ハンバーガーをこよなく愛し、その美味しさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介していただく連載がスタートしました。

 

記念すべき第1回は、東京・六本木にある「ゴリゴリバーガー タップルーム」のハンバーガーの魅力をたっぷり教えてもらいます!

【じっくり食べたいハンバーガー】第1回「ゴリゴリバーガー タップルーム」

私、松原がハンバーガーに興味を持ち、「探求」するようになってから15年。その間、いろんな店へ行き、いろんな人と会いましたが、「ゴリゴリバーガー タップルーム」のオーナー・中村多聞さんほどのハンバーガー好きに、私は今まで出会ったことがありません。なぜそう言い切れるか、その理由をこれからお話ししましょう。

 

「ゴリゴリバーガー タップルーム」は、「EXシアター六本木」という劇場の裏手にあるハンバーガーショップです。“タップルーム”と名の付くとおり、クラフトビールが樽生で飲める、平日は18時からオープンのお店です。

 

写真:お店から

その店名、そして「ゴリラ」のキャラクター。なかなかクセがすごい店ですが、注目はそのゴリラが店内の壁の絵の中でやっているスポーツ……。そう、オーナーの中村さんは、有名なアメリカンフットボールのプロ選手だった人です。ポジションはRB (ランニングバック)。国内のリーグ・選手権から海外まで、華々しく活躍し、今は大学や実業団チームでコーチをやっています。

 

そのかたわら、飲食業歴も30年。今のようにグルメバーガーが流行る前の1999年から、かつて大阪・梅田でオーナーを務められていた店で1個1,000円するハンバーガーを出していました。

 

「3×3(スリーバイスリー)ゴリゴリバーガー」

これが看板メニューの「3×3ゴリゴリバーガー」2,400円です。オージービーフ180gのパティが3枚と、レッドチェダーチーズ、あとは自家製ソースがほんの少量、中身はそれだけ。パンと肉とチーズだけのバーガーです。

 

中村さんにとって「チーズ抜きはハンバーガーとは呼ばない」そうで、逆を言えば「チーズさえあればゴキゲン」と。野菜もソースも一切なし。味わいの力強さが何倍も増す、そんな“通好み”な食べ方と言えるでしょう。

 

パティを堪能したい人はバンズ無しの「カーボ・ヘイター」もおすすめ/出典:koutagawaさん

パティはブロック肉を店で自家挽きした10mm強の粗挽き。挽き肉と言うより、まさにフットボールの球のような、「コロコロ」「ぷにぷに」した楕円形の肉粒の集合体です。グリルは鉄板で。3枚重ねなので持つとアッツアツ! スパイス、ハーブ、赤ワインを中に混ぜ込んでいて、かなり個性的な濃い味付けのビーフパティです。

 

バンズは99年以来ずっとお願いしているという大阪の小さなパン屋作。「コリコリ」「ゴロゴロ」した肉の食感と強い味付けで、食べくちゴリゴリ! 例えるなら「スタミナ丼」のバーガー版のような、精がつくこと間違いなしのド迫力バーガーです。

 

ハンバーガーは、ハードな運動でカロリー消費が激しいスポーツ選手には「もってこい」な食べ物に思えますが、日ごろから食事を厳しく摂生・管理している真剣なアスリートにとって、脂肪や塩分が多いハンバーガーは「あまり食べてはいけないもの」だそうで、現役当時の中村選手がハンバーガーを食べられるのは唯一、試合の日だけでした。

 

「ゴリゴリバーガーJr.」/写真:お店から

普段はNG、それが試合が終わるとようやくありつけるという。「食べたくてたまらない!」という強い思いを胸に、中村選手はハンバーガーを我慢して我慢して、日夜ハードな練習に耐え抜いてきたワケです。

 

食べたい。でも食べられない――。そんな渇望の末にようやく口にするバーガー。「アスリートだった僕にとってファストフードは敵であり、ご褒美だったので、今でも食べるのをつい控えてしまいます」と中村さん。それだけに「たま~に食べる自分の店のバーガーを楽しんでます!!」という、その「たま~」に食べる一個はどんなにおいしいことでしょう。

 

モノに溢れ、食べたいものがいつでも食べられる今の時代だからこそ、むしろ味わえない食べ物一個の重みと有り難みを、中村さんの話を聞いて痛いほど感じました。

 

「本物のナチョス」

そして、ハンバーガー以外に、忘れてはならない看板メニューが「本物のナチョス」1,880円。中村さんが選手時代、アメリカで初めて食べて「なんやこれ?!」と驚き、以来自分の店でずっと出し続けている不動のメニューです。スモールサイズもあります。

 

「クラフトビール」Lサイズ

ハンバーガーをより美味しく味わうための樽生ビールは、定番・ゲストビール合わせて常時10銘柄ほど。中でも、マストで用意されているというカリフォルニア「シエラネバダ」の各種は、多聞さんが「毎晩アメリカで飲んでいた」という思い出のビールです。

 

 

また、料理以外に特徴的なのが、注文はすべて各席設置の「iPad」で行える点です。他のハンバーガー専門店に先駆けて、2016年7月のオープン時より導入しています。

 

「この人のハンバーガー好きには敵わない」と私が唯一思った相手、それが中村さんです。そんな、“アメフトもハンバーガーも日本一!”な、中村さんが作る愛に溢れたハンバーガーを、クラフトビールとともにじっくりご堪能あれ!

 

※価格は全て税抜

取材・文・写真:松原好秀