蒸しかごから上がる湯気の熱と香りにテンションもアガる!

このところ急激に活気づいている東京の中国料理。六本木に誕生した、オリジナリティあふれる料理とワインをカジュアルに楽しめるお店が人気急上昇中だ。

 

「スチーム Dim Sum&Wine」という店名が語るように、蒸し点心が豊富。“点心師”、鈴木高輔シェフが作るオリジナルレシピの食感と食材の組み合わせが魅力的で、オープンして半年も経たないが早くも客で店内は埋め尽くされている。

蒸し点心と人気を二分するのが、平岡志保子シェフの作る一品料理。薬膳を取り入れ体に優しく、ちょっぴりアジアンテイストな料理は、女性はもちろん健康に気遣う男性にも評判が高い。

 

平岡シェフ、細腕で鍋をガンガンあおった後は必ずガス台をサッと拭くので、ガス台まわりは常にピッカピカ。細やかな気配りに、カウンター越しに見ているこちらも清々しい気分になる。これは味も期待できるに違いない。

イマドキの中国料理は「うまい! 早い! コスパ良し!」そして「おひとり様OK!」がキーワード

こちらで振舞われるのは、10年間同じ厨房で腕を振るってきた中国料理一筋の二人のシェフが作り出す広東料理をベースに、それぞれの料理人としての人生を映し出したかのような料理だ。

 

蓋を開けると湯気とともに小さな料理が現れたときのワクワク感が醍醐味の点心は、「餃子」や「焼売」の他に「春巻」や「鮮魚蒸し」など、王道からイノベーティブまで常時14〜15種類が揃い、何度訪れても飽きない。

「おにぎり」や「焼肉」からインスパイアされたオリジナルの点心は、食べるとイメージができるほど再現されていることに驚かされる。また定番である「フカヒレ」はコリコリっとした食感が心地良かったり、「アワビ」には肝を入れて磯の風味がいつまでも余韻となって残るようにしたり、どこか他にはない楽しさがある。「お腹いっぱいになっちゃうでしょ」と小ぶりなサイズなのもうれしい。

鈴木シェフの点心をひと通りいただいた後は、平岡シェフの鍋さばきに注目だ。ピチピチと油の音がして準備が整うとまずは野菜を油通しする。続いて中華鍋にホタテ、野菜を入れ強い火力で炒め始める。2〜3回あおってあっという間に完成した。

 

野菜はシャキシャキ感があり、ホタテは真ん中がうっすら透き通る絶妙なレア加減。完璧な火入れだ。できたてのアッツアツを頬張ると、一段と香り高く穏やかで優しい味わいが口いっぱいに広がる。

「海鮮とアジアンハーブの爽やか炒飯 ライム添え(1,750円)」はパラパラしたタイ米と甘くてもっちりした日本米をブレンドした、いいとこ取りの独特の香りがある“ハイブリッド炒飯”だ。

 

エビ、タコ、貝柱にアスパラガスと具材もたっぷり使い、盛り付けも美しい。ライムをキュッと搾ると一気にアジアンテイストに。「すべては出会った料理人と料理から学んだこと」と語る平岡シェフならではの料理である。

中国料理と合わせるのはワインや果実酒がニュースタンダード!

中国料理といえばビールや紹興酒だが、実はワインや果実酒を合わせる時代がきている。ひとつの皿に様々な味が混在する点心にはロゼやオレンジワインがピッタリなのだ。こちらではグラス900円〜1,500円で12〜13種類、ボトルも30種類ほど用意している。グラスでペアリングというのも良いだろう。

カウンターに並ぶ自家製の果実酒もおすすめだ。中国のクコの実だけを使ったり、柿や生姜など平岡シェフが料理に合わせて作っている。ストレートでも良いが、清涼感のあるソーダで割るのが人気だ。

 

中国料理といえば大皿で、点心もなぜか3個単位のお店が多く、3〜4人でシェアするのが基本。ところがこちらはひと皿が1〜2人前で点心は3個から1個ずつプラスでき、一つずつ種類の楽しめるメニューも。コースでなくても一人で5〜6品を堪能できるのが新しい。

 

創意工夫された点心や型にはまらない新感覚な料理、それに合わせるのはワインや果実酒。いま、東京はこんな個性的な中国料理の進化が止まらないのだ!

 

※価格は税抜

 

撮影:森山祐子

取材・文:高橋綾子