お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第18回は、銀座・丸の内エリアで買える世界6カ国のチョコレートブランドを紹介します。

 

前編は、〈日本・スペイン・フランス〉の3カ国からスタート!

【猫井登のスイーツ探訪18・前編】〜銀座・丸の内で世界6カ国のチョコレートショップ巡り〜(日本・スペイン・フランス編)

 

食べログマガジン編集部

今年もバレンタインデーが近づいてきましたね! 先日、とあるデパートのチョコレートイベントに立ち寄ってみたら、チョコレートを買い求める老若男女でごった返していましたよ。

 

猫井先生

元々、バレンタインデーは女性から意中の男性にチョコレートを贈る日という位置づけでしたが、義理チョコ、友チョコ、自分へのご褒美チョコ……など、ずいぶん変化しましたね。

 

食べログマガジン編集部

たしかに。私も買うのはほとんどご褒美チョコです(笑)。ただ毎年すごい数の新商品が登場するので、どこで買えば良いか迷ってしまうんですよね〜。

 

猫井先生

そんな方々のために、今回は銀座・丸の内エリアにある様々な国の有名チョコレート店を巡りつつ、各国のチョコレートの特徴やトレンドを見ていきたいと思います。まずは、日本のお店から行きましょうか!

【1軒め】「ショコラティエ パレ ド オール 東京」

 

猫井先生

こちらは、三枝俊介氏が立ち上げたチョコレート専門店ですね。三枝氏は、大阪のご出身で「ホテルプラザ」で修行されたのち、1990年独立。91年、大阪にパティスリー「メランジュ」をオープン。96年にフランス・リヨンの名店「ベルナシオン」を訪れてショコラティエへの思いを強くされ、2004年には大阪・梅田に、07年には東京・丸の内に「ショコラティエ パレ ド オール」を立ち上げられました。

 

食べログマガジン編集部

お店も重厚な感じで、高級店が漂っていますね!

 

猫井先生

三枝氏は、カカオ豆の焙煎から仕上げまでを手掛けるBean to Bar(ビーントゥバー)の日本における先駆者としても知られ、工房で、全ての素材を最初から手作りし、ひとつひとつの作業を丁寧に行うのをモットーとされています。昨年10月には、ホワイトチョコレートの専門工房も立ち上げられるなど、日本のショコラ界をリードされている人物ですね。

 

食べログマガジン編集部

それは期待が高まります! 特におすすめの商品はありますか?

curu
出典:curuさん
 

猫井先生

こちらでの一番のおすすめは、お店の名を冠した「パレ ド オール」でしょうね。直訳すると「金の円盤」という意味で「ベルナシオン」のスペシャリテでもあります。ビターなガナッシュ(チョコレートクリーム)が詰まったシンプルなボンボンショコラですが、工房で独自にブレンドされたカカオの品質の高さが際立つ逸品です。口に含むと滑らかに溶け、カカオの芳醇な香りが広がり、甘さ、苦み、ほのかな酸味が一体となって奥深さを味わうことができます。表面には金沢の高級金箔が散りばめられ、ゴージャスに仕上げられています。

 

食べログマガジン編集部

ワインなどのお酒と一緒にちびちび食べるのも良さそう……。バレンタインの限定バージョンとかはありますか?

「コフレ レザムール」2,571円(税込)
 

猫井先生

今年のバレンタインのスペシャルバージョンは、こちらの「コフレ レザムール」ですね。今ご紹介した、スペシャリテの「パレドオール」をはじめ、ハート形の「シャンパン ベリー」、赤とピンクの色が鮮やかな「ジャンドゥーヤ ノワゼット」、「ジャンドゥーヤ ココ」といったバレンタイン限定ショコラのアソートとなっています。

 

食べログマガジン編集部

ひゃ〜、ステキです。これ買っていきます!

 

猫井先生

最初から、とばしますね(笑)。

 

食べログマガジン編集部

次はどの国のチョコレートショップへ?

 

猫井先生

2軒めは、スペインのチョコレート店に行きましょう!

【2軒め】「カカオ サンパカ 丸の内本店」

早瀬あゆき
出典:早瀬あゆきさん
 

食べログマガジン編集部

スペインのチョコレートって珍しいような気がするのですが、どんな特徴があるんですか?

 

猫井先生

日本でチョコレートというと、一昔前だとスイス、その後だとベルギーとかフランスというイメージが強いかもしれませんが、それはミルクチョコレートがスイスで発明され、ボンボンショコラという一口大のチョコレートがベルギーで生まれ、フランスで洗練されていったという経緯があるからです。もともと、チョコレートの原料であるカカオは中米が原産地で、大航海時代にスぺインがヨーロッパに伝えたものです。つまりスペインはヨーロッパで最初にカカオが伝来した地なわけで、今でも奥深いチョコレート文化が根付いています。

 

食べログマガジン編集部

なるほど……納得です。

 

猫井先生

「カカオサンパカ」は、1999年創業のスペイン・バルセロナのお店です。カカオの輸入・製造会社を親会社に有し、ビーントゥバーを採用。商品の産地交配をせず、香料も使わず、カカオ本来の味を追求し、スペインのショコラ文化を発信しています。スペイン王室御用達のお店としても有名ですね。

「ハートベア」各種
 

食べログマガジン編集部

クマの形や、ハートが付いた板チョコなどインパクトのあるものが多そうですね。

「ハートタブレット」各種
 

猫井先生

今ご覧になったのは新作「ハートベア」や「ハートタブレット」ですね。そちらもこの時期人気ですが、チョコレートをじっくり味わうということであれば、「ラジョラス」という板チョコをおすすめしますね。特に「ネグロ」と呼ばれるダークチョコレートのシリーズは絶品ですよ。ネグロにも色々な種類があり、お願いすれば試食もできます。

 

食べログマガジン編集部

仕事の合間など、カカオをガツンと感じたいときのために1枚欲しいですね。あと、こちらの「サル デ イビサ」が気になります。

写真右「サル デ イビサ」1,620円(税込)
 

猫井先生

スペイン・イビサ島の海塩を練り込んだもので、力強い味わいです。なかなかツウ好みな味わいなのと、塩気を感じるので日本酒のアテにも良さそうですね。

【3軒め】「ラ・メゾン・デュ・ショコラ 丸の内店」

curu
出典:curuさん
 

猫井先生

さぁ、3軒めはフランスのブランドです。パリで1977年創業。ショコラの高級化路線の道筋を作り上げたお店と言っても過言ではないでしょう。創業者のロベール・ランクス氏は、ショコラというものを、カカオの特性を活かして表現するクリエイティブなお菓子として位置づけ、今では当たり前となった、カカオを重視してショコラを作るというスタイルの礎を築かれました。

 

食べログマガジン編集部

ひゃ〜、そんな凄いお店だったのですね!

 

猫井先生

ランクス氏は、カカオそれぞれの香りを熟知され、ハーブやスパイスを加えて洗練された香りや味わいを持つガナッシュを次々に作り上げ、「ガナッシュの魔術師」と称される人物です。なので、こちらでは、是非ボンボンショコラを味わっていただきたいです!

 

食べログマガジン編集部

それは見逃せませんね。ちなみにバレンタインデーの限定アイテムもあるんですか?

 

 

猫井先生

それでしたら、こちらの「パリ・ジュテーム」はいかがでしょうか? 今年のバレンタインコレクションのテーマは、パリの日常に欠かせない「カフェのテラス」だそうで、パッケージもそれに合わせたものになっていますよ。

「パリ・ジュテーム」4個入り/2,106円(税込) 撮影:食べログマガジン編集部
 

食べログマガジン編集部

パッケージも可愛いですね!

 

猫井先生

中身は、香リ高いダークガナッシュにミルクチョコレートとノンアルコールのスパークリングワインを加えたまろやかで爽やかな風味の「ペティヨン モンマルトル」。ほんのりバニラを利かせた、コーヒー風味のアーモンドとヘーゼルナッツのプラリネ「デザンヴォルト サンジェルマン」など、3種のガナッシュと1種のプラリネが楽しめる内容となっています。

 

食べログマガジン編集部

サイズ感的にも自分へのご褒美チョコにぴったりですね! これも買っていこう(笑)。

残り3カ国のチョコレートショップ巡りは後編にて!

次回お送りする後編では、アメリカ・ベルギー・イタリアのチョコレートブランドを紹介します。お楽しみに!

 

写真・文:猫井登