相模湾の地魚が旨い厳選5店舗

回転寿司と言えば「安くて旨い」、これに尽きます。その点で大手チェーンの素晴らしさは誰もが認めるところですが、全国には大手チェーンにはない魅力を持った個性的な回転寿司店がいくつもあります。

それらの店には一皿300円以上する寿司や、中には800円もする寿司などもあり「高くて旨いのは当たり前じゃないか」「そんなに高いなら普通の寿司店に行く」と100円寿司ファンからは敬遠されますが、残念ながら高くてもおいしくない回転寿司店は多く、その一方で、一皿800円だったとしても、普通の寿司店ならその3倍は取られてもおかしくないレベルの寿司を提供している店もあるのです。

海鮮問屋 ふじ丸「活あじ」
海鮮問屋 ふじ丸「活あじ」   写真:お店から

本連載では「価格以上の価値」「企業努力」「個性」などを軸に、全国47都道府県の回転寿司の実力店、知られざる名店をご紹介。今回は相模湾の地魚が旨い神奈川県(横浜市外)の厳選5店舗です。

1. 小田原漁港に直接買い付け「独楽寿司」

神奈川の回転寿司を語る上で「相模湾」は外せない。日本三大深湾のひとつに数えられ、多種多様な魚種に恵まれている。それら朝獲り鮮魚が集まる小田原漁港に、毎朝買い付けに訪れているのが「独楽寿司」だ。

市場に買い付けに行く回転寿司店はいくつもあるが、独楽寿司のようにセリに参加できる買参権を持っている回転寿司店は全国にも数えるほどしかない。 買参権を持っていることで、自分たちの目で直接魚を選べるだけでなく、コストカットにより安価に提供できるのが強みとなる。聞くところによると、コロナ禍でこれまでは高級店御用達だった“一番”の魚も買えるようになったとのことなので、楽しみは広がる。

まず食すべきは「小田原三点盛り」。その日仕入れた中で最もおすすめの三貫をお値打ち価格でいただける。鮮度の良い魚がどれほどのポテンシャルを持っているのかが伝わる一皿だ。

「小田原三点盛り」385円(税込) 価格は寿司ダネによって変動

鮮度と言えば、同店は貝の旨さも特筆すべきだ。回転寿司で美味な活貝を一年中提供できるということも、良い店の条件のひとつ。活貝は管理が難しく、グランドメニューに常時5種類も揃えているのはさすがと言える。

「活貝三点盛り」748円(税込)

さらに、新作寿司の創作に積極的に取り組んでいることも紹介したい。同店は創作寿司の世界チャンピオンを創出しており、これまでにも柑橘系を利かせた寿司や「とろけるエンガワ寿司」などユニークな寿司を送り出し続けている。現在のイチ押しは「具だくさん極みの巻物」だ。具がぎゅうぎゅうに詰まったありそうでなかった一品。こういう面白さも楽しさにつながる。

「具だくさん極みの巻物」 220~440円(税込)

また「アルコール500円(税別)飲み放題」というとんでもない取り組みも行っており、一品料理にも酒の肴が豊富に揃っているのもうれしいところ。ちなみに姉妹店の「回転寿司まさのすけ」では価格帯がさらにお手頃に設定されているので、こちらもおすすめだ。

2. 日本唯一のビストロ回転寿司「あじわい回転寿司 禅」

世の中には「回転寿司店で美味な酒を飲みたい!」「高級寿司店にいるような気分になりたい!」など回転寿司に「特別」を求めるニーズがある。そういったニーズに応える店舗の中でも「回転寿司でいろいろなアルコールやビストロ料理を堪能して、小田原のおいしい寿司も食べたい!」というニッチなニーズを持つファンに絶大な支持を得ているのが「禅」だ。

同店のアルコールは、ベルギービールだけで100種類近くというとんでもない品揃え。寿司よりも圧倒的に多いビストロ料理の数々、すべてがオーナーシェフである西尾明氏の理想の店を実現させたものであり、この西尾ワールドに魅せられたファンが全国から訪れ続けている。

日本酒、ワイン他、多彩なアルコールの品揃え

高級寿司店の常連が大将に会いに行くために店に行くのと同様に、「禅」にも西尾氏目当てのファンが多く集う。イベリコ豚の生ハムをカッティングする時のお決まりの口上や料理の蘊蓄を聞くのも楽しく、個性的な料理がさらにおいしく感じる。

「あじわい回転寿司 禅」 オーナーシェフの西尾明氏

「強烈メタボ巻」はイクラ、ウニの裏巻きにフォアグラとトリュフをトッピングした贅沢な一皿。いやいや、自由でいいよね、という西尾氏の真骨頂とも思える。

類0908
「強烈メタボ巻」4,730円(税込)   出典:類0908さん
「マグロのテールステーキ」990円(税込)

もちろん、小田原漁港の近くにあるという立地を生かした地魚の寿司も美味しい。地元のファンが寿司の皿を積み重ねていく様とビストロ料理にワインを堪能しているファンが同居している空間も「禅」ならではだ。

回転寿司に何を求めるのか、それによって選ぶ店は違ってくるが、こういったとんでもなく尖った選択肢があることが、回転寿司の裾野を広げているのは間違いない。オーナーシェフの趣味と思いが詰まった愛すべき変態回転寿司店である。