回転寿司の実力店がひしめく横浜市

回転寿司の代名詞と言えば「安くて旨い」これに尽きます。その点で大手チェーンの素晴らしさは誰もが認めるところですが、全国には大手チェーンにはない魅力を持った個性的な回転寿司店がいくつもあります。

それらの店には一皿300円以上する寿司や、中には800円もする寿司などもあり「高くて旨いのは当たり前じゃないか」「そんなに高いなら普通の寿司店に行く」と100円寿司ファンからは敬遠されますが、残念ながら高くてもおいしくない回転寿司店は多く、その一方で、一皿800円だったとしても、普通の寿司店ならその3倍は取られてもおかしくないレベルの寿司を提供している店もあるのです。

「こだわりの廻転寿司 金沢まいもん寿司 たまプラーザ店」の「本まぐろ三昧」990円
「こだわりの廻転寿司 金沢まいもん寿司 たまプラーザ店」の「本まぐろ三昧」990円   写真:お店から

本企画では「価格以上の価値」「企業努力」「個性」などを軸に全国47都道府県の実力店、知られざる名店を紹介していきます。今回は実力店がひしめく横浜市の厳選5店舗です。

1. マグロメニューが圧巻! 老舗マグロ問屋経営「三浦三崎港」

神奈川には海産物の宝庫・相模湾と全国有数のマグロ水揚げ量を誇る三崎港があり、回転寿司のレベルは全国的にも非常に高い。中でも老舗マグロ問屋が経営する「三浦三崎港」は相模湾の地魚と多種多様なマグロ寿司が人気の神奈川を代表する回転寿司店のひとつだ。

多彩なマグロ寿司は20種類以上と他に類を見ない豊富さで、本マグロのすき身をふんだんに使用した「まぐろとろのひっかき軍艦」はマグロ問屋ならではのプライドを感じる一品。見た目の派手さに目を奪われがちだが、希少部位のすき身をふんだんに盛り付け、しかもグランドメニューに載せているのは、何がなんでも味わっていただきたい、という心意気の表れではないか。

「まぐろとろのひっかき軍艦」620円(税込)

また、思わずうなってしまうのが「塩漬けまぐろ」。試行錯誤を繰り返したであろうことをうかがわせる絶妙な塩梅で「これがマグロの食感なのか!」と驚かずにはいられない。自分はまだまだマグロについて何も知らないんだなと痛感させられるほど、マグロの奥深さを感じる名品だ。

「塩漬けまぐろ」280円税込)

もちろん、おいしいのには訳がある。この店の素晴らしさである「美味しさを演出」するための丁寧で確かな仕事を皆が当たり前のように取り組んでいるからだ。当たり前のことを当たり前のようにやっていれば、おのずとおいしい寿司ができるもの。

しかし、これをやりきっている回転寿司店は全国には数えるほどしかないのが実情だ。回転寿司の特権とも言える「効率の良さ」は常に「雑な仕事」と隣り合わせであり、おいしさを取り逃してしまう危険をはらんでいる。

もうひとつ、この店を語る上で外せないのが「マグロ解体ショー」だ。全国にマグロ解体ショーを行なっている回転寿司はあまたあるが、真の意味で「ショー」として成立しているのは、史上最高のマグロ解体職人・川股竜二総大将が行うこの店のものだけだと思っている。とにかく面白く楽しく、そして凄まじい迫力まであり、何度見ても飽きが来ない。辛い時、悲しい時には川股氏の解体ショーで明るさを取り戻してほしいと切に思う。

川股氏によるマグロ解体ショー

2. いまなお進化し続ける日本の名店「金沢まいもん寿司」

「金沢まいもん寿司」がたまプラーザに進出してからもうすぐ20年になるが、その魅力は何一つ色あせていない。加賀百万石の絢爛さや気品を纏った店舗は時の流れを一切感じさせることなく、荘厳さを保ち続けている。皆が店を大切に思い、日々の手入れを怠っていないからであろう。

加賀百万石のお城のような店構え

「まいもん寿司」を語る時に「高いから旨いのは当たり前」という概念がよく持ち出されるが、全国のみならず横浜市だけを見ても「まいもん寿司」のクオリティには遥かに及ばないにもかかわらず、もっと強気な値段設定をしている店がいくつもある。大手チェーンのように家族4人で腹いっぱい食べて五千円という世界は難しいにしても、ここまでハイクオリティな商品をよくこの値段で提供できるなと感心する。

たとえば、解禁となったばかりの「がすえび」は、鮮度落ちが激しく北陸門外不出とも言われているが、それを最高に近い状態で提供しているのは企業努力以外の何者でもない。がすえび漁は沖に仕掛けた幾つもの網を順番に回収して港に戻るのだが、同店では最後に回収される網のしかも網の下でつぶれていない上澄みの部分、つまり一番おいしい部分を仕入れているという。

北陸門外不出のネタ「がすえび」660円(税込)

また、個人的に「史上最強の貝」と断じている北陸特産の「ばい貝」は貝特有の歯応えと共に噛み締めると口腔内に広がるほんのりとした甘味がたまらなく、脳裏に能登の情景が浮かんでくるほど。まだ磯の香りのする殻付きの生きた貝だからこそ出せる味わいで、こういった付加価値商品を仕入れられる力、さらに喜んでもらえる値段で提供しようという気概こそが「まいもん寿司」の真価であり、プライドなのだと思う。

究極の逸品「ばい貝」495円(税込)

回転寿司が「安い寿司を提供する場」と思っている方にはハードルが高い店だと思うが、回転寿司でもここまで徹底的にこだわり、商品力、人間力を磨き上げ、まだまだ進化し続けようという、回転寿司の概念を超えた取り組みをし続けているのが「金沢まいもん寿司」だということを是非知っていただきたい。