京のおやつは何にする? Vol.4
京都のことを知りたい! もっと楽しく巡りたい! そんな京都好きな方にお届けする、心ときめく京都の旅とおやつのお話。
案内人は、京都在住の和菓子ライフデザイナーの小倉 夢桜-Yume-さんです。
雪化粧を愛でる、1月の京都
2020年を迎えて、気持ちも新たに「今年こそ!」と心に誓って過ごしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。街には、迎春や新春などの文字が溢れています。つい春めいた気分になってしまいますが、寒さの本番はこれから。
例年1月下旬から2月になると、比叡山や北山の頂が雪化粧した様子を京都市街地から眺めることができます。


近年は、めっきりと降雪が少なくなりましたが、市街地でも雪化粧となった風景を見ることができるかもしれません。

桜、新緑、紅葉の印象が強い京都ですが、雪化粧になるとまるで水墨画の世界に迷い込んだかのような風景が広がります。

寒い中を観光して冷えた身体は、温かい甘味で癒やしてみてはいかがでしょうか。
ほかほかのおやつで温まろう!
「中村軒」
阪急桂駅から徒歩約10分ほどに宮内庁管轄の「桂離宮」があります。日本の美を凝縮したと表現されるほど、美しい庭園です。現在は、予約制で通年一般公開が行われています。普段は人気の為、予約を取ることは難しいですが、冬の時期は比較的容易に予約を取ることができます。
私のオススメは、朝一番です。朝一番は、タイミングが良ければ薄らと雪化粧をした庭園を見ることができるかもしれません。大雪でない限りは、10時頃にはその雪も解けてしまいますので、機会があればぜひ朝一番に訪れてみてください。
その桂離宮からほど近くにお店を構えるのが、1883年創業の「中村軒」です。

昔ながらの風情と味を大切に今日まで守り抜かれてきました。「なつかしい昔の味、あっさりしたおいしさ」を求めて、京都はもとより他府県からも多くの方が訪れる人気店です。
「食べログ スイーツ 百名店 WEST」には、2017年より3年連続で選出されています。
白味噌仕立てのお雑煮
この寒い時期に店内で召し上がっていただけるものといえば、真っ先に思い浮かべるのが「お雑煮」です。

こちらのお雑煮は、京都ならではの白味噌仕立て。白味噌を召し上がったことがある方の中には、甘くて苦手だという方もいらっしゃるかもしれません。私もその一人ですが、こちらのお雑煮は別格です。甘さを感じることなく、鰹と昆布の風味を味わいながら、あっさりといただくことができます。
大きい器の中には、「角がなく円満に!」という願いのこもった白い丸餅と京野菜の頭芋が入っています。そこに風味豊かな削りたての鰹節をお好みで入れて楽しめるようになっています。先ずは鰹節の香りを楽しんでから、お雑煮を召し上がってくださいね。
旬の柚子を使った「かぜしらず」
寒いこの時期が旬の柚子を使って、お客さんに温まっていただけるものをという思いから、5年ほど前より販売が始まったお菓子です。
高知産の柚子を使用した柚子釜の中に葛湯を入れたものです。

葛は、古来より食用や薬用、漢方薬などの民間療法にも取り入れられているほど親しみがある食材です。風邪を引いたときに葛湯を飲むという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらのお菓子を食べて、風邪をひかないようにという願いを込めて「かぜしらず」という名前がつけられています。葛湯そのものにはあえて柚子を入れていないため、柚子釜の柚子の風味がほのかに葛に移った食べやすいものとなっています。
もの足りない方は、添えられている柚子をお好みで搾ってお召し上がりください。香り、味わいから日本の冬の旬を感じるお菓子です。
お土産には麦代餅がおすすめ
お帰りの際には、クヌギの木を薪として使用して炊き上げた小豆を使った和菓子をお土産にしてはいかがでしょうか。名物「麦代餅(むぎてもち)」をはじめ、常時10種類ほどの和菓子が販売されています。

お店をあとにする頃には、きっと心も身体も温まっていることでしょう。
「茶寮 宝泉」
初詣の参拝者で例年賑わう下鴨神社。その境内・糺の森で営業を行っている休憩処「さるや」。下鴨神社の名物「申餅」を約140年ぶりに復元したことは、まだまだ記憶に新しいところです。
申餅や良縁ぜんざいを求める参拝者が後を絶たない人気のお店。それもそのはず、こちらは小豆にこだわる和菓子店「宝泉堂」が営むお店だからです。
その宝泉堂が茶寮として営業しているのが、今回ご紹介する「茶寮 宝泉」です。「The Tabelog Award」のBronzeと「食べログ スイーツ 百名店 WEST」に、2017年より3年連続で選出されています。

下鴨神社より北へ、ほど近くの閑静な住宅街に佇む立派な日本家屋を店舗としています。打ち水をした玄関が清々しく、心地よい緊張感に包まれています。
靴を脱ぎ、通された座敷からは、陰翳礼讃(いんえいらいさん)の世界を垣間見ることができ、高級料亭にいるような気分になります。
希少な白小豆でつくる白小豆ぜんざい
冬の時期に召し上がっていただきたいのが、「白小豆ぜんざい」です。

希少品であり、とても高価な兵庫県産の白小豆を使用しているメニューです。白小豆の価格は、相場にもよりますが、一般に流通している国産小豆の10倍ほど。

その白小豆の中でも、粒の大きさや色、硬さなど品質の良いものだけを選別して使用しているこだわりの一品。農家さんが出荷の際に手作業で選別されたものを、再びお店で選別を行い使用している、手間暇かけた素材です。
そのようなぜんざいをいただくことができるのは、小豆にこだわるお店ならではの心意気です。白く輝く、まるで宝石のような白小豆。
一見すると味気のないように思ってしまいそうですが、いい意味で期待を裏切り、白小豆の旨みを存分に感じることができる贅沢なぜんざいです。
お店に行ったことがない方はもちろんのこと、お店に行ったことはあっても白小豆ぜんざいを食べたことがないという方も、一度は召し上がってみてください。
そして、お帰りの際には、お土産に常時4~5種類の四季折々の情景を感じる上生菓子が販売されていますので、買い求めてみてはいかがでしょうか。

素敵なひとときを過ごして、お店をあとにすることができるでしょう。
写真・文:小倉 夢桜-Yume-