〈食欲を満たすヘルシー麺、麻辣湯を食べにいざゆかん〉第2回

日毎に増す食欲とどう付き合うか。そんな秋の一大テーマにきっちり応えてくれる、食べ応えのあるヘルシー料理が、重慶発祥と言われる野菜たっぷりの春雨麺、麻辣湯(マーラータン)。第1回で紹介した注目の新店、日本における麻辣湯の老舗やあの有名な餃子屋さんが手がける新たな麻辣湯のお店を、3回にわけて紹介します。

ヘルシー派も納得の幸せ麺。“一麺三長!”とよびたくなる、麻辣湯の3つの魅力

がっつり食べたいヘルシー派にも選ばれるのは、全方位的に優秀だから。唐辛子や花椒をかせたスープと低カロリーな春雨、トッピングにはたっぷりの野菜。知っておきたい、その“三長”をまずはおさらい。

◆その1)野菜やキノコ類ほか、選べるトッピングが多彩!

白菜や青梗菜、香菜などの葉物からレンコンやジャガイモなどの根菜、しめじや舞茸などのキノコ類まで、トッピング野菜の種類がとにかく豊富。旬の野菜を楽しめるほか、野菜不足を解消できる!

◆その2)旨い・辛い・痺れるスープで発汗!

旨味たっぷりの白湯に唐辛子と花椒、そしてさまざまなスパイスが加えられた旨シビ辛スープが麻辣湯の特徴。飲み干せば体がポカポカに。代謝アップも期待できそう。

◆その3)麺がヘルシー

春雨麺は小麦粉を主原料とする中華麺に比べてぐんとカロリーが低いのが魅力。食べ応えもしっかりあってスープもよく絡む。店によって太さや食感が違うのも楽しい。

第2回 日本の麻辣湯を語るならここ。その4つの魅力とは?

七宝麻辣湯 渋谷店

中華圏で女性たちを中心に高い人気を誇る麻辣湯を日本に紹介したい!と、2007年1月に日本初の麻辣湯専門店として渋谷にオープン。以来、より良い一杯を目指してブラッシュアップを続け、熱狂的な麻辣湯ファンを着々と増やしてきた店が「七宝麻辣湯」だ。現在は全国に4店舗展開している同店。今回は1号店に当たる渋谷店で、日本の麻辣湯シーンを牽引する名店の魅力をチェック!

【魅力その1】
葉物やキノコ類から香味野菜まで選べるトッピングは常時50種類以上!

ターサイや青梗菜、ほうれん草や空芯菜といった葉物野菜はもちろんのこと、えのきやエリンギ、まいたけ、きくらげといったキノコ類、パクチーやミョウガといった香りの強い野菜など、多彩な野菜を新鮮な状態で取り揃えた冷蔵ケース。「女性客のニーズはある程度意識しましたが、トッピングの傾向は男女でそれほど変わりません」とのことだが、やはりパクチーは女性に圧倒的人気で、売り切れてしまう日もあるそうだ。

お店の人に教えてもらった、人気のトッピングベスト3。
写真左:空芯菜+イカ団子+きくらげ、
写真中央:パクチー+ミニトマト+えび入り水餃子、写真右:フータマ+ターサイ+豚肉

 

冷蔵ケースには野菜以外にも多彩なトッピングが用意されているので、バランスよく取り入れてみたいもの。スープをジュワッと吸ってくれるフータマ(中華麩)や、独特の食感が楽しめるきくらげなどは不動の人気を誇るトッピングだ。中国ではあまり見られないというトマトは、濃厚なスープを爽やかに。意外に人気があるのが納豆。他にも面白そうなものは取り入れているとのことで、取材時にはだし巻き卵やカニカマ、塩昆布なども。

【魅力その2】
一口飲めばクセになる。香り豊かで濃厚なスープは、毎日食べたくなる一杯

白きくらげ、パクチー、イカ団子をトッピングした「麻辣湯」(2辛)。基本トッピング3品+春雨で 750円(税込)、追加トッピング 110円(税込) ※110円(税込)アップで春雨大盛り・替玉・中華麺への変更が可能

 

「うちのスープはあくまで春雨と具材を美味しく食べるためのもの」とオーナーが話す通り、スープと中身の一体感がここの麻辣湯の特徴。濃厚なスープは辛さが自由に調整できるのはもちろん、ここでは他にも「極薬膳」「強壮」「トムヤム」110円(税込)をプラスすることで、自分好みの味にアレンジ可能。テーブルの上に用意されている黒酢や花椒、にんにくも適宜入れれば、味に奥行きが増す。

テーマは「医食同源」。滋味深い味わいは30種類以上の薬膳スパイスが決め手

「七宝」のスープには、花椒、大茴香、草果、陳皮、丁子、肉桂、羅漢果、党参、竜眼……と、30種類以上の薬膳スパイスが。そのほとんどが漢方薬としても使われているものだ。ベースとなっているのは鶏・豚・牛をじっくり煮込んだ白湯。薬膳スパイスの特製醤と塩ダレをどんぶりに入れ、そこに熱々の白湯スープを注ぐというやり方は、最近取り入れたそうだ。オーナーによれば「中国ではスープも醬も一緒に寸胴に入れるので、うちもずっとそのやり方を踏襲してきた。でも、こちらの方が確実に香りが立つ。思い切って変えてみたら、断然美味しくなりました」とのこと。

【魅力その3】
スープの絡みを追求した、モチモチ食感の特注春雨

程よい太さの春雨はおなじみの緑豆ではなく、馬鈴薯(じゃがいも)と甘藷(さつまいも)が原料

 

「日本人になじみの深い緑豆春雨は、炒め物やサラダ、春巻の具材などに向いています。ただ、モチモチした食感があり、スープとうまく絡むのは、芋のでんぷんで作られた春雨。そのなかで、絡み具合、太さ、形状が最良のバランスのものを徹底的に追求しました」とオーナー。スープをたっぷり纏った春雨が口の中につるりと入ってくる感覚は「七宝」ならでは。

【魅力その4】
パワーアップした充実のサイドメニュー

麻辣湯だけだとちょっと物足りない、という人のためのごはんものはなんと4種類! 「本当に麻辣湯に合うものを」と甘さをグッと控えた“新・クラフトサワー”や、お酒との相性を考えた小皿料理も新登場。

サワーやビールのつまみにすれば箸が止まらなくなること請け合い。ラムパクチー 520円(税込)

 

この10月にデビューしたばかりの小皿料理のひとつで、ヘルシーなラム肉にクミンなどのスパイスをかせてウイグル風に炒めた一皿。たっぷり盛られたパクチーの香りとスパイスの香りとが相まって、サワーやビールが進む進む。ミニトマトとの相性も抜群。お腹にもたれないので、麻辣湯の前菜にしても全く問題なし。

ちょっと多いかも、と思っていても、食べ始めたらあっという間に完食必至。七宝卵ごはん280円(税込)

 

麻辣湯に白ごはんもいいけれど、もう少し何かがのっていたら嬉しいな。そんな気持ちに応えるごはんものが充実しているのも、痒いところに手が届くこの店のいいところ。「七宝卵ごはん」はトロトロのめかぶと、豚のスープや魚醤などが入った七宝特製の塩だれで食べる、卵かけごはんの決定版。塩だれは麻辣湯で使っているのと同じもの。

新・クラフトサワー 左から甘酒サワー、生トマトサワー、薬膳サワー、MIX レモンサワー各550円(税込)

 

食中酒としてちゃんと楽しめるものを、と新たに開発した“新・クラフトサワー”に注目。麻辣湯の刺激を優しく和らげてくれるのは、美容効果も期待できる「甘酒サワー」や「豆乳サワー」。野菜不足を補う「生トマトサワー」や「青汁サワー」は、注文ごとにミキサーで作るという凝りようだ。麻辣湯だけでなくお酒でも薬膳を!という健康第一派には、ちょっと癖のある「薬膳サワー」がおすすめ。スペイン産ノーワックス凍結レモンにライムとオレンジをミックスした「MIXレモンサワー」はゴロゴロの果実が迫力満点。ダイエッターも筋肉女子もギルティフリーに楽しめる。

カウンター席に座ると目の前には、白湯スープがぐつぐつ煮立つ大きな寸胴が

撮影:ミヤジ シンゴ
取材・文:山下紫陽