〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き!そんな麺類の中から、食通が「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、連載「今週のカレーとスパイス」でおなじみ、カレーおじさんがおすすめする、新宿「グリルアンドバー ハナヤ」で提供されている「カレー冷やし中華」。カレー×冷やし中華という夏にぴったりなメニューが組み合わさったという一品だが……カレーおじさんに「印象に残る」と言わしめるほどだ。

教えてくれる人

カレーおじさん\(^o^)/

2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーアディクト。世界各地約5,500店舗でさまざまなカレーを食べ歩く。年間平均カレー食数は1,000以上、生涯通算カレー食数は優に20,000を超える。フジテレビ系「スパイストラベラー」、TBS「マツコの知らない世界」などメディア出演の他、小学館「Oggi」などでカレー記事を連載。レトルトカレーの監修も手掛けるなど、さまざまな形でカレー情報を発信している。

暑い時こそ食べたいメニューが夢のコラボレーション

カレーおじさん\(^o^)/が愛してやまない推し麺「グリルアンドバー ハナヤ」のカレー冷やし中華は1,500円

暑い時期こそ食べたくなる麺料理と言えば、冷やし中華だろう。冷たい麺の上に卵やキュウリ、チャーシューなどの具材が華やかに盛られ、冷たいゴマダレや醤油ダレをかけて食べれば、清涼感のある味わいが楽しめる。

そしてもう一つ食べたくなる料理と言えば、スパイスの利いたカレー。その2品を合わせたらどうなるだろう?という形で生まれたのが新宿にあるダイニングバー「グリルアンドバー ハナヤ」のカレー冷やし中華だ。

 

 

カレーおじさん\(^o^)/

このお店のカレーはもともと独特でオンリーワンですが、個性あるおいしさで印象に残る逸品でした。

歌舞伎町のど真ん中にあるアットホームな中華バル

お店があるのは日本屈指の繁華街である新宿・歌舞伎町。さまざまなお店が居並ぶ中に「グリルアンドバーハナヤ」の入っているビルがある。地下へとつながる階段を下り、店内に入るとそこには多くのお酒が用意されたカウンター席と本格中華のメニューが並んでいた。

お話を伺ったのはご主人の石川寿栄男さん。気さくな性格でファンも多い

「私はもともと岡山で中華料理屋を経営していたのですが、2017年に新宿歌舞伎町のここにお店を開いたんです。もともとはバルみたいなお店にするつもりだったんですが、お客さんに中華料理のメニューを出していたら評判になって……以来、中華料理のメニューばかりになっちゃいましたね(笑)」

気さくに答えてくれたのはご主人の石川寿栄男さん。中華料理の職人として25年のキャリアを誇るベテランだけにその腕は抜群。舌の肥えたこの街の客の心をつかむまでに時間はかからず、オープンから6年以上の月日が経った今でも常連客が後を絶たないという。

店内にはカウンター席のほかテーブル席が4つ、立ちテーブル席が1つあり合計21席。友人とはもちろんひとりでも気軽に入りやすい

お客さんのリクエストで生まれた人気メニュー

そんな本格的な中華料理の職人だった石川さんがカレー冷やし中華を生み出したキッカケは実にシンプルなものだった。

「もともとはお客さんから『夏だし、ここのカレーおいしいし、冷やし中華にもかけられない?』というリクエストがあったんです。カレーと中華料理って別物に感じますが、どちらも香辛料を使うから実は根っこの部分は似ているところがあるんです。なのでカレーを冷やし中華に合うようにチューニングして、この形になりました」

 

カレーおじさん\(^o^)/

さまざまな具材が冷やした麺の上にのり、それぞれと一緒に麺を食べ、混ぜながらまた麺を食べていくのが南インドのミールスのようで楽しいです。

カレー冷やし中華に盛り付ける具材はトマトや錦糸卵など全9品。てっぺんの部分にのるひき肉とにら、そしてヤーツァイという中華の漬物をあえた特製そぼろは石川さんのオリジナル。

冷やし中華の定番ダレにカレーの風味を合わせた特製ダレをかければ完成!

このメニューを推薦してくれたカレーおじさんはカレー冷やし中華のアレンジとして、お店の人気メニューである「牛肉のたたきの花椒ソース」と「上海角煮カレー」とのコンボを紹介。どちらもカレー冷やし中華と合わせて食べたり、食べ比べてみたりすることでより楽しく食べられるということで今回はその2品もオーダーした。

牛肉のたたきに使用する国産牛はオーダーが入るたびに焼くというこだわりぶり。

焼き上がった牛肉を一枚一枚カット。ミディアムレアの焼き加減が食欲をそそる。

「牛肉のたたきの花椒ソース」

これが「牛肉のたたきの花椒ソース」1,300円。花椒ソースに使用した花椒は四川産のものを厳選して使用。カレー冷やし中華のトッピングにもおすすめ

上海角煮カレーのベースとなるカレーは15年前ほど前に完成したもの。石川さんの趣味が高じてできたメニューだという。

カレーのメインの具材となる角煮はスプーンで切れるほどの柔らかさ。仕込み時間も合わせて数時間かけて煮込んでいく。

「上海角煮カレー」

「上海角煮カレー」1,500円。カレー冷やし中華と食べ比べると、同じカレーでも味の違いがよくわかる

店主のこだわりと思いが生んだオリジナリティあふれるハーモニー

オーダーした3品がテーブルに並ぶとずばり「豪華」の一言。崩すのがもったいないくらい美しいカレー冷やし中華はカレーおじさん\(^o^)/の提案したように具材を混ぜながら食べるとカレーのスパイシーさに加えいろいろな味が複雑に絡み合い、いろいろな顔をのぞかせる。南インドのミールスに似た雰囲気を感じるというのもよくわかる。

3つのメニューを食べ比べるのもまた楽しい

そして牛肉のたたきの花椒ソースは新鮮な国産牛と四川産の花椒ならではの香りとしびれが見事にマッチ。カレー冷やし中華に合わせて食べると豪華さに拍車がかかり、通常とは違った顔をのぞかせてくれる。

単品としても人気が高い上海角煮カレーはひと口食べてみると、香辛料の風味や味わいがダイレクトに感じられ、中華料理のカレーという具合にチューニングされていて一度食べたら忘れられない味。同じカレー味とはいえ、カレー冷やし中華とは全く違う味わいなので食べ比べたくなるのも納得だ。

 

カレーおじさん\(^o^)/

カレーは混ぜることによっておいしさが変化していき、最終的にはやはりカレーだったと感じるような、おいしいだけではなく面白さがあるのがとても気に入っています。

「カレー冷やし中華」は、実は常連だけが知る裏メニューだった!

お店は西武新宿駅から徒歩2分と好アクセス。ちなみに吉祥寺の姉妹店「チーナテリア ハナヤ吉祥寺」でもカレー冷やし中華を提供してもらえるという

3品ともどれも個性満点で印象に残る味わいだった「グリルアンドバー ハナヤ」。今回取材したメニュー以外のものもおいしいだろうと思い、メニューを見てみると……今回の主役であるカレー冷やし中華の名前がメニューになかった。いったいなぜ?

「実はカレー冷やし中華はメニューには載せていない、いわゆる“裏メニュー”なんです。常連のお客様に聞かれたら提供するっていう形をとっていたのですが、この記事を読んでくれた方にはご新規様でも提供させていただければと思います。歌舞伎町のお店で入りにくいと思うかもしれませんが、私と妻の2人でやっているので実際はアットホームにお迎えしますので怖がらずに(笑)気軽に来ていただければうれしいです」

店主の石川さんは中華料理の職人として25年のキャリアがあるためメニューは本格中華のオンパレード。料理に合うようお酒もビールやワインなどを豊富にそろえている

暑い時期だからこそおいしさを増すカレーと冷やし中華がコラボした「カレー冷やし中華」。オンリーワンな味わいを堪能する価値は十分にあるはずだ。

※価格はすべて税込

取材・文:福嶌弘(フリート)

撮影:加藤瑛理奈