ハンバーガーをこよなく愛し、そのおいしさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介してもらうこの連載。第5回は、東京・吉祥寺にある「Fatz’s The San Franciscan(ファッツ・ザ・サンフランシスカン)」のハンバーガーの魅力をたっぷり教えてもらいます!

【じっくり食べたいハンバーガー】第5回「ファッツ・ザ・サンフランシスカン」

今回は、「【今これがキテる!】~プルドポーク編~」にも登場した、吉祥寺の「ファッツ・ザ・サンフランシスカン」をフィーチャー。こちらは、2017年の秋まで高円寺で営業していた「FATZ’S」が移転・再オープンしたお店です。

 

高円寺時代のファッツはカウンターだけの小さなお店でした。東京生まれのアメリカ人、ジョン・レヴィンさんのハンバーガー店として当時から有名でしたが、「もっといろいろな料理を出したい」という希望から、ジョンさんの生地・三鷹に近い吉祥寺に移転して、2018年2月にオープンしました。

高円寺で営業していた頃の「FATZ’S」。

お店は井ノ頭通りを三鷹方面へ6分ほど歩いたところにあります。「食べログ ハンバーガー 百名店 2019」にも選ばれた「ヴィレッジヴァンガード ダイナー 吉祥寺」の90m先にあります。なお、ジョンさんは、越谷レイクタウンのヴィレヴァンダイナーで働いていたことがあり、ちょっとした名物スタッフでした。

お店は地下1階にあります。前よりウンと広くなった店内は席数32席。アメリカンサイズの大きな椅子と机が並んでいます。キッチンも広くなり、出したいメニューが出せるようになりました。

 

ジョンさんは、5歳から10歳までサンフランシスコ近郊の街・バークレーで過ごし、成人後、また5年ほどカリフォルニアで過ごしました。サンフランシスコは多民族・多地域の料理が混在する街で、店名の「The San Franciscan」には、そうした「多国籍料理」的な意味合いが込められています。ということで、その多彩な料理からご紹介しましょう。

「チーズバーガー餃子」。小皿の液体はりんご酢を味付けしたビネガーソース。

まずはディナーメニューから、珍品「チーズバーガー餃子」400円。ハンバーガーのパティと同じUSビーフの挽肉を「餡」にした餃子です。チーズ、レッドオニオン、少量のBBQソースも中に入っています。

「ステーキ サンドウィッチ」

USビーフのサーロインステーキ80gを穀物だらけの食パンで挟んだ、ランチメニューの「ステーキ サンドウィッチ」1,600円も美味。いかにもアチラ(米国)らしい「バサッ」としたパンで、風味も独特。煮詰めたバルサミコソースが肉のコゲ味と合わさり、ものすごーく「アチラっぽい味」がします。クセが強いので好みは分かれますが、好きな人には堪らない一品!

 

そして一番のおすすめは、バーベキュー料理の数々。「今これがキテる!」にも書いた通り、自慢のスモーカー(燻製器)で、牛、豚、鶏、いろんな肉を芳ばし~くスモークしています。

ディナーメニュー「プルドポーク」400円(写真左)と「スモーク ブリスケット」800円(写真右)。スモーク肉各種を盛り合わせた「バーベキューコンボプレート」2,980円もあり

ジョンさんの母方の故郷・ノースカロライナ伝統の味を再現した「プルドポーク」は、そのまま食べても超絶に美味ですが(一晩中でも食べ続けていられるぐらい)、添えられた2種類のBBQソースがまたメチャクチャ美味! ブリスケット(牛肩バラ肉)のスモークは米国南部の代表的なバーベキュー料理。低温で長時間火を入れた肉はまぁ~やわらか! ぜひ皆さんにも体験していただきたいです。

ファッツのスモーカー

ディナーの前菜・小皿料理全28品、メインのステーキほか6品。これだけの料理をズラリと揃えたファッツですが、注文の実に「9割がハンバーガー」ということで、やはり、世間がファッツに求めるものは、ハンバーガーなのです。

 

ファッツのバーガーには、チョイスグレードのUSビーフ113gパティの「ファッツバーガー(FB)」と、プライムグレードのUSビーフ226gパティの「ビッグプライム(BP)」の大きく2種類あります。メニューのバーガーのほとんどが「FB」か「BP」からパティを選ぶことができます。

2枚重ねのパティがやわらかな「The WW」。

看板メニューの「The WW(ダブダブ)」ランチ/1,850円は、FBパティ2枚にチーズ2枚、ベーコン2枚を挟んだダブルベーコンチーズバーガーです。パティはブロック肉を店で挽いて成形した自家挽き&直火焼き。オーツ麦がのるバンズは三鷹のパン店作。出しゃばらず、高級過ぎない、絶妙なポジショニングの良バンズです。生のオニオンは辛味控えめのアーリーレッド。この「ダブダブ」が、ファッツのバーガーのある種、基準と考えてください。

「50/50」。挟まるチーズはチェダーとゴーダ。

「50/50(フィフティフィフティ)」ランチ/1,550円は、ちょっと変わり種。牛肉とベーコンを1:1の割合で混ぜた、合挽きパティのバーガーです。ベーコンは例のスモーカーで作る自家製。これを挽肉にしてUSビーフのミンチと混ぜ合わせ、100gのパティにします。このパティがおいしい! ホースラディッシュ、ローズマリー、グリルしたガーリックを加えたマヨソースが、とんでもなく“やんちゃ”な味で、強い塩気とパンチがあって、この上なく“スナック”味のバーガーに仕上がっています。超オススメ!

ディナーのみ販売の「The Animal BP」。マヨベースにBBQソース、レリッシュなどを混ぜた「アニマルソース」とキャラメルオニオンがなだれを成す、「Animal Style(≒ねこまんま)」のバーガー

最後は「BP」のバーガーを。この秋の期間限定「The Animal BP」1,800円は一転、肉の“質の高さ”を楽しむバーガーです。良質な肉は味わいがスッキリしています。そこへキャラメルオニオンと「アニマルソース」をかけると、味に遊びが生まれて、動きが出ます。どろどろのソースに浸って油じみたバーガーの感じもまた美味! やんちゃな「50/50」とはまた違う、こちらは上級編のバーガーです。

 

「アメリカ人が作ってるな」という感じがすごくするバーガーのお店です。日本人が作るものとは似て非なる、その味覚と感覚の違い、バランスと力点の違いをじっくり味わい、見極めてください。どうぞご堪能を!

 

※価格はすべて税抜

 

取材・文・写真:松原好秀