〈秘密の自腹寿司〉
高級寿司の価格は3~5万円が当たり前になり、以前にも増してハードルの高いものに。一方で、最近は高級店のカジュアルラインの立ち食い寿司が人気だったり、昔からの町寿司が見直されはじめたりしている。本企画では、食通が行きつけにしている町寿司や普段使いしている立ち食い寿司など、カジュアルな寿司店を紹介してもらう。
教えてくれる人
猫田しげる
20年以上、グルメ誌、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」「あまから手帖」「旅の手帖」(手帖好き?)などで記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」。
なぜこの店名に? ネーミングの理由が微笑ましい
一見カフェのような店名。真っ黒で中の見えない外観から、思わず「何の店?」といぶかってしまいますが、ここはれっきとした寿司居酒屋。阪急西院駅から徒歩5分ほどの、驚くほど静かな通り沿いに佇んでいます。
肝心なのは「寿司屋ではない」ということ。大将の安藤真一さん曰く「ランチは寿司メインで、夜も寿司盛り合わせをお出ししますが、あくまでも居酒屋です。おひとり様から団体様まで、肩肘張らずに食べて飲んでいただければ」。そうそう、店名の由来はそこにあるんです。
「いろいろな色があるクレヨンのように、いろいろな料理があるお店に」。さらに「誰でも気楽に来られるようにカジュアルな店名にしました」とのこと。もう一つ、店名にはユニークな由来がありまして……。
「僕の名前がしんいちなので『クレヨンしんちゃん』の『クレヨン』がええやん!って、娘が付けました」
お茶目なエピソードを聞くと、ますます親近感がわきますねえ。ちなみに安藤さん、初対面だと少しそっけない印象ですが(笑)、話してみるとシャイなだけで、とにかく「気取らない」「盛らない」「嘘は言わない」という実直なお人柄です。
Q. この場所を選んだ理由は?
A. オーナーさんがここの物件空いてるよ~と紹介してくださったので!
Q. お酒の品揃えにはこだわりがあるんですか?
A. ないです!常連さんが置いてほしいと言ったものを仕入れているだけです。
Q. 一番人気があるメニューは?
A. うーーーーーーーーーーん(10秒ぐらい)……。わかりません。
全然アピールする気ないですね(笑)。しかしよく聞いてみると、手間暇かけた仕込みや、妥協しない食材の目利きなど、普通の人は省いてしまうような面倒なことや技術が必要なことも「職人として当たり前」にサラッとこなしているのだと気付かされます。