お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。日本・台湾・オーストリアのお菓子を紹介した前編に続く後編では、フランス・ハンガリー・イギリスの本格派スイーツが味わえる注目店を紹介。

【猫井登のスイーツ探訪12】〜表参道で味わう世界のスイーツ・後編〜

【4軒め】フランス菓子「シャルマン・グルマン 青山」

 

猫井先生

後編は、フランスのスイーツが味わえる「シャルマン・グルマン 青山」さんからスタートです! こちらはヨーロッパの伝統菓子を扱う、老舗ブランドを中心とした輸入菓子のセレクトブティックです。1階はショッピングエリアになっていて、商品の入れ替わりはありますが、サブレ、チョコレート、キャラメルのほか、スコーンやケーキなどが販売されています。2階のサロンエリアでは、1階のお菓子のほか、ランチセットなども楽しめますよ!

みすきす
出典:みすきすさん
 

食べログマガジン編集部

特にオススメなのはどんなスイーツですか?

 

猫井先生

「La Sablesienne(ラ・サブレジエンヌ)」のサブレは、いかがでしょうか。1670年当時のレシピのまま、作られているサブレですよ!

 

食べログマガジン編集部

サブレってそんな昔からあるお菓子なんですね!

白雪姫
出典:白雪姫さん
 

猫井先生

フランスの王族のコンデ公のもとにヴァテールという給仕長がいたのですが、彼がパーティーで供したビスケットが大好評でフランス社交界に広まったとされています。このビスケットのレシピは、もともとマドレーヌ侯爵夫人が考案したといわれており、彼女の住む町が「サブレ・シュル・サルト」だったことから、サブレと呼ばれるようになったと伝えられています。

 

食べログマガジン編集部

ヴァテールさんは有名な人だったんですか?

 

猫井先生

いわゆるホイップクリームを発明したといわれる人ですね。コンデ公がシャンティー城で開いたパーティーで、生クリームを泡立てたことが発端です。なので、ホイップクリームのことを「クレーム・シャンティー」と呼びますよね。ちなみに、祝宴で手配したはずの魚が予定量届かなくて祝宴を台無しにしてしまったと思い込み、剣で自分の体を刺して亡くなられたことでも有名ですが。

 

食べログマガジン編集部

おぉ……魂の料理人だったんですね。

【5軒め】ハンガリー菓子「ジェルボー 東京本店」

 

猫井先生

さあ、次はハンガリーのお菓子ですよ! こちらは、1858年創業で、ハンガリー・ブダペストを代表する老舗カフェ「ジェルボー」の東京本店です。「シシィ」の愛称で有名なハプスブルク家のエリザベート皇妃のお気に入りだったカフェですね。

 

食べログマガジン編集部

ハンガリーのスイーツってパッと浮かばないのですが、先生のイチオシはどんなお菓子ですか?

 

猫井先生

こちらに来たら、是非「ドボシュ トルタ」を味わってほしいですね! ハンガリーの菓子職人ヨージェフ・ドボシュが1885年に考案したとされるケーキで、上部にキャラメルを塗った生地を斜めにのせて飾るという、独特のフォルムをしています。本体は、スポンジとチョコレートのバタークリームを幾層にも重ねています。先のエリザベートがこのケーキを絶賛して、皇帝から金十字功労賞が授与されたともいわれています。

甘子
「ドボシュ トルタ」(写真手前)   出典:甘子さん
 

食べログマガジン編集部

たしかに珍しいフォルムをしていますね。これ、どうやって食べるのが正解なんですか?

 

猫井先生

お店では、とがった方を右に供しますが、左にした方が浮いているのがわかりやすいかもしれません。ちなみに、上のキャラメルを塗った生地は固いので、はずしてから食べるというのが決まりらしいですよ。

 

食べログマガジン編集部

なるほど。予習できて良かったです(笑)。

【6軒め】イギリス菓子「フランツアンドエヴァンスロンドン 表参道店」

 

猫井先生

最後は、イギリス菓子が楽しめる「フランツアンドエヴァンスロンドン 表参道店」に行きましょう。

caramelcaramel
出典:caramelcaramelさん
 

食べログマガジン編集部

うわぁ〜、たくさんのスイーツが並んでいますね。

 

猫井先生

ロンドンのトレンド発信の中心地イーストエリアで、多くのアーティストやクリエイターに人気のデリカフェの日本支店です。本店は、1994年にクリエイティブディレクター、シェフ、パティシエのコラボレーションによって生まれたお店です。ケーキなどのスイーツのほか、キッシュやサラダなどのデリ系もあるので、一日を通してお客さんが絶えない人気店ですね。

 

食べログマガジン編集部

どれもおいしそう! でも、さすがに今日はもうお腹いっぱいです……。

写真:お店から
 

猫井先生

店内のお菓子はテイクアウトできるものも多いので、お土産に持ち帰るのもいいですよ。特に、看板商品の「レッド ベルベット カップケーキ」とイギリスの伝統菓子である「バノフィー」がおすすめですよ!

 

食べログマガジン編集部

カップケーキといえばイギリスですよね! この看板商品ってどんなケーキなんですか?

 

猫井先生

「レッド ベルベット カップケーキ」は、薔薇をイメージしたゴージャスなカップケーキで、ラズベリーの深紅の生地と濃厚なクリームチーズという組み合わせ。生地の中にもラズベリーが忍ばせてあります。

 

食べログマガジン編集部

「バノフィー」も初めて聞くのですが、造語ですか? ハイブリッドスイーツ的な?

 

猫井先生

「バノフィー」は、バナナ+トフィーでバノフィーといいます。ざっくりとした生地に、バナナ、とろとろトフィー(キャラメル状のもの)、たっぷり生クリームにピーカンナッツをトッピングした濃厚な甘さのお菓子です。

 

食べログマガジン編集部

ひとつの街でこんなにもいろんな国のスイーツが楽しめるなんて知りませんでした。

 

猫井先生

海外旅行に行かずとも世界のスイーツが堪能できる街なので、夏休みは表参道で世界のスイーツ巡りを楽しんでほしいですね。くれぐれも熱中症には気をつけて!

 

写真・文:猫井登