〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!

インバウンドや食材の高騰で、外食の価格は年々上がっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで、「おいしいものを食べたいとき」に使えるハイコスパなお店とは?

パリの三つ星レストランで腕を磨いた水流シェフによる美しくおいしい料理たち

2,500円のコース
プリフィックスで前菜とメインが選べる、コスパ最高の2,500円のコース。

比較的こぢんまりとしたビストロが多い浅草橋において、テーブル席だけで40席もの広さを誇る「Le Marais(マレ)」。同店の厨房で腕を振るうのが、国内の人気フレンチ店に勤めたのち、フランスに渡りパリの三つ星レストランで経験を積んだ水流(つる)達也シェフだ。

 

水流シェフが繰り出す料理はどれも美しく、味わい深いのだが、驚くのはそのコストパフォーマンス。アミューズと、選べる前菜、メインにプチデザートがついたプリフィックスのディナーコースが2,500円から提供されている。

 

これだけリーズブルながらも、料理に一切の妥協がなく、本格的なフレンチが楽しめる貴重な店だ。

Le Marais(マレ)の水流シェフ
真剣な表情の一瞬後に、「かけすぎたかな?」と笑う気さくな水流シェフ。

贅沢な庶民派メニュー。トリュフたっぷりの目玉焼き

新鮮玉子の目玉焼き 黒トリュフがけ
アラカルトにもあるので、一度は食べておきたい「新鮮玉子の目玉焼き 黒トリュフがけ」。

2,500円のコースは前菜7種、メイン7種から好きなものを選ぶプリフィックスのコース。

人気の前菜は、「新鮮玉子の目玉焼き 黒トリュフがけ」だ。“目玉焼き”というなんとも庶民的かつ朝食の代表格のような料理に、大胆にもトリュフをたっぷりとはべらせてフレンチの前菜に昇格させてしまっている。

 

使っている材料は卵とトリュフに塩・胡椒のみとシンプルなだけに、「素材勝負のメニューです」と水流シェフは言うが、目玉焼きを絶妙な半熟具合で美しく仕上げるにはテクニックがいる。トロリとした黄身にトリュフを絡めて食べれば、トリュフの香りが鼻を抜けていく贅沢さに浸れる。

 

なお、「新鮮玉子の目玉焼き 黒トリュフがけ」は700円の追加料金が必要だが、そこは元のコースが2,500円とリーズナブルだから、気にせず選べてしまううれしさがある。

旬の素材を使った、季節感あふれる料理たち

本日の厳選新鮮魚のポワレ
ラタトゥイユの上に置かれたマグロは、絶妙な火入れ加減。

メインの人気は「本日の厳選新鮮魚のポワレ」。魚料理に定評のある水流シェフが、その日に仕入れた素材から編み出す、その日だけのメニューだ。取材日はよいマグロが入ったということで、「マグロのミキュイ」が提供された。表面を軽く炙りバジルの冷たいソース“ピストゥー”をアクセントにのせ、さっぱりといただける。

 

水流シェフの料理は、どれもが正統派フレンチの基本を押さえつつも、シェフ独自の感性が織り込まれた新しい味わいを見せている。男性やたくさん食べる人がフレンチを食したときにありがちな「ちょっと量がもの足りない」気分を感じさせないよう、ボリュームにも配慮。そのうえで、お腹いっぱい食べすぎると、逆に胃もたれしやすいフレンチをさっぱりと食べられるように、ときに大胆なアクセントとして、ときに隠し味として酸味を加えて変化をつけている。

3,700円、7,000円のコースもコスパ抜群

フォアグラ ポワレのサラダ
「フォアグラのうまみを引き出すならポワレがいい」と水流シェフ。

マレには2,500円のコースのほか、3,700円と7,000円のコースもある。3,700円は魚料理と肉料理がそろったフルコース。7,000円のコースは一品一品のグレードが上がるうえ、アミューズと前菜2皿の間に生ハムなどが提供されるフルコースだ。どちらもメニューは、客の好みとその日の仕入れから、水流シェフが個々の客のために考える内容となっている。予約の場合は、予約の電話に水流シェフが対応できればその場で、出られなかった場合でもできるだけ折り返しで連絡を入れ好みを聞いてメニューを組み立てるという。

 

7,000円のコースでは、前菜が2皿提供される。「フォアグラ ポワレのサラダ」は、フォアグラのうまみを引き出した一皿。ブルーベリーやラズベリーといったベリーの酸味でフォアグラの脂肪質を中和し、葉ものにからし菜やわさび菜を使うことでピリリとしたアクセントを加えている。

 

メインには、シンプルな牛肉の料理を提供することもあるが、好みだという人にはジビエも提供する。ジビエの季節ならば質の良いものをフランスから仕入れるが、年間を通して鳩などは揃えるようにしているという。特に「鳩のグリル」は、ジビエ好きの人にはぜひとも試してほしい一品。絶妙な火の通し具合で、ジューシーで野性味溢れる仕上がりとなっている。ガツンとくる肉料理に添えるのは旬の食材と繊細なソース。秋であればきのこを添えて、鶏の骨でとったスープにセップ茸を加え6時間煮込んで濾したソースが、口の中で絶妙な味わいを引き出している。

 

11月からはジビエの季節。イノシシや雉などの入荷を予定しており、「良いものがそろったら、ジビエを楽しめる特別なイベントなども開催してみたい」とのことだ。

鳩のグリル
鳩の癖を生かした「鳩のグリル」。ジビエの季節以外でもできるかぎり提供している。

アラカルトやコースに追加。自由に自分好みの楽しみ方

「鴨のロースト」
低温で1時間かけて火を入れて旨味を閉じ込めた「鴨のロースト」。ナスとブドウの酸味と甘さが絶妙。自家製の栗のチップスが食感に変化を加えている。

2,500円のディナーコースでも十分満足できるが、アラカルトメニューもコストパフォーマンスがよい。なんと、1品380円から提供している。きのこマリネや厳選ポークのリエットは500円。人気の生ハム、ハモンセラーノやトリッパは690円という見事なコストパフォーマンス。

 

フルコースを食べるには遅い時間帯や、いろいろなものを楽しみたい場合などはアラカルトを頼んでワインを飲んでも、5,000円以内で収まってしまうだろう。

 

また、パスタやリゾットなども1,000円前後であるので、子ども連れで訪れても頼むものに困ることはない。

 

そのほか、3~4人などで訪れて2,500円のコースを頼み、アラカルトでもう1品を皆で分け合うといったこともできる。「子羊のロティ 季節の付け合わせ」(2,400円)、「A4ランクの和牛ステーキ」(3,000円)を除けば、1,000円台で「牛ロースステーキ」や「鴨胸肉のロティ」などが楽しめるので、試してみては。

40席もの広々とした店内。個室もOK

Le Marais(マレ)外観
店内は広々としたつくり。結婚式や二次会など30名以上で貸切が可能。

1フロア内にそれぞれ雰囲気の違うテーブルがセットされた店内。中央を使い広くテーブルを組み合わせることができるので、10~40名といった大人数での利用も可能だ。

また、奥にある窓際の席は木の扉のパーテーションで区切ることで、個室仕様になるのもうれしい。

Le Marais(マレ)個室
パーテーションを閉じると個室になるスペース。

現在、厨房から続く隣のスペースを改装しており、「ゆくゆくは、カウンターでお客様と相対しながら、1~2万円のシェフおすすめメニューを提供するスペースとしたい」と語る水流シェフ。「まずは、フレンチは高い、量も少ないといったイメージを払拭し、2,500円でも本物に出会って感動を味わってほしかったんです。高くておいしいのは当たり前ですから。金額が上がるということは、使う食材が高くなるということ。そこからさらに、原価による制限をなくし、自由な発想でシェフなりの料理を提供できる、ちょっとお高めのコースに興味を持っていただけたらうれしいですね」。

 

なお、ランチはさらにリーズナブルな1,800円のコースもあり、予約も可能だ。まずは、肩ひじ張らずにお試しできる、どこまでもうれしいビストロだ。

Le Marais(マレ)店内
1フロアで利用できるので結婚式や二次会にも最適。
【本日のお会計】
コース 2,500円
コース追加料金 700円
ハウスワイン 470円(グラス)
合計 3,670円

 

 

取材・文:岡崎たかこ(grooo)
撮影:玉川博之