〈噂の新店〉
大阪・天神橋筋商店街に2023年6月オープンした「コゾノ テッパン フレンチ」。ホテルや神戸のレストランで経験を重ねた小薗悠子さんが腕を振るう 、新たなジャンルの“鉄板フレンチ”とは……?
教えてくれる人
猫田しげる
20年以上、グルメ誌、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「あまから手帖」「FRIDAYデジタル」「旅の手帖」などで記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」。
あのシェフが2号店を! 新章は「鉄板」
日本一長い商店街「天神橋筋商店街」。南北約2.6kmに居酒屋、寿司店、和食、バル、串カツ……とあらゆるジャンルの店がひしめく、大阪きってのグルメストリートでもあります。
その3丁目に2023年6月オープンした「コゾノ テッパン フレンチ」。実はこの近所で立ち飲みフレンチを営む小薗悠子さんが手掛ける2号店で、こちらは目の前の鉄板で仕上げる創作フレンチが主軸。
店内は1階にカウンター、2階にテーブル席があり、おひとりさまから大人数までフレキシブルに利用可能。女性1人客も入りやすく、通りかかるとつい一杯やってこか~と引き寄せられてしまいます。
猫田さん
2階から1階カウンターにつながるパイプがあり、上でベルを鳴らすと下に聞こえる仕組み。スゲ~!と感動しました(笑)。
小薗さんは東京・神戸・大阪北新地などの高級レストランやホテルで10年以上の修業を積み、天神橋筋に来る前は天満橋でフレンチ食堂「Ruellia(リエリア)」を経営。そのお店も料理人などプロからの評価が高く、2020年に天神橋筋商店街付近に「コゾノ フレンチ スタンド」として移転リニューアルした時も「あの小薗シェフが立ち飲みを……!」と話題になりました。
現在は1号店を後進に任せて、2号店である「テッパン」を切り盛り。1号店との違いは、まず「鉄板」で調理すること。そしてフレンチにこだわらず大阪らしさを取り入れた創作料理を展開していることです。
これで870円⁉ サービスしすぎな前菜盛り合わせ
ワインとともにまずは前菜盛り合わせを……と頼んだら「これ1人前!?」と疑いたくなるようなボリューム満点のプレートが。内容は日によって変わりますが、取材時は牛タンのレアステーキ、キャロットラペ、タラモサラダ、万願寺唐辛子のバルサミコ醤油漬け。
「牛タンは温よりも冷の方がおいしさを発揮すると思うんです」と、牛タンを59℃の低温で10時間(!)湯煎調理するとのこと。確かに、シャクシャクの歯応えがありつつしっとり柔らか、牛タンは冷菜向きなのだなーと実感する一品でした。
猫田さん
ちなみにキャロットラペも驚くほどのシャキシャキ感で、思わず作り方を聞いてしまったほど。「繊維に沿って切るのがコツ」と図解までしてくださった小薗さん、学校で調理を教えているそう。やっぱりな~!
鉄板焼きの真骨頂! 皮パリッ、身ふっくらの魚のソテー
鉄板の良いところは、火持ちが良いので旨みを閉じ込めながらじっくり焼き上げるのに向いていて、魚も皮目がパリッと仕上がること。そんな特性を活かした「本日の魚料理」はサワラのソテー。小麦粉を軽くまぶして鉄板でしばらく加熱し、身はふっくら、皮目はこんがりと。
実は小薗さん、「ソースの魔術師」でして、とにかくソースは自家製にこだわっています。なので、サワラのソテーに合わせるソースも塩とエスカルゴなどを調合したオリジナルのバターソース。「やっぱりフレンチ出身なので、ソースには気合い入れちゃいます」とのこと、どストイックな料理人魂ですねえ……!
ワインが原価⁉というほど安い
料理がリーズナブルな分、お酒は高いんじゃ……?と心配するなかれ。ワインはグラス490円~で、1杯の量が他店の2倍ほどの盛りの良さ!
「自分も飲むのが好きなので、お店に行ってグラスにちょこっと……って嫌じゃないですか」と小薗さん、さすが呑兵衛のココロを分かってらっしゃる。デキャンタで1,200円というサービス価格にもたまげますが、ワインにも精通しているので品揃えも素晴らしいのです。
猫田さん
ワイン以外にチューハイなども揃えており、和洋の料理とペアリングが楽しめますよ~。