〈食欲を満たすヘルシー麺、マーラータンを食べにいざ行かん〉第1回

日毎に増す食欲とどう付き合うか。そんな秋の一大テーマにきっちり応えてくれる、食べ応えのあるヘルシー料理が、重慶発祥と言われる野菜たっぷりの春雨麺、麻辣湯(マーラータン)。注目の新店、日本における麻辣湯の老舗やあの有名な餃子屋さんが手がける新たな麻辣湯のお店を、3回にわけて紹介します。

ヘルシー派も納得の幸せ麺。“一麺三長!”とよびたくなる、麻辣湯の3つの魅力

がっつり食べたいヘルシー派にも選ばれるのは、全方位的に優秀だから。唐辛子や花椒をかせたスープと低カロリーな春雨、トッピングにはたっぷりの野菜。知っておきたい、その“三長”をまずはおさらい。

◆その1)野菜やキノコ類ほか、選べるトッピングが多彩!

白菜や青梗菜、香菜などの葉物からレンコンやジャガイモなどの根菜、しめじや舞茸などのキノコ類まで、トッピング野菜の種類がとにかく豊富。旬の野菜を楽しめるほか、野菜不足を解消できる!

◆その2)旨い・辛い・痺れるスープで発汗!

旨味たっぷりの白湯に唐辛子と花椒、そしてさまざまなスパイスが加えられた旨シビ辛スープが麻辣湯の特徴。飲み干せば体がポカポカに。代謝アップも期待できそう。

◆その3)麺がヘルシー

春雨麺は小麦粉を主原料とする中華麺に比べてぐんとカロリーが低いのが魅力。食べ応えもしっかりあってスープもよく絡む。店によって太さや食感が違うのも楽しい。

第1回 選べる2種類の麺が人気。本場重慶仕込みの麻辣醬が自慢の、モダンなニューカマー

天天麻辣烫

赤坂見附の駅から徒歩2分の小道沿いに今年7月末にオープンした「天天麻辣烫」。カフェと見紛うような洒落た外観は「女性が一人でも気軽に入れるように」と考えられたもの。店長の廣瀬謙史さんはアパレル業界出身。中国在住歴が長く、現地で女性スタッフが毎日食べていた麻辣湯に惹かれ、いろんな店を食べ歩いたのだそう。本場・重慶仕込みのスープに個性溢れる麺を合わせた麻辣湯には、オープン早々からリピーターが続出!

新鮮野菜が常時20種類以上! バラエティに富んだラインナップに感激

 

トッピングの野菜はチンゲン菜やほうれん草などの青菜類からキノコ類、芋類までバランスよく用意。自分で籠に取るセルフサービス方式の店が多いが、ここでは注文時に指定する形を取っている。廣瀬さんは「じゃがいもなどの芋類を入れると食感が変わるので楽しい。トマトやきくらげもおすすめです」とコメント。

じっくり煮出した白湯に麻辣醬をオン。全ツユ必至の旨辛スープ

完全カスタム基本メニュー スープ(0~7辛/5、6辛+100円、7辛+200円)+麺(はるさめorこんにゃく麺)各400円+トッピング全品120円

 

店を出すにあたって廣瀬さんが最もこだわったのが麻辣醬。「重慶にいる麻辣湯の先生に監修してもらいましたが、日本で現地の風味を再現するのに苦労しました」。鶏ガラに野菜、スパイスを加えじっくり煮出した白湯は、0辛で飲んでも十分満足できるよう味付けもしっかり。ここに麻辣醬を溶かしながら味の変化を楽しむスタイルはこの店ならでは。スープをたっぷり吸い込んでくれる油揚げもトッピングにおすすめ!

食感の違いで選べる! ぷるぷるはるさめ vs ムギュムギュこんにゃく麺

野菜だけでなく、麺も選べるのが「天天麻辣烫」の魅力。きしめんのような「はるさめ」と、独特の歯応えの「こんにゃく麺」は、どちらも個性的で、甲乙つけがたい魅力が。あなたはどっち派?

はるさめ 400円。初めて訪れる際にはまずこちらから。葛切りみたいに透明な麺はフォトジェニックさも満点。

 

一般的な麻辣湯とは違い、ここの春雨はきしめん状に太くて平らなもの。プルっとした食感がたまらない。「食感が面白い春雨を探していた時に出会ったのがこれ。中国でも麻辣湯には使われませんね」と廣瀬さん。透明で平らな麺は箸ですくった時の写真映えも抜群。原材料は緑豆なので、でんぷん系のものよりも糖質が低いのもうれしい!

 

こんにゃく麺 400円。韓国冷麺のように弾力のある麺が意外なほどマッチ。

 

まるでこんにゃくのような、独特のムギュッとした歯応えが楽しい「こんにゃく麺」を入れるのはこの店のオリジナル。廣瀬さんによれば「こんにゃく芋を使ったしらたきのようなものではなく、韓国料理の冷麺に使われるような麺です。熱いスープに入れても負けないような食感のものを探しているうちに行き着きました」とのこと。

仕事帰りの一杯のお供に。シンプルかつ味わい深いサイドメニュー

夜は火鍋が中心の「天天麻辣烫」。それでも「赤坂という場所柄、夜はちょっと一杯、というビジネスマンのお客様も多いんです」と廣瀬さん。お酒のアテもちゃんと用意されているので安心だ。

よだれ鳥 400円。鼻腔に抜けるスパイスの香りが蒸し鶏と好相性。思わずお酒が進む。

 

しっとりとした食感に蒸しあげた柔らかな蒸し鶏を、麻辣湯と同じ麻辣醬で和えて白髪葱を添えた、シンプルな一品。下には茹でたモヤシも入っている。あっさりしているのにスパイス感満点の麻辣醬のおかげで風味は豊か。ビールやレモンサワー、ハイボールなどが進みそうな、おつまみとして必要十分な優等生だ。

 

ザーサイクリームチーズ 400円。麻辣湯で痺れた舌をやさしく休める秀逸おつまみ。

 

中華おつまみの王道としてお馴染みのザーサイとクリームチーズを和えただけという、これまたシンプル・イズ・ベストな一皿。ザーサイの塩気やほんのり残るスパイスの香りが、クリームチーズのこっくりしたクリーム感や酸味とよく合い、炭酸の効いたお酒にぴったり。実は麻辣湯の故郷でもある重慶は、世界最大のザーサイ産地でもある。

 

 

撮影:本多康司
取材・文:山下紫陽