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【今これがキテる!】~チキンサンド編~
「『アメリカで大・大・流行中のPopeyes(ポパイズ)のチキンサンドが食べたいけれど、日本だと米軍基地の一般開放デー以外に食べられる術がなくて耐えられない!』というチキンサンド好きもいるのでは。ということで、“日本でも食べられるチキンサンドのおいしいお店”を紹介する記事をひとつお願いできないでしょうか……」
という編集部の依頼を受けまして、この記事では日本のチキンサンド事情についてお伝えします。まずその前に、アメリカで騒ぎになっている“Chicken Sandwich”とはいかなるものか? というところから見てまいりましょう。
今アメリカで話題沸騰中の「Popeyes Louisiana Kitchen(ポパイズ ルイジアナ キッチン)」は、ルイジアナ州ニューオリンズ発祥のフライドチキンのチェーン店です。日本でおなじみの「ケンタッキーフライドチキン」も南部ケンタッキー州の発祥。ということで、アメリカで「チキン」といえば「南部の食べ物」というのが一般的な認識です。そこで、米国南東部ノースカロライナ州在住のレーシングドライバー・尾形明紀さんに現地の様子を聞いてみました。
「チキンサンドイッチといえば、アトランタ発祥の『Chick-Fil-A(チックフィレイ)』が断然人気で、開店から閉店まで目に見て分かるほどいつも混んでいますね。特に、朝・昼はドライブスルーの列が本当に凄いですよ」と尾形さん。
「チキンサンドイッチはやはり人気メニューなんですか?」と尋ねたところ、
「近所に、ノースカロライナ州シャーロット発祥の『Bojangles’ Famous Chicken ‘n Biscuits』がありますが、今のような立派なチキンサンドが発売されたのはつい最近のことです。このエリアは、チキンと言えばサンドイッチよりもチキンテンダーが人気です。グリルもありますが、ディープフライを食べる人が多いですね。南部は何でもディープフライにする食文化があるんですよ。」
というお話で、流行りや騒ぎとは関係なく、現地では普段からよくチキンを食べているのは確かなようです。なお、「ディープフライ」とは、要は「揚げ物」のことです。「南部では何でも油で揚げる」ということですね。
では次に、今夏ポパイズが発売した「Chicken Sandwich」とはどんなものか見てみますと、マリネした鶏むね肉に衣をつけて揚げ、ピクルス、マヨネーズとともに「バンズ(bun)」※の間に挟んだ、至ってシンプルなサンドイッチです。ハンバーガーのような形をしていますが、あくまでも「サンド」であって、チキン「バーガー」ではありません。
※バンズのことを米国では単数形で”bun”と呼びます。

「チキンバーガー」という食べ物があるとすれば、細かく挽いた鶏肉を成形して焼いた、つまり「つくね」のようなものが挟まったものになると、私は思います。「ハンバーガー=牛挽肉のパティをバンズに挟んだもの」ですので、チキンバーガーはその「牛」が「鶏」に置き換わったものと考えられます。「バンズに挟めばバーガー」では「ない」ということですね。今度のブームを機に、日本でも「チキンサンドイッチ」なる呼び方が根付けばいいなと願っております。
さて、そんなポパイズのチキンサンドですが、米国では3.99ドル、日本円にして430円ほどで売られています。ライバルである「Chick-Fil-A」のサンドも4.49ドルと、ほぼ同じような価格と内容です。では、いよいよ本題……ポパイズのようなチキンサンドを日本で食べるには、どこへ行けばいいでしょうか?

ポパイズの感じにより近いのは、「SHAKE SHACK」が昨年日本でも販売を始めた「Chick’n Shack」でしょうか。ポパイズ同様、マリネしたチキンを揚げています。シュレッドレタスなしで頼めば、ポパイズのサンドとほぼ同じ内容になります。
日本でおそらく最も有名なチキンサンド、「ケンタッキーフライドチキン」の「チキンフィレサンド」は1983年の発売。ほかにも、主だったハンバーガーチェーンへ行けば、チキンを挟んだメニューは大抵ありますが、中でも、とびきりゴキゲンなチキンサンドが食べられる店を以下3店ご紹介します!
1. 3種類の味わいが選べる! 感動レベルのチキンサンド「FATBURGER」
まずは、私の中で都内最強! LAから来たハンバーガーチェーン「FATBURGER(ファットバーガー)」のチキンサンドイッチから。

マリネ液に半日漬け込んだ鶏モモ肉(推定120~130g)を、フライにすると「クリスピー」、鉄板で焼くと「グリル」、そこへケイジャンスパイスをかけると「スパイシー」の全3種類あります。身が厚くて立体感があり、肉汁豊かでとにかくジューシー! そしてやわらか! マリネ液はインドの「タンドリーチキン」を思わせる味付けで、ちょっとエスニック。野菜はレタスとトマトのみ。あとはマヨネーズ。ソフトなバンズとの相性もよく、「チキンサンド」として実に上手くまとまっています。いまや私はファットバーガーへ行くと、コレばっかり頼んでいます。3種どれも甲乙つけ難いおいしさ!
2. プロ野球選手もぞっこんのボリューミーなチキンサンド「E・A・T」
続いては、プロ野球・福岡ソフトバンクホークスへの移籍がついに決まった、元・東京ヤクルトスワローズの主砲、ウラディミール・バレンティン選手がこよなく愛した「E・A・T(イーエーティー)」のチキンサンドです。

バレンティン選手はフライドチキンが好物で、同店が神宮球場の近くにあった頃には、週に3度も4度も食べに来たそうです。2013年、シーズン最多本塁打記録を塗り替えた日の前日も翌日も来店。食べたのはもちろんこのチキンサンド!
チキンは鶏モモ肉なんと220g! 鉄板で皮目をしっかり焼き込み、これ以上ないくらいまで脂を抜いてから、オーブンで加熱する「ロースト」に近い調理法。その上にレモン果汁の酸味が利いたトマトサルサと、濃厚なコク味のたまごサラダ。バンズは新宿「峰屋」作。オーブンで芳ばしく焼けたケイジャンスパイスがヒリリと辛味を利かせて、ド派手でゴージャス。迫力の一品!
3. 韓国No.1フライドチキンチェーンの味を日本向けに「bb.q OLIVE CHICKEN cafe」
ラストは韓国No.1の店舗数を誇るフライドチキンチェーン「bb.q CHICKEN」の日本版、「bb.q OLIVE CHICKEN cafe(ビービーキュー オリーブ チキン カフェ)」のご紹介。
韓国はとにかくチキンのメニューが盛んな国で、同チェーンだけでも国内に1,800店もあるそうですが、韓国でチキンと言えばビールと楽しむ「居酒屋的」な業態が主流。一方、日本向けの独自ブランドとして新たに開発された同店は、米国のフライドチキンチェーンをモデルにした「ファストカジュアル」なスタイルをとっています。

全4品の中からおすすめは、基本の「オリーブチキンバーガー」。国産鶏のささみ肉約70gをスペイン産オリーブオイルとソイオイルをブレンドした油でフライ。衣の「ガリガリ」が印象的で、ハニーマスタードの甘味もよく利いて、味わいにぎやかで華やか。これで390円はお手頃かつ十分満足な一品です!
鶏肉は牛肉よりもクセがなく、素直な味なので、調理法やスパイス、かかるソース次第で、その味が大きく変わります。鶏料理はシンプルゆえに結果も顕著。チキンサンドもその例外ではなく、技術や工夫、仕込みひとつで「こんなにおいしくなるんだ!」ということを、皆さんにもきっとわかっていただけると思いますので、ぜひぜひお試しください!
取材・撮影・文:松原好秀