそが、名物の極ホルモン。お店を利用した韓国人客にも「悔しいけど、韓国で食べるホルモンよりおいしい」と言わしめたそう。

 

和牛のホルモンだと脂分が多いものがあることから、チリ産のグラスフェッド牛のものを取り寄せているという。しかも、この極ホルモンのために特別に育てられ、だからこその大きく丸いスペシャルサイズ。噛み応えもありながら、歯切れもよく柔らかさとトロっととろける味わいは、食べてみれば実感できる上質さ。ほかでは中々食べられない名物のひとつだ。

「ハラミ、カルビ」

黒毛和牛にこだわる同店のカルビと、この部位だけはと厳選した結果、唯一のUS牛プライムグレードのものを使用したハラミ。どちらも赤身の味わいに間違いはないが、それぞれの良さを食べ比べられる。

 

カルビはさすがA4の上位レベルの肉にこだわって仕入れているだけあり、しっかり入った脂身までウマい! それでいてさっぱりと口通りもよく、もたれることなし。そして、ハラミはUS牛らしいしっかりとした赤身肉の味わいだが、柔らかく噛むほどにジュワ~っと染み出る肉汁がウマい!

「韓国式焼しゃぶ」

コースの肉を〆るのは、オーナーの本間さんが韓国に行って知った“チャドルバギ”という食べ方の「韓国式焼しゃぶ」。

 

薄くスライスした牛肉をサッと数秒焼くのだが、それを和牛でやれば「絶対ウマいだろ!」と自信を持って選んだ部位がブリスケット。牛の肩の部分で、肉のプロたちが支持する知る人ぞ知る部位。歯ごたえもあり旨味も十分な肉だが、脂がちょっと強いので、青唐辛子とネギを合わせた三杯酢のようなタレでスッキリ食べるスタイル。

コースに+2,000円でドリンク飲み放題。写真は「生ビール(ビスビール)」

手頃ながら満足が過ぎるくらいのコースを味わってきたが、炭火焼 ホンマはドリンクもお財布に優しい。赤坂でお酒を飲むとどれくらい取られるのかと不安になるところ、コースには飲み放題が2,000円で付けられる。ここ、赤坂ですよ!? ヱビスの生ビールも含めてなので、これは酒飲みなら一択でしょう!

「盛岡冷麺」

〆の食事として出てきたのは、岩手から独自に作ってもらい取り寄せた「盛岡冷麺」。魚介だしの澄んだスープが優しい味わいで、キムチなどと一緒に食べる韓国式の甘味のある冷麺とは違い、ラストもさっぱりと終えるところに同エリアの他店にないオリジナリティが感じられる。

「ホンマおまかせ5,000円コース」

これだけ揃って十分なほどに楽しめる、ホンマおすすめ5,000円コース。味付けも、部位や素材へのこだわりも半端ない皿が並ぶ。ただ、こちらは炭火焼 ホンマの基本の“キ”を知るコース。オーナーから伝えられたのは「ウチを知ってもらうには、上ロースやユッケもある7,000円のコースで食べてもらうといいですかね」と。え、ユッケ!?

アラカルトでプラスしたい! 貴重な「和牛“生”ユッケ」

「和牛“生”ユッケ」アラカルト2,000円

赤坂でも数えるほどの店でしか提供していない、認可も取った昔ながらの“生”で食べられる和牛のユッケは、炭火焼ホンマを訪れたらオーダーしておきたい一品。濃厚なコクを持つ卵黄の「こだわり卵」が、新鮮な生肉の旨味を一層引き立てるとのこと。卵がプルンとしてツヤがいい。

 

ただ、今夜は隣のテーブルに運ばれてきたユッケをちょっと写真に収めさせてもらうのみ。5,000円のコースでも十分に満足だったけれど、せめてアラカルトで別注文をしておかないと後悔もの!

5,000円、7,000円とコースと内容を希望でアレンジして提供する8,000円のスペシャルコースも用意

次に来るときは、もう2,000円、3,000円と出して上のコースを選んでもいい! それでも一人10,000円しない極上の焼肉を、東京の真ん中で食べられる幸せ。

 

パートナーや会社の仲間、友人も「赤坂で炭火焼肉どう?」と誘えてしまう、コスパに優れた良店を焼肉激戦区で見つけてしまったのだった。

 

【本日のお会計】
■食事
「ホンマおまかせ5000円コース」
浅漬けキムチ
本日の刺身
塩サラダ
タン塩
うらタン
極ホルモン
極ミノ
オススメ塩ホルモン2種
カルビ
ハラミ
韓国式焼しゃぶ
冷麺
■ドリンク
飲み放題
+2,000円(120分制・90分ラストオーダー)
※7,000円以上のコースの場合、150分制・120分ラストオーダー
合計7,000円

 

※価格はすべて税抜

 

 

取材・文:舘野頼正
撮影:横山勝彦