京のおやつは何にする? Vol.5
京都のことを知りたい! もっと楽しく巡りたい! そんな京都好きな方にお届けする、心ときめく京都の旅とおやつのお話。
案内人は、京都在住の和菓子ライフデザイナーの小倉 夢桜-Yume-さんです。
春の訪れを感じる、2月の京都
立春となって、京都市内では所々で春の兆しを感じられるようになってきました。待ちに待った本格的な春の到来はもうすぐ。その前に、ひと足早く春を感じる京都のお菓子をご紹介しましょう。
2月の京都は、香しい梅に春を感じ、お世辞にも上手いとは言えない音程を外した鶯の鳴き声が何処からともなく聞こえてきます。そして、メジロが元気に枝移りを行っています。
学問の神様で有名な北野天満宮は、梅の名所でもあります。1月上旬より、ほころびはじめた梅のつぼみが見頃を迎えるのが2月下旬頃。
ちょうど梅が見頃を迎える頃の2月25日が祭神の菅原道真の命日です。その日に梅をこよなく愛した道真を偲んで「梅花祭」が華やかに行われます。
梅の甘い香りが立ち込めているなか、上七軒の芸舞妓さんたちの奉仕による華やかな野点(のだて)が行われます。
和菓子で味わう、春の便り
「千本玉壽軒」
北野天満宮より東へのんびり歩いて10分足らずの場所に京菓子司「千本玉壽軒(せんぼんたまじゅけん)」があります。
こちらの和菓子店は、この時期に梅にちなんだ上生菓子を店頭で販売しています。日頃より、上生菓子の色合いには定評があるお店らしく、ご紹介するお菓子も思わずうっとりしてしまうような意匠です。

北野天満宮では寒紅梅が愛らしく健気な姿で咲いています。その光景を表現した、こなし製のお菓子です。

紅白梅をイメージした色合いのこなしの生地に型押しされた牛と梅の模様。春の気配を感じるお菓子です。
北野天満宮を訪れた方には、説明がなくても、その意匠を見るだけで北野天満宮を想像してしまうのではないでしょうか。
北野天満宮へ参拝に行く際には、散策がてら立ち寄ってみてください。
「長久堂」
3月3日は、雛まつりとして親しまれている「上巳の節句」。別名「桃の節句」とも呼ばれ、暖かな春の訪れを感じる行事です。
京都では、旧暦にならって、一ヶ月遅れて4月3日に行なわれるご家庭が多くあります。その頃は桃の花が咲く頃。そこから桃の節句と呼ばれるようになりました。
北山にある老舗和菓子店「長久堂」では、愛らしい桃の節句にちなんだお菓子が店頭に並びます。
こちらのお菓子「ひちぎり」は、京都で作られる雛まつりの代表的な上生菓子です。

もとは平安時代、宮中の儀式の祝儀に用いられた「戴き餅」に由来します。
白いお餅を引きちぎり、真ん中を窪ませて、その上に餡を載せただけのものでした。
その戴き餅が、時代を経て江戸時代に現在のような意匠となりました。
こちらのお店では、江戸時代から伝わるひちぎりを少しアレンジして、可愛らしく仕上げています。華やいだ桃の節句にふさわしいお菓子です。

桃の節句に飾られる雛段飾り。京都では、向かって右側に男雛、左側に女雛を並べます。
「ひなうたげ」は、外郎とこなしで模ったお雛様をモチーフにしたお菓子です。
一目見て思わず「可愛い!」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらのお菓子があれば、みなさん喜んでくれること間違いなしだと思います。
ちょっとしたプレゼントにも最適です。
※予約販売のみ
写真・文:小倉 夢桜-Yume-