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〈今夜の自腹飯〉
予算内でおいしいものが食べたい! インバウンドや食材の高騰で、外食の価格は年々上がっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで、「おいしいものを食べたいとき」に使えるハイコスパなお店とは?
イタリアで培った技術と知識を、柔軟な発想で駆使する
「ブラマソーレ」のオーナーシェフである髙橋健太さんは、イタリア・ボローニャの一つ星店「イルソーレ」を皮切りに、北から南まで巡りながら約6年の間、現地で修業を重ねた人物だ。帰国後は有名店「トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ (Don Ciccio)」で活躍し、姉妹店「シュリ シュリ (Ciuri Ciuri )」の料理長を任されていた。そして2018年12月、長年の夢であった自身の店を開店した。オープンから約1年、特別な宣伝はしていないが、髙橋シェフの料理を目当てに多くの人が店を訪れる。
ゲストの要望に瞬時に応える、髙橋健太シェフの手腕
外苑前駅から徒歩5分、外苑西通りから一本入った路地にある「ブラマソーレ」。“ブラマ”は「熱望する」、“ソーレ”は「太陽」を意味するイタリア語だ。直訳すると太陽を熱望するとなるが、「憧れを追い続ける」という意味合いを持つ言葉である。
カウンター6席、テーブル4つの小さな店内で、ディナータイムはアラカルトで楽しめる。コースだけの店が増えるなかで時代の潮流とは異なるが、「できるだけ縛りのない店にしたい」と考えた。
「ゲストの顔を見て、会話をしながら最もご満足いただける流れを作っていきたいのです。野菜を食べたいのか、魚や肉を食べたい気分なのか、また前日に何を食べたかによって求める料理は変わるはずです。お客さまの好みも千差万別ですから、少し辛味を強くする、塩味を利かすといったアレンジも行います」と髙橋シェフ。
当然ながら手間はかかる。それでも「それぞれの好みや、お腹のすき具合に合わせてポーションや品数を調整してメニューを組み立てることは、料理人ならできて当たり前のことだと思います」と続ける。
イタリア好きの琴線にふれるカトラリーとストゥッツィキーノ
カウンターは、目の前でシェフの技を堪能できる特等席。目の前に遮るものはなにもなく、自分のオーダーが出来あがっていく様子を眺めていると飽きることがない。大切な友人、恋人や家族など少人数の食事にぴったりの空間だ。
ストゥッツィキーノ(お通し)に供されるのはシチリア名物の「パネッレ」だ。ひよこ豆の粉と水、タマネギとニンニクのみじん切りを炒めて練り、冷やし固めてから素揚げした料理。ヘルシーな米油を使って揚げているためクセがなく軽やか。外はカリッと、中はとろっとした食感で、チーズのような豆腐のような不思議な味わいが楽しい。
桜チップの燻製香に包まれたメカジキのカルパッチョ
前菜から注文したのは「燻製メカジキのカルパッチョ」。ブロック状のメカジキに塩をふり、1時間ほど置いた後に桜チップで燻製してからスライスする。ドレッシングは、ブラッドオレンジジュースを煮詰め、赤ワインビネガーと合わせた甘酸っぱい味わい。そこに若干の塩と黒コショウをふりルッコラを添えて仕上げている。
燻製により水分が抜けるためメカジキの身が締まり、うまみが凝縮されている。スモークの香りと、メカジキのねっとりとした舌ざわりも完璧だ。
エキゾチックな芳香がやみつきになる、ウイキョウのパスタ
シチリアを代表する伝統料理「イワシとウイキョウ 煮込みソース カサレッチェ」は絶品。カサレッチェとは、シチリアが発祥とされる断面がS字のショートパスタ。シチリア産小麦100%のパスタは、もっちりとした食感が特徴だ。
ソース作りは、ウイキョウをやわらかく煮ることからはじまる。その葉を刻み、ニンニクとタマネギのみじん切りと炒めたら、トマトペーストとアンチョビ、そしてイワシのぶつ切りを加えて白ワインを投入する。さらにウイキョウの煮汁、サフラン、松の実、干しぶどう、フェンネルシードを入れて1時間ほど煮込んで完成だ。見た目はシンプルだが、実に手の込んだ逸品である。
ソースとパスタを合わせたら、トーストしたパン粉をふりかける。ソースが絡みやすくなり、お腹も満たすことのできるイタリアの知恵だそう。
そのほかにも「ピリ辛トマトソース スパゲッティ カッレッティエラ」(1,600円)「グアンチャーレと玉子のカルボナーラ リガトーニ」(1,800円)などのおなじみの品から「鶏レバー・ハツ・砂ぎも・トサカのラグー カンネッリ」(1,800円)という通好みのパスタもある。
ウイキョウや鶏のトサカなど、イタリアでは親しまれているが日本ではあまり一般的ではない食材を取り扱うところも髙橋シェフらしいところだ。
自由度の高さがアラカルトでオーダーする魅力
もちろん、メイン料理も楽しみのひとつ。本日のメニューは「ブリとウイキョウ、サフランのオーブン焼き」(2,700円)、「仔牛のカツレツ」(2,800円)、「牛タンのボッリート」(2,400円)、「アベル黒豚と栗のソテー マサラソース」(2,800円)。定番メニューには「本日の鮮魚料理」(2,600円~)と「あか牛のタリアータ」(5,000円)がある。
例えば2人で店を訪れたとき、前菜を多めに頼んでワインをゆっくり楽しむこともできるし、パスタを数種類ほど選びお腹いっぱいに楽しむのもいい。前菜やパスタだけでなく、メイン料理もひとり一皿に取り分けて提供してくれるため、コースのように少量ずつ楽しむことができる。男性は量を多めに、女性は少なめにといったリクエストをすることも可能だそう。自分好みにメニューをアレンジできる、アラカルトの醍醐味を堪能してほしい。
ワインについては、あえてリストは作っていない。スタッフと相談しながらワインを選んでいく時間も楽しみのひとつなのだ。ゲストが自由に選んだメニューに対応できるよう、イタリアワインを北から南まで幅広くセレクトしているそう。すべてスタッフが試飲しており、豊富な知識をいかして最適なワインを提案してくれる。
ゆったりと過ごせる、ランチのパスタコースもオススメ
まずはランチに訪れ、手頃なパスタコースで髙橋シェフのイタリアンを味わうのもオススメ。国産のベビーリーフとミニトマトに、パルマ産生ハムとカンパーニャ州産の水牛モッツァレラチーズを添えたボリュームのあるサラダに、本日のパスタがついて1,500円という内容。この日は「カリフラワーとサラミのトマトクリームソース スパッカテッレ」と「イワシとウイキョウのスパゲッティ」の2種が用意されていた。
仕事の合間にさっと食べるというよりは、ゆっくりと食事と会話を楽しむランチに向いている。
「お昼の時間帯もいわゆる“回転率”はまったく考えていないので、ゆったりと過ごしてください。その時間もふくめて食事を楽しんでいただきたいと思っています」
イタリア料理の名店を食べ歩いている人ほど、リピーターになっている同店。ゲストのわがままに、さらりと応えてくれる髙橋シェフのスキルの高さが満足度に繋がっている。
■食事
・燻製メカジキのカルパッチョ 1,600円
・イワシとウイキョウ 煮込みソース カサレッチェ 1,600円
・グアンチャーレと玉子のカルボナーラ リガトーニ 1,800円
・アベル黒豚と栗のソテー マサラソース 2,800円
・ティラミス 700円
■ドリンク
・スプマンテ 800円
・白ワイン 900円
・赤ワイン 1,000円
・赤ワイン 1,300円
・席料500円×2 1,000円
合計 13,500円(1人 6,750円)
※価格はすべて税抜