廃校がオーベルジュに生まれ変わった

周辺には緑豊かな自然が広がる

目の前に青々とした山裾が広がるダイニングで、シックでモダンでアーティスティックな料理が次々と供される。そのギャップがなんとも魅力的な「オーベルジュ オーフ」。

 壁には「eaufeu」の文字

石川県小松空港から車で約30分。日本海と霊峰白山に囲まれた観音下かながその地にあった小学校が廃校になり、オーベルジュとして新たな生を得た。その名もeaufeu(オーフ)。フランス語でeau(水)とfeu(火)を組み合わせたという。料理の原点であり、生命の営みの源でもある、二つを冠した美しい店名だ。グランドオープンは7月14日。

元小学校だからこその広々とした空間

古い校舎をコンバージョン

敷地の入り口には、旧西尾小学校の門柱が残されていて、そのまま進むと、学校の面影を残しながらもどこか教会の風情を湛えた建物が見えてくる。

ナチュラルな色合いでまとめられたカフェスペース

中へ一歩踏み入れれば、まずはカフェスペースが。チェックインのためのロビースペースでもある。こだわりのコーヒーのほか、フードメニューもあり、イートインもテイクアウトも可。

ゆったりとしたダイニングスペース

さらに奥へ進むと、たくさんのアートに彩られた廊下の先に開けたダイニングがある。

アートを眺めながら食事を楽しむ

全体をグレイッシュなトーンが支配する中、壁を彩るアートやシックなセッティングがキラリと光る。

期待の史上最年少優勝シェフ

糸井章太シェフ

この華麗なレストランで腕をふるうのは、「RED U-35」で史上最年少(26歳)で優勝した、将来を嘱望される糸井章太シェフ。京都の出身で、関西で多く経験を積んできた。オーベルジュ オーフのシェフとして白羽の矢が立ったのは昨年の1月だそう。「このお話を最初にいただいた時はあまり乗り気ではなかったんですが、一度、場所を見てみてと、代表に連れてこられ、自然の豊かさに感銘を受けました。

屋上からの眺め

僕は京都と言っても田舎育ち。この環境ならやっていけるなと思いました」。その日の朝も、金沢まで魚を取りに行ったあと、川に入って沢蟹を捕っていたと、ズボンは土だらけだ。野菜やハーブは近隣の農家から、魚は主に金沢の市場漁港から、そして自分たちで採る山の恵み……。それらが糸井マジックを経て、どんな料理に昇華するのか、コースの一部を見せてもらった。

自然を感じる料理の数々

爽やかな炭酸水でスタート

ウォーターと呼ばれるアミューズは、木の芽を漬け込んだ炭酸水とともに供される。水はすぐ隣に位置する、酒造りの神様といわれる農口尚彦研究所の仕込み水を使用している。

自然を表現した一皿

沢で採取した石の上には、からりと素揚げした沢蟹、米粉をつけて揚げたどじょう、木の芽ドーナッツ、そして、え、これは何?と驚くのが、鮮やかな緑のカエルがのっている。瑞々しい沢の命をそのままよみがえらせたような一皿だ。

冬瓜のカエル

カエルの正体は、実は冬瓜を成形し、ごまで目をつけたもの。なんともシェフの茶目っ気が覗く一皿だ。

鮮やかなグリーンのソースが夏らしい一皿

2皿目の前菜がイカと蓮根の一皿。ライムなどで下味をつけたイカにコリアンダーシードでマリネした蓮根を合わせている。鮮やかな緑のソースは自家製のヨーグルトの副産物であるホエーにニラのオイルを合わせたもの。

地元の食材を使いこなす

3皿目は、寝かせてねっとりと熟成感を出した太刀魚をさっと炙り、周りにはツルムラサキのソテーを添えている。自家製の発酵玉ねぎやエシャロットケッパーなどを添えてアクセントをつけている。

盛り付けにも独自のセンスが光る

ツンツンと飛び出しているのはツルムラサキの花で、なんとも可愛い。

須田菁華作の器とのコントラストも素晴らしい

次は鮎の一皿。皮目に米粉をつけて焼き、きゅうりをはさんでライスペーパーで巻き、ホーリーバジルやベトナムコリアンダーなどをたっぷり散らす。自称「ハーブフェチ」というだけあり、香りの利かせ方が個性的だ。蓼酢の感覚で添えたビネガーに魚醤を利かせている。器は九谷焼の巨匠、須田菁華作のものだ。基本、器は石川県の作家のものを使用している。

進化した「かき揚げうどん」

次にすっぽんの甲羅をかぶせた一皿が登場する。どうやらすっぽんのスープを使ったものであるということはわかるが、中身はなんとうどんだ。実は小松には、小松うどんという名物があり、そこからの発想だが、メインディッシュの魚、肉へ行く前に、ほっこりなごんでもらおうというのがシェフの思いだ。すっぽんのコンソメにすっぽんの身も入り、白山の特産“でけえなめこ”、そしてうどんが入っており、ふたの上にのった生姜のかき揚げを落としていただく。なんとも心にしみるではないか。

夏らしい鮮やかな色合い

デザートは通常3皿供され、これは、最初の一皿となるフルーツ仕立て。なんとも可愛い一品だが、マンゴーとパイナップルをソーテルヌのゼリーが覆い、その下にはベルベーヌのブラマンジェが隠れている。ツンツンと立っているのは食用のひまわりだ。