〈ニュースなランチ〉

毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、食べログマガジン編集部メンバーによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!

コスパ良し。名店の技術を引き継いだ天丼

老舗と実力ある新店がひしめき合う人形町に、宣伝なしでオープンしながらランチ時にはあっという間に満席になってしまう店がある。それが「天ぷら やぐち」。昼は天丼2種、夜はコース1種のみと、わずか3種類のメニューで勝負するのは、名店と名高い「みかわ是山居」で研鑽を積んだ店主の江戸前天ぷらだ。

「天ぷら やぐち」外眼
2020年7月1日にオープンし、瞬く間に人気店となった。

ランチに提供されるのは、江戸前天ぷらをあっさりめの丼つゆにくぐらせて白米にのせた天丼だ。1,500円と2,000円の2種があり、おすすめは断然2,000円の天丼。穴子がまるっと1本、海老2本、イカ、キスに加え、野菜の天ぷらとしてナス、ピーマン、肉厚の椎茸が1つずつ入る気前の良さ。「丼ものでご飯が見えるのは寂しいからね」とは、店主である谷口さんの言葉だ。

「天ぷら やぐち」2000円のランチ天丼セット
シジミのみそ汁と香物がつく。1,500円の天丼は、穴子、海老、ナス、ピーマンの4種類の天ぷらが入る。

惜しげもなく使われる1匹分の穴子は、肉厚でふっくらと柔らかい。海老やイカも絶妙な火の通り具合だ。海の幸を一口ずついただいたら、次は野菜を食べてみるのもいい。ナスはかぶりついたときのジューシーさに驚いてしまうだろう。また、時期によって個体差はあるが、椎茸はできるだけ肉厚なものを選んでいると言い、こちらもみずみずしい。これらの天ぷらをさらに引き立てているのが、丼つゆだ。干し椎茸や鰹節、昆布などで出汁をとった丼つゆは見た目ほど濃くなく、ほんのりと鼻に抜ける香ばしさがあってあっさりとしている。そのため、素材が持つ本来の旨味や甘みをしっかりと感じることができる。
つゆがあっさりめなので、硬めに炊かれたご飯にかかっていても味が濃すぎることがないのもうれしい。つゆの味で食べるのではなく、天ぷらでご飯を食べる。当たり前のようでいて、実は職人の技術なしでは出会えない希少な天丼なのだ。

「天ぷら やぐち」2000円のランチ天丼
ランチの天丼の海老はブラックタイガーを使用。